表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女好きの旅人は、正体を隠した王女を放っておけない  作者: Wataru


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
28/48

踊り子ミミィ

バンは昼間、荷運びの仕事をしていた。


適当に働く。


適当に稼ぐ。


腹が減れば飯を食う。


夜になれば酒を飲む。


そんな生活を続けていた。


その日も仕事を終え、酒場へ入る。


適当な席に腰を下ろした。


酒を注文する。


賑やかな音楽。


笑い声。


酒場の中央では踊り子たちが踊っていた。


バンは酒を口に運ぶ。


何となく踊り子たちへ視線を向けた。


その時だった。


一人の踊り子と目が合った。


少女は目を見開く。


次の瞬間。


「バン兄!」


酒場中に声が響いた。


周囲の客が振り向く。


バンは酒を飲みながら首を傾げた。


「ん?」


少女は嬉しそうに駆け寄ってくる。


だが。


思い出せない。


誰だ?


知り合いか?


昔の女?


いや。


そんな歳じゃねぇか。


バンは考える。


だが。


見覚えがない。


「……誰だっけ?」


少女が固まった。


バンは腕を組む。


「俺、ナンパした?」


「違うよ!」


少女は思わず叫んだ。


「私! ミミィ!」


「……ミミィ?」


「うん!」


バンはしばらく少女を見つめる。


そして。


「あー」


思い出した。


森で出会った少女だ。


ボロボロの服を着ていた小さな子供。


だが目の前にいるのは違う。


綺麗な衣装を身にまとい、髪も整っている。


「でかくなったな」


「そんなに経ってないよ!」


ミミィは頬を膨らませた。


「覚えてなかったくせに!」


「悪い悪い」


全く悪いと思っていない顔だった。


ミミィは呆れたようにため息をつく。


だが。


どこか嬉しそうだった。


ーー


酒場を出る。


夜風が気持ちいい。


ミミィはバンの隣を歩いていた。


「今は踊り子やってるんだ」


「へぇ」


「踊りながら旅してるの」


「旅?」


「うん。色んな国のダンスが見たくて」


ミミィは楽しそうに笑った。


「面白いよ」


「そうか」


バンは適当に返す。


だが。


少し羨ましいとも思った。


ミミィにはやりたいことがある。


行きたい場所がある。


自分はどうだろう。


「バン兄は?」


「俺?」


バンは足を止めた。


何でここにいるんだっけ。


荷運びをして。


酒を飲んで。


次の日も同じことをして。


その繰り返し。


頭に浮かんだ顔を振り払う。


何であいつを思い出すんだ。


「俺は可愛い女の子探しだな」


肩をすくめながら答える。


ミミィは呆れた顔をした。


「まだやってたの?」


「まぁな」


「こんなに遠くまで?」


そうだ。


早く地元に戻ればいい。


わかっているのに。


帰れないでいた。


「バン兄理想高すぎなんじゃない?」


ミミィが笑う。


「うるせーよ」


「見つかった?」


バンは答えようとして。


またレイナの顔が浮かんだ。


笑った顔。


怒った顔。


困った顔。


そして。


最後に聞いた声。


――バン。


何でだよ。


「……いや」


小さく答える。


ミミィは首を傾げた。


「私が一番可愛いでしょ」


「アホか」


即答だった。


「ひどーい!」


ミミィが頬を膨らませる。


バンは思わず笑った。


ミミィも笑う。


久しぶりだった。


こんなふうに笑ったのは。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ