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イカサマ

カードが配られる。


男はニヤニヤ笑っていた。


酒場の連中も面白そうに見ている。


「後悔すんなよ兄ちゃん」


「そっちこそ」


バンは笑った。


勝負はすぐについた。


最後の一枚を置く。


「はい」


男の顔が引きつる。


「なっ……」


周囲がざわつく。


「マジか」


「勝ちやがった」


バンは椅子にもたれた。


「俺の勝ちだな」


テーブルの金貨をかき集める。


「金貨はもらう」


男が立ち上がった。


「待て!」


「ん?」


「こんなの……イカサマだ!」


酒場が静まり返る。


バンは数秒黙った。


それから吹き出した。


「ははっ」


男が顔を真っ赤にする。


「笑い事じゃねぇ!」


バンは金貨を指で弾いた。


「おっさん」


「なんだ!」


「さっき言ってただろ」


男が眉をひそめる。


バンはニヤリと笑った。


「騙される方が悪いって」


沈黙。


周囲が吹き出した。


「ぶっ!」


「言われてやがる!」


「その通りだな!」


男の顔がさらに赤くなる。


「ぐぬぬ……」


「じゃ」


バンは立ち上がる。


金貨袋を肩にかけた。


「勉強代ってやつだ」


酒場を出る。


夜風が頬を撫でた。


バンは辺りを見回す。


しばらく歩く。


そして見つけた。


町外れの公園。


レイは水飲み場で水を飲んでいた。


「……お前」


レイが振り返る。


「あ」


それだけだった。


まるでまた会うと思っていたみたいに。


「バン」


バンはため息を吐いた。


そして金貨を放る。


レイが慌てて受け取る。


「これは……」


「金貨見せびらかしてる奴がいたから」


バンは肩を竦めた。


「もらってきた」


レイは金貨を見る。


それから顔を上げた。


「取り戻してくれたんですか」


「そんなんじゃねぇ」


即答だった。


「たまたまだ」


「そうですか」


レイは金貨を握りしめる。


「ありがとうございます」


静かな声だった。


本気で嬉しそうだった。


「……」


バンは言葉に詰まる。


変な気分だった。


礼を言われるのは嫌いじゃない。


でも。


なんだろう。


胸の奥が少しだけ落ち着かない。


「……ったく」


視線を逸らす。


レイは不思議そうに首を傾げていた。


「どうかしましたか?」


「なんでもねぇよ」


本当に。


なんでもないはずなのに。


「お礼です」


レイは金貨を差し出した。


バンは見もしなかった。


「いらねぇよ」


レイが首を傾げる。


「どうしてですか」


「どうしてって……」


バンは頭を掻く。


自分でもよく分からなかった。


「その代わり」


レイが顔を上げる。


「もう簡単に騙されんなよ」


「……」


レイは少し黙った。


それから頷く。


「努力します」


「不安しかねぇな」


バンは笑った。


背を向ける。


これで終わりだ。


そう思った。


「……待ってください」


足が止まる。


振り返る。


「なんだ」


レイは真っ直ぐこちらを見ていた。


「やっぱり」


少しだけ迷う。


それでも言った。


「一緒に来てもらえませんか」


バンは眉をひそめる。


「クリスタル探し?」


「はい」


即答だった。


沈黙。


夜風が吹く。


バンは空を見上げる。


ため息を吐いた。


「……報酬は?」


レイは少し考えた。


「金貨二枚で」


バンは吹き出した。


「安っ」


「足りませんか?」


「いや」


バンは肩を竦める。


「乗った」


レイの表情がぱっと明るくなる。


「ありがとうございます」


「勘違いすんなよ」


バンは指を立てた。


「金のためだからな」


「はい」


「絶対分かってねぇだろ」


「わかっています」


「嘘だな」


バンは笑った。

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