表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
捨てられた少女は、黒竜王の娘となる!?  作者: Atelier Lotus


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
60/118

第59話 初めての笑顔

 黒竜城での暮らしが始まり、数日が過ぎた。


 侍女は毎朝、笑顔で挨拶をする。


「おはようございます、エリシア様」


 エリシアは小さく頭を下げる。


「ごめんなさい……」


 廊下ですれ違う黒竜騎士は、穏やかに微笑む。


「今日も良い天気ですね」


「ごめんなさい……」


 料理人は昼食を運びながら笑う。


「今日は焼きたてのパンですよ」


「たくさん召し上がってくださいね」


「ごめんなさい……」


 医師は診察を終えると優しく声を掛けた。


「傷も少しずつ良くなっていますよ」


「ごめんなさい……」


 誰も、謝ってほしいとは言わなかった。


 それでも。


 エリシアの口から出る言葉は、いつも同じだった。


「ごめんなさい」


 ◇


 ある日の昼下がり。


 一人の侍女が紅茶を運んでいた。


「失礼いたします――」


 その時だった。


「きゃっ!」


 手が滑る。


 カチャカチャッ。


 食器が音を立てる。


 幸い、割れることはなかった。


 侍女は慌ててしゃがみ込み、恥ずかしそうに笑う。


「ああ……」


「また失敗してしまいました」


 その姿を見た瞬間。


 エリシアは思わず、小さく笑った。


「……ふふっ」


 しかし。


 すぐに我に返る。


(笑っちゃだめ……!)


(私なんかが笑ったら……)


 慌てて両手で口を押さえる。


 身体が震える。


 謝ろうと口を開いた、その時だった。


 黒竜王妃セレーネが、優しく微笑む。


「笑っていいのよ」


 エリシアはゆっくりと顔を上げた。


「笑うことは、悪いことじゃないわ」


「嬉しい時は、笑っていいの」


 その優しい言葉に。


 エリシアの瞳から、大粒の涙が溢れた。


 ぽろり。


 また一粒。


 涙は止まらない。


 それでも。


 もう一度だけ。


「……ふふっ」


 涙を流しながら、小さく笑う。


 その笑顔を見て。


 黒竜王妃セレーネも。


 侍女も。


 その場にいた竜人たちも、皆、優しく微笑んでいた。


 地下室へ閉じ込められて以来。


 エリシアは初めて。


 心から笑うことができた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ