放っておけない
(金貨一枚で次の町まで)
(楽勝だな)
バンは欠伸をした。
隣ではレイが真剣な顔で地面を見ている。
「どうした」
「クリスタルかもしれません」
「石ころだろ」
その後も珍しいキノコがあるだの。
モグラの穴を見つけただの。
綺麗な鳥の羽が落ちていただの。
いちいち大騒ぎだった。
……変なガキに関わっちまった。
バンは後悔した。
(我慢我慢)
⸻
町。
「ここまで来れば大丈夫だろ」
「ありがとうございました」
少年が頭を下げる。
金貨を受け取る。
バンは手を振る。
「じゃあな」
「はい」
別れる。
バンは歩き出す。
これで終わった。
そう思った。
その時。
「坊主」
男が少年に声をかけた。
「この辺じゃ見ねぇ顔だな」
「探し物をしています」
「へぇ?」
「クリスタルをご存知ありませんか?」
(おいおい)
バンは何となく足を止めた。
「知ってるぜ」
男が笑う。
「案内してやる」
「ありがとうございます」
(いやいや)
バンは眉をひそめる。
(それについて行くのかよ)
少年は疑う様子もなく男の後ろを歩いていた。
数秒。
沈黙。
「行くんかい!」
思わず声が出た。
少年は振り返る。
「バンさん?」
「待て待て待て!」
バンは駆け寄った。
「なんだ?」
男が睨む。
「……コイツ、俺のツレなんで」
男が舌打ちする。
「ちっ」
そのまま去っていった。
少年が慌てる。
「あ……待ってください!」
バンは腕を掴んだ。
「やめとけって」
「でも、クリスタルの場所を知っているそうです」
「嘘だよ」
「……そうなんですか?」
「そうなんです」
少年は少し考えた。
「では、なぜ嘘を?」
「なぜって……」
バンは頭を抱えた。
「金だよ」
「?」
「騙して金を取ろうとしてたんだ」
「なるほど」
「お前、世間知らずにも程があるだろ」
「そうでしょうか」
「そうだよ」
本気で分かっていない顔だった。
「バンさん」
「バンでいい」
レイは頷いた。
「助けてくれてありがとうございました」
頭を下げる。
「……別に」
調子狂うな。
「じゃあな」
「はい」
今度こそ別れる。
バンは近くの酒場へ向かった。
⸻
あんなんで金貨一枚。
楽な仕事だった。
女の子のいる店で酒を飲む。
悪くない夜だ。
「お兄さん、一人?」
「今はな」
笑いながら酒を飲む。
そんな時だった。
窓の外。
見覚えのあるフード姿が見えた。
「……あ?」
思わず立ち上がる。
店を出る。
レイだった。
町外れのベンチに座っている。
「お前、何してんだ」
レイが顔を上げた。
「あ」
「宿は?」
「まだです」
「まだ?」
レイは頷く。
「お金がなくて」
バンは固まった。
「……は?」
「宿代が払えません」
「金貨は?」
レイは少し考えた。
「渡しました」
「誰に」
「クリスタルを知っているという方に」
沈黙。
「…………」
「嘘だったみたいです」
「当たり前だろ!!」
町中に響く勢いだった。
レイは首を傾げる。
「難しいですね」
「難しくねぇよ!」
だから言ったのに……
バンは頭を抱えた。
「今日はどうするつもりだったんだ」
「野宿です」
「町で?」
「はい」
「野宿したことあんの?」
「ないです」
放っておいたら駄目なやつだ。
間違いなく。
「……しょうがねぇな」
レイが顔を上げる。
「?」
「今日の宿代くらい出してやる」
「本当ですか?」
ぱっと表情が明るくなる。
「ありがとうございます」
あんな仕事で金貨一枚貰ったんだ。
宿代くらい出してやる。
……まぁいいか。




