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捨てられた少女は、黒竜王の娘となる!?  作者: Atelier Lotus


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第16話 火傷

 教会での魔法適性検査から数日。


 少しずつ重苦しくなっていた屋敷にも、この日は久しぶりに笑顔が戻っていた。


「エリシア!」


「一緒に遊びましょう!」


 セレスティアが優しく声を掛ける。


 その隣ではジークハルトとリリアーナも笑っていた。


「今日は鬼ごっこだ!」


「わーい!」


 エリシアは満面の笑みを浮かべる。


 久しぶりに兄姉みんなと遊べる。


 それだけで胸がいっぱいだった。


 庭園には、楽しそうな笑い声が響き渡る。


「待ってー!」


「捕まえるぞ!」


 兄を追い掛け。


 姉たちと笑い合い。


 花壇の周りを元気いっぱい駆け回る。


 その時間は、以前と何も変わらなかった。


 みんな優しい。


 みんな大好き。


 エリシアは心からそう思っていた。


 その時だった。


「あっ」


 小さな石につまずき、身体が前へ倒れる。


「エリシア!」


 真っ先に駆け寄ったのはセレスティアだった。


 転ばないよう、とっさに妹へ手を差し伸べる。


 エリシアもその手を掴もうとした。


 その瞬間。


 パチッ。


 小さな火花が散った。


 次の瞬間。


 パチパチッ。


 以前よりも大きな火花が弾ける。


「きゃっ!」


 セレスティアは思わず手を引っ込めた。


「お姉ちゃん!」


 手の甲が赤く染まっている。


 小さな火傷だった。


 エリシアは青ざめる。


「ご、ごめんなさい!」


「私……!」


「ごめんなさい!」


 何が起きたのか分からない。


 触れた瞬間、火花が飛んだ。


 ただ、それだけだった。


 ジークハルトも慌てて駆け寄る。


「セレスティア!」


「大丈夫か!」


 リリアーナも泣きそうな顔で姉を見つめる。


「お姉ちゃん……」


 セレスティアは痛みを堪えながら、小さく笑った。


「大丈夫よ」


「これくらい、何ともないわ」


 そう言って笑おうとする。


 けれど、その笑顔はどこか引きつっていた。


 少し離れた場所では、アルフレッドとエレオノーラが立ち尽くしていた。


 二人とも、一歩も動くことができない。


 火傷は軽傷だった。


 治癒魔法ですぐに治る程度の傷。


 それでも。


 二人の胸へ刻まれた衝撃は、それ以上に大きかった。


 エリシアは何度も頭を下げる。


「ごめんなさい」


「本当にごめんなさい」


 誰も怒らなかった。


 誰も責めなかった。


 それなのに。


 庭園には、重苦しい沈黙だけが流れていた。


 エリシアは、その沈黙が何よりも怖かった。

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