表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女好きの旅人は、正体を隠した王女を放っておけない  作者: Wataru


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
32/48

気になる

「バン!」


その声に。


バンは足を止めた。


振り返る。


だが。


そこにいるのは人混みだけだった。


誰もいない。


「バン兄?」


ミミィが不思議そうに首を傾げる。


「どうしたの?」


「……いや」


バンは視線を戻した。


気のせいだ。


レイナの声が聞こえた気がした。


そんなはずない。


あいつが俺を探している訳がない。


俺はただの旅人。


あいつは王女だ。


住む世界が違う。


そう思ったはずなのに。


それなのに。


何故だろう。


気になって仕方がなかった。


「明日も、お前の店行くわ」


「うん! 来て来て」


ミミィが大きく手を振る。


「じゃあな」


バンも片手を上げた。


別れた後。


もう一度だけ振り返る。


人混みは変わらず賑やかだった。


レイナの姿はない。


当然だ。


いるはずがない。


バンは小さく息を吐いた。


――クリスタルを持つ男。


まずはそいつに会う。


ーー


翌朝。


朝食が運ばれてくる。


パン。


スープ。


卵料理。


どれも美味しそうだった。


だが。


レイナは食欲がなかった。


小さくため息をつく。


向かいに座るクロードが眉をひそめた。


「昨夜はどちらへ行かれていたのですか?」


レイナの手が止まる。


しばらく黙った後。


観念したように口を開いた。


「バンを探しに……」


クロードは目を閉じた。


やはり。


という顔だった。


「レイナ様」


「何?」


「その者はもう街にいないのではありませんか」


レイナは静かに首を横へ振る。


「いたの」


クロードの動きが止まった。


「いた?」


「ええ」


レイナはスープを見つめる。


「見つけたわ」


なら何故連れて来なかったのか。


クロードはそう思った。


だが。


次の言葉で理由を理解する。


「でも」


レイナは小さく笑った。


どこか寂しそうに。


「隣に女の子がいて……」


「……」


「声をかけられなかったの」


クロードは黙り込む。


「何故か、話しかける資格がないような気がしてしまって」


自分でも意味がわからなかった。


何故そんなふうに思ってしまったのか。


会いたくて探しに行った。


見つけた時は嬉しかった。


なのに。


女の子が隣にいるのを見た瞬間。


足が止まった。


「変よね」


レイナは苦笑する。


「私」


クロードはしばらく考えた。


そして。


「そうですね」


とだけ答えた。


レイナが顔を上げる。


クロードは紅茶を口に運ぶ。


「もう一つお聞きしてもよろしいですか」


「何?」


「もし、あの者が金目当てなのであれば」


クロードは静かに言った。


「王女だと伝えれば、喜んで着いてくるのではありませんか?」


レイナは少し目を丸くした。


確かに。


褒美を約束すれば。


王女として命じれば。


バンは喜んでついて来るかもしれない。


「そうかもしれないわね」


「ならば何か問題でも?」


レイナは少しだけ考える。


そして苦笑した。


「問題なんてないわ」


「ただ……」


窓の外を見る。


「私が、バンの前では王女ではない私でいたいだけかもしれないわね」


クロードは静かに目を細めた。


「レイナとして、ですか」


「ええ」


レイナは微笑む。


「変な子だと思われていても」


「世間知らずだと思われていても」


「それでも」


少し照れくさそうに笑った。


「私は、あの旅の中の私が好きなの」


クロードはしばらく黙っていた。


やがて。


「……そうですか」


それだけ言って紅茶を口に運ぶ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ