嫉妬
「バン兄!」
バタバタとミミィが走ってきた。
「来たのか」
「また火事だって言うから……あの人の仕業?」
「ああ」
目の前には火事でボロボロになった大きな屋敷があった。
「ひどい……」
「また逃げられちまった」
ミミィはバンの腕に巻かれた包帯へ目を向ける。
「怪我したの!?」
「平気だ」
「私が治してあげる!」
ミミィは両手をかざした。
淡い光が包帯の上から腕を包む。
バンは目を瞬く。
「お前……魔法覚えたのか」
「簡単な傷しか治せないけどね」
「スゲーじゃん」
「わーい。褒められた」
ミミィは嬉しそうに笑った。
「魔法苦手だけど頑張ってこれだけ覚えたんだよ。偉い?」
「エライエライ」
二人のやり取りを見つめながら、レイナは胸元をそっと押さえる。
(……あの子には、黙って治癒させるのね)
二人は、当たり前のように笑い合っている。
(やっぱり……あの子は、バンの恋人なのかな)
「頭なでてー」
「はいはい」
バンはミミィの頭を軽く撫でてやる。
「頑張ったな」
「えへへ」
その光景から、レイナは目を逸らした。
(私には触らないのに……)
胸の奥が、小さく痛んだ。
(苦しい……)
「レイナ様?」
クロードの声に、ハッとする。
「何か気になることでも?」
「……何でもないわ」
レイナは小さく首を振ると、まだ治療の済んでいない怪我人のもとへ駆け寄った。
ーー
夕食。
レストランでクロードと向かい合って食事を取る。
その間も、
レイナの頭からはバンとミミィが笑い合う姿は離れなかった。
「頭なでてー」
「はいはい」
バンがミミィの頭を優しく撫でる。
その光景が、何度も頭に浮かぶ。
もし。
あの時、頭を撫でられていたのが自分だったら。
そんなことを想像してしまい、胸がどきりと鳴った。
(……何考えてるの)
レイナは小さく首を振る。
(バンが私に、そんなことするはずないじゃない……)
そっとため息をついた。
「……レイナ様」
「何?」
「あの者は金貨目当てです。私は信用できません」
「お金……」
「他に金払いのいい依頼人が現れれば、簡単に裏切るということです」
レイナは小さく首を傾げた。
「そうかしら」
「そうです」
「でも」
クロードが顔を上げる。
「バンは、私を庇って怪我をしたわ」
「……」
「金貨だけが目的なら、あんな危険なことはしないと思うの」
「怪我をしても治癒魔法で治してもらえると、予め予想していたのかもしれません」
「それなら治療を拒むはずないじゃない?」
クロードは少し黙った。
「……それは、確かに」
「でしょう?」
レイナは少しだけ微笑んだ。
「少なくとも、私には悪い人には見えないわ」
「ですが」
クロードは静かに言う。
「悪い人ではないことと、レイナ様のお側に置いてよい人物かどうかは別問題です」
レイナは静かにクロードを見つめた。
「……側にいていいかどうかは、私が決めるわ」
「それは……旅が終わった後も、あの者を側に置くということですか」




