負けるか
森の中。
魔物が飛び出した。
バンが剣へ手を伸ばす。
だが。
その前に。
クロードが一歩前へ出た。
「下がっていてください」
銀色の剣が閃く。
一瞬だった。
魔物はそのまま地面へ倒れる。
「……」
バンは目を瞬く。
強ぇ。
本気でそう思った。
旅をしてきた。
それなりに腕には自信があった。
なのに。
その差は、
嫌でも分かった。
別の魔物が飛び出す。
今度はバンが前へ出た。
「こいつは俺がやる」
剣を振る。
魔物は倒れた。
だが。
腕を浅く切られる。
「ちっ」
血が滲む。
「バン!」
レイナが駆け寄った。
淡い光が傷を包む。
みるみるうちに傷が塞がっていく。
「悪いな」
「気を付けてくださいね」
レイナは心配そうだった。
「へーきだって」
軽く笑う。
その横で。
クロードは無傷だった。
「……」
情けねぇ。
奥歯を噛む。
強ぇ奴がいるのは知ってる。
そんなこと、
今さらだ。
でも。
イライラする。
悔しい。
俺が守りたいのに。
……待てよ。
守らなくていいなら、
その方が楽じゃね?
楽してクリスタル見つけて、
さっさと金貨貰えて。
それでいいはずなのに。
何で。
……
バンは小さく舌打ちした。
魔物が襲いかかってくる。
「クソッ!」
バンは一撃で仕留めた。
レイナが駆け寄ってくる。
「大丈夫ですか?」
「ああ」
「よかった」
合流したクロードは呼吸も乱れていない。
いくらなんでもおかしくないか。
コイツもしかして。
素人じゃねーんじゃ……?
一瞬、そんな考えがバンの脳裏によぎった。
「あちらで休みましょう」
レイナが指を指す。
「休憩所があります」
余った木で作ったベンチと屋根があるだけの簡易的な休憩所。
バンとレイナは腰を下ろした。
バンは水筒を取り出す。
「クロードも休みませんか?」
立ったまま辺りを警戒するクロードに、レイナが言う。
「私は、平気です」
「……そうですか」
バンは水を飲む。
「……アイツ何者なんだ?」
「え?」
「普通じゃねーだろ」
「ええっと……その」
レイナは慌てる。
「普段から、護衛の仕事をしていて、クセみたいです」
「ああ、それでか」
「はい」
誤魔化せたかな。
レイナはバンの横顔を見る。
(私は、あなたに嘘をついてばかり)
(ごめんなさい……バン)
バンが振り向く。
「ん?」
「いえ」
レイナは慌てて視線を逸らした。
嘘を見抜かれた気がした。




