表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
捨てられた少女は、黒竜王の娘となる!?  作者: Atelier Lotus


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
30/118

第29話 家族のため

 厨房での出来事は、その日のうちにアルフレッドの耳へ入った。


 執務室。


 料理長と侍女が、深く頭を下げている。


「申し訳ございません」


「私どもの監督不足でございます」


 二人の声は震えていた。


 アルフレッドは静かに目を閉じる。


 しばらく沈黙が流れた後、小さく首を横へ振った。


「……いや」


「お前たちを責めるつもりはない」


 二人は驚いたように顔を上げる。


 アルフレッドは苦しそうな表情を浮かべながら続けた。


「あの子は悪くない」


「だが、このまま甘やかせば、エリシアのためにならない」


 その言葉は、誰よりも自分自身へ言い聞かせるようだった。


「今後も特別扱いは不要だ」


「決まりは決まりとして守らせる」


「食事も例外は認めない」


「決して甘やかすな」


「……承知いたしました」


 二人は苦しそうに頭を下げた。


 命令には従うしかない。


 それでも、その命令が幼い少女を苦しめることだけは理解していた。


 その夜。


 アルフレッドは家族を食堂へ集めた。


 重苦しい空気が流れる。


 ジークハルト。


 セレスティア。


 リリアーナ。


 三人は静かに父を見つめていた。


 アルフレッドはゆっくりと口を開く。


「今日、エリシアが厨房で食べ残しのパンを食べようとした」


 三人は息を呑む。


「あの子は空腹だったのではありませんか……?」


 セレスティアが小さく呟く。


 アルフレッドは静かに首を横へ振った。


「違う」


「問題はそこではない」


「あの子は、自分を律することを覚えなければならない」


「今のままでは、いずれ自分の力を制御できず、多くの人を傷付けるかもしれない」


 その言葉に、誰も反論できなかった。


 魔王ニコラス。


 四属性を操り、世界を恐怖へ陥れた存在。


 その記憶は、アルディア王国では今なお語り継がれている。


 ジークハルトは拳を強く握り締めた。


「父上」


「僕が、エリシアを正します」


 妹が憎いわけではない。


 むしろ誰よりも大切だった。


 だからこそ。


 間違った道へ進ませたくなかった。


「妹を正しい道へ戻す」


「それが兄である僕の役目です」


 セレスティアも静かに頷く。


「私も……」


「厳しくすることが、エリシアのためになると思います」


 リリアーナは不安そうに俯いた。


「でも……」


「エリシア、泣いちゃうよ……」


 ジークハルトは妹の肩へ優しく手を置く。


「今だけだよ」


「きっと分かってくれる」


「僕たちは、エリシアを助けたいだけなんだから」


 その言葉に、リリアーナも小さく頷いた。


 誰一人として、エリシアを憎んではいない。


 誰一人として、虐待しているつもりもなかった。


 家族を守るため。


 妹を守るため。


 そして。


 王国を守るため。


 そう信じた家族の"正義"は。


 少しずつ、幼いエリシアを追い詰めていくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ