表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
捨てられた少女は、黒竜王の娘となる!?  作者: Atelier Lotus


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
40/118

第39話 噂

 地下室での暮らしが始まってから、しばらくが過ぎた。


 ヴァレンシュタイン辺境伯家には、毎日のように商人や職人、納入業者たちが出入りしていた。


 食料を運ぶ商人。


 薪を届ける業者。


 屋敷を修繕する職人。


 彼らは仕事を終えると、何気ない世間話を交わしていた。


「そういえば」


「最近、末のお嬢様を見掛けないな」


 一人の商人が首を傾げる。


「ああ」


「なんでも地下室へ閉じ込められているらしい」


 その言葉に、周囲の者たちが驚いた。


「地下室?」


「病気か何かか?」


 一人の職人が声を潜める。


「いや……」


「魔法らしい」


「魔法?」


「末のお嬢様、とんでもない魔法を持っているんだとか」


 皆が顔を見合わせる。


「しかも全属性魔法らしいぞ」


「全属性……?」


 その場の空気が一変した。


「そんな馬鹿な」


「全属性なんて聞いたことがないぞ」


 年配の商人が神妙な顔で口を開く。


「昔、祖父から聞いた話だが……」


「約百五十年前に大聖女ミュゲ様が討ち倒した魔王ニコラスも、全属性魔法の使い手だったそうだ」


 誰も言葉を発せない。


 重苦しい沈黙が流れる。


 やがて、一人がぽつりと呟いた。


「じゃあ……」


「末のお嬢様は……」


 誰もその続きを口にはしなかった。


 しかし。


 皆の頭には、同じ言葉が浮かんでいた。


 ――魔王の子。


 別の商人が小さく息を吐く。


「辺境伯様も苦渋の決断だったんだろうな」


「家族を守るために、地下室へ閉じ込めたらしい」


「辺境伯様もお辛いだろう」


「領地を預かるお立場だからな」


 誰も疑わなかった。


 誰一人として真実を確かめようとはしなかった。


 その話は屋敷を出た後も続く。


 市場で。


 酒場で。


 井戸端で。


 噂は人から人へ伝わり。


 語られるたびに尾ひれが付き。


 やがて事実と噂の境界は曖昧になっていった。


「ヴァレンシュタイン辺境伯家には、魔王の子がいる」


 その言葉だけが独り歩きを始める。


 そして。


 噂は瞬く間に、領内中へ広がっていくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ