第27話 飢え
それから数日。
エリシアの食事は、さらに少なくなっていった。
薄いスープ。
小さなパンが一つ。
ほんの少しの野菜。
以前は当たり前だった肉料理が並ぶことは、もうなかった。
それでもエリシアは、一度も文句を言わなかった。
小さく手を合わせる。
「いただきます」
一口。
また一口。
ゆっくりと味わいながら食べる。
最後の一口まで、大切そうに口へ運んだ。
「ごちそうさまでした」
空になったお皿を見て、小さく微笑む。
その笑顔を見た侍女は、胸が締め付けられた。
「……申し訳ございません」
思わず漏れた言葉だった。
エリシアは首を横へ振る。
「謝らないで」
「私、これで大丈夫だから」
優しい笑顔だった。
けれど。
幼い身体は正直だった。
夜になると。
「ぐぅ……」
静かな部屋に、小さくお腹の音が響く。
エリシアは慌てて両手でお腹を押さえた。
「しーっ」
「静かにしてね」
まるで、お腹へ話しかけるように優しく微笑む。
「もう少しだけ我慢しようね」
「私、いい子だから」
そう言い聞かせる。
翌朝。
鏡の前へ立つと、少しだけ頬が痩せたような気がした。
「いっぱい遊んだからかな」
幼いエリシアは、そう思うことにした。
昼食も少ない。
夕食も少ない。
それでも。
運ばれてきた食事を一粒も残さず食べた。
もっと食べたい。
そう思わなかったわけではない。
でも。
我慢すれば。
もっといい子になれば。
きっと、お父さまたちは元に戻ってくれる。
そう信じていた。
夜。
ベッドへ横になる。
眠ろうとしても、お腹が空いて眠れない。
何度も寝返りを打つ。
毛布をぎゅっと抱きしめる。
「我慢……」
「我慢しなきゃ」
「私が悪いんだもん」
小さな声で呟く。
すると、お腹がまた鳴った。
「もう少しだけ」
「もう少しだけ我慢してね」
自分のお腹へ優しく話しかける。
その姿は、あまりにも幼かった。
窓の外では、家族が食卓を囲む笑い声が聞こえてくる。
エリシアは目を閉じた。
「また……」
「みんなと一緒に、ご飯食べたいな」
その願いは誰にも届かない。
幼い少女は空腹を抱えたまま、小さな身体を丸め、静かに眠りにつくのだった。




