第50話 招集
黒竜城。
王城最上階――黒竜王会議室。
この部屋へ招集が掛かるのは、戦争。
国家存亡の危機。
あるいは、国の未来を左右する重大案件のみ。
その日。
黒竜王ゼノンの王命により、緊急黒竜王会議が開かれた。
招集されたのは、ノワール=ヴェル竜王国中枢を担う者たち。
黒竜王ゼノン。
黒竜王妃セレーネ。
宰相。
外務大臣。
軍務大臣。
法務大臣。
内務大臣。
教育大臣。
医務長。
黒竜騎士団長。
そして、黒曜山で少女を保護した巡回黒竜騎士。
重厚な扉が閉ざされる。
会議室は静寂に包まれた。
ゼノンは一同を見渡し、静かに口を開く。
「これより緊急黒竜王会議を始める」
全員が姿勢を正す。
「黒曜山巡回中、一人の人間の幼子を保護した」
その一言で、会議室がざわめいた。
「人間の子ですと……?」
「しかも黒曜山で?」
驚きの声が上がる。
さらにゼノンは続ける。
「保護した少女は、現在黒竜城で保護している」
その瞬間。
宰相が静かに目を細めた。
「……噂には聞いておりましたが」
「まさか、本当に人間の子が黒曜山で保護されるとは」
外務大臣も難しい表情で頷く。
「国境付近で人間の少女が目撃されたという報告は受けておりました」
「しかし、真実であったとは……」
室内へ重苦しい空気が流れる。
ゼノンは静かに続けた。
「本件は、外交、軍事、法、そして竜族の掟、その全てに関わる」
「故に諸君らを招集した」
誰も口を開かない。
皆、理解していた。
これは単なる保護ではない。
一人の少女が、国家そのものを揺るがしかねない重大案件なのである。




