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女みてぇだな

町外れの小さな宿だった。


空いていた部屋は一つだけ。


ベッドは二つ。


「今日はここで休め」


「ありがとうございます」


レイはブーツを脱いだ。


バンは何気なく視線を向ける。


そして止まった。


「……」


細い足首。


白い肌。


旅をしている男にしては妙だった。


レイが顔を上げる。


「どうかしましたか?」


「いや」


バンは眉をひそめる。


「お前、本当に男か?」


レイが固まった。


「なぜですか」


「いや……」


言葉に詰まる。


足。


手。


首筋。


なんとなく違和感がある。


だが決定的な何かはない。


「気のせいか」


「気のせいです」


即答だった。


「でかけるんですか?」


ベッドに腰掛けたレイが顔を上げる。


「ああ」


バンは肩を竦めた。


「先に寝とけ」


「わかりました」


レイは素直に頷く。


バンは部屋を出た。



宿の外。


夜風が心地いい。


壁にもたれながらタバコに火をつける。


煙を吐く。


「……」


空を見上げた。


変なガキだ。


世間知らずで。


騙されやすくて。


クリスタルなんて本気で探していて。


放っておいたらすぐ騙される。


「……」


煙を吐く。


頭の中にレイの顔が浮かんだ。


細い足首。


白い肌。


真面目な横顔。


「……いや」


首を振る。


アイツは男だ。


間違いない。


なのに。


妙に気になる。


「……なんだってんだ」


バンは苦笑した。


もう一度タバコを吸う。


煙だけが夜空へ溶けていった。



部屋へ戻る。


明かりは落ちていた。


レイはもう眠っていた。


規則正しい寝息が聞こえる。


「……」


バンは足を止める。


眠っている顔を見る。


長い睫毛。


小さな顔。


昼間は気にならなかった。


いや。


気にしないようにしていただけかもしれない。


「……」


寝顔だけ見れば、


女みてぇだな。


バンは眉をひそめる。


だがすぐに首を振った。


考えすぎだ。


そう自分に言い聞かせる。


そのまま背を向けてベッドへ潜り込んだ。



翌朝。


バンは欠伸をした。


眠い。


昨夜は妙に寝付けなかった。


理由は考えないことにした。



町の角。


レイが頭を下げる。


「ありがとうございました」


「ああ」


バンは手を振る。


「じゃあな」


「はい」


レイは歩き出した。


小さな背中。


大きな荷物。


慣れない旅。


人混みの中へ消えていく。



「……」


バンはなんとなく見送った。


頼りない。


妙に。


(また騙されんじゃねーか?)


そう思った瞬間。


バンは首を振る。


やめやめ。


次の町までの約束だ。


もう終わった。


タバコを取り出す。


火をつける。


煙を吐く。


「……ったく」


なのに。


なぜか視線は、


レイが消えた方向へ向いていた。

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