表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
捨てられた少女は、黒竜王の娘となる!?  作者: Atelier Lotus


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
54/118

第53話 慈悲か、掟か

 重苦しい沈黙が会議室を包む。


 誰もが口を閉ざしていた。


 外務大臣の意見も。


 軍務大臣の意見も。


 法務大臣の意見も。


 全て正しい。


 だからこそ、結論を出せずにいた。


 やがて。


 ゼノンは静かに巡回黒竜騎士へ視線を向ける。


「一つ、尋ねる」


「……はっ」


「お前なら、どうする」


「もう一度、あの日へ戻ったとして」


「同じ少女を見つけたなら」


「お前はどうする」


 会議室の視線が、一斉に巡回黒竜騎士へ集まる。


 騎士は迷わなかった。


「私は」


「もう一度同じ場面へ戻ったとしても」


「迷わず助けます」


 その答えに、法務大臣が眉をひそめる。


「掟に反すると分かっていてもか」


 騎士は真っ直ぐ前を向いた。


「はい」


「目の前で幼子が命を落とそうとしている」


「それを見捨てることはできません」


「それは」


「竜族として最大の恥だからです」


 力強い声だった。


 誰も言葉を返せない。


 その時。


 黒竜王妃セレーネが静かに立ち上がった。


 会議室の視線が集まる。


 セレーネは穏やかな声で語り始めた。


「あの子は」


「助けを求めることすらできませんでした」


「誰にも助けてと言えず」


「謝り続けることしかできない幼い子です」


 一度言葉を切り、ゆっくりと全員を見渡す。


「私たち竜族は」


「力ある者ほど、弱き者へ慈悲を示せと教えられてきました」


「それが、私たちの誇りです」


 静かな声だった。


 しかし。


 一言一言が、会議室へ深く響いていく。


「救える命を見捨てれば」


「それは」


「私たちが、私たちでなくなるということです」


 静寂。


 誰一人、口を開かなかった。


 法も。


 外交も。


 軍事も。


 全て理解した上で。


 なお、慈悲を貫こうとする王妃の言葉が、会議室の空気を少しずつ変えていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ