新たな仲間
「いけない?」
「いけません!」
クロードはテーブルから身を乗り出す。
「どうして?」
「あの者は平民です」
「平民だから?」
「はい」
「旅の間は、身分を忘れて一緒に過ごしていました」
「だからこそです」
クロードは静かに言った。
「旅が終われば、レイナ様は王女。あの者は平民。その事実は変わりません」
「でも、バンはバンよ」
「王女は、お一人の感情で自由に人を側へ置ける立場ではありません」
「皆を説得するわ」
「金貨目当ての平民など、許可されるはずがないでしょう」
「……本当に、金貨だけが目的だと思っているの?」
「はい」
「私は違うと思うわ」
「では、どうお考えなのですか?」
「バンは、最初から優しかったわ。だから私は、優しい人だと思う」
クロードは額へ手を当てた。
(金貨目当てではない……?)
(では、あの者の狙いは何だ)
ふと、酒場で耳にした噂を思い出す。
(……女好き)
クロードの表情が固まった。
(まさか)
(レイナ様のお体が目的なのでは……?)
「レイナ様」
「何?」
「あの者とは、くれぐれも二人きりにならないでください」
「どうして?」
「お体の接触は、なるべく避けてください」
(危険だ……!)
「平気よ。バンは私に……触れてこないもの」
クロードはホッと胸を撫で下ろす。
レイナは窓の外を見つめた。
(王女じゃない私だったら……あの子みたいに)
脳裏に浮かぶのは、バンがミミィの頭を優しく撫でていた姿。
レイナは小さく首を振った。
(そんなこと考えても仕方ないわ)
ーー
その頃、バン。
「俺、明日から店あんま来ねーかも」
「な、なんで!?」
ダンスが終わった後、ミミィはいつものようにバンの隣の席にいた。
「火のクリスタル本格的に探すことになった」
「……あの王女様に頼まれたの?」
「ああ」
(バン兄、やっぱりあの王女様のこと……)
ミミィの視線で何を言いたいのかバンは察した。
「……違う」
「ふーん」
「クリスタルの男が、貴族狙ってるんだ。放っとけねーだろ」
「そうなの?何で?」
「……身分制度が嫌なんだとさ」
「逆恨みだ」
「つう訳で、協力することにしたから」
ミミィがバンの服の裾を引く。
「……も行く」
「ん?」
「私も行く!!」
「……は?」
「あの人、私に会いにこの店来てたし。私と一緒にいた方が会えるよきっと!!」
「バカ言え。危ねぇだろ」
「だったらバン兄が守ってよ」
「何で俺が……」
ミミィのしゅんとする横顔を見て、言うのをやめた。
「しゃーねーな。一緒に来い」
「やった!」
ミミィが跳ねる。
「クリスタル手に入れたら、王女様からご褒美何もらえるの?」
「何って……」
ミミィが耳打ちする。
「お礼のキス?」
「んな訳ねぇだろ! 金だ、金」
「お金だけ? ウソだぁ」
ミミィはにやりと笑う。
「例えば……エッチなこととか?」
「ないない」
「ざーんねん」
ミミィは肩をすくめた。
「お前さぁ……俺を何だと思ってんの?」
「バン兄? エッチなことしか考えてない、ヤリ……」
咄嗟にミミィの言葉を遮る。
「わかった。言わなくていい」
「でしょ?」
「……言っとくけど、今はそんなヤってねーから」
頭に浮かぶのは、レイナばかりだった。
「何で?」
「……何となくだ」
「じゃあ、私がしてあげる」
からかうような口調だった。
それでも、その頬はほんの少しだけ赤かった。
「お前とはやらないっつってんだろ」
「本気になっちゃうから?」
「アホか」




