SS 第2話 迷子の幼竜
城下町を歩いている途中。
エリシアたちは、道端で泣いている小さな幼竜を見つけた。
見た目は三歳くらい。
まだ人の姿になることに慣れていないのか、頭からは小さな角が覗き、服の隙間からは尻尾がはみ出していた。
「おかあさまぁぁぁ!」
大粒の涙をぽろぽろと零しながら、一人で声を上げて泣いている。
エリシアはすぐに駆け寄り、幼竜の前へしゃがみ込んだ。
「大丈夫ですよ」
「お母さんとはぐれちゃったんですか?」
できるだけ優しい声で問い掛ける。
しかし、幼竜は泣き止まない。
「おかあさまぁぁぁ!」
「大丈夫ですからね」
「一緒に探しましょう?」
エリシアは一生懸命あやした。
優しく話し掛け。
小さな頭を撫で。
妖精たちにもお願いして、幼竜の周りをくるくると飛んでもらう。
けれど。
幼竜の涙は止まらなかった。
母親が見つからない恐怖。
一人きりになった不安。
その混乱が、小さな身体の内側で魔力を大きく乱していく。
ノクスの表情が変わった。
「まずい」
幼い竜族は、まだ自らの強大な魔力を完全には制御できない。
強い感情によって魔力が乱れれば、暴発することがある。
そして突然。
幼竜の身体から、膨大な魔力が弾けた。
「エリシア!」
ノクスが叫ぶ。
次の瞬間。
ノクスは考えるより先に飛び込んでいた。
妹の小さな身体を抱きしめ。
自らの背中を、荒れ狂う魔力へ向ける。
エリシアは目を見開いた。
「お兄様――!」
凄まじい魔力の爆発が、周囲へ広がる。
石畳が震え。
店先の看板が激しく揺れ。
土煙が一気に巻き上がった。




