距離
図書館を出る。
夕暮れの街。
空は赤く染まっていた。
バンはレイナを見る。
「腹減ったろ」
レイナは少し考えた。
確かに。
朝からほとんど何も食べていない。
「そうですね」
「何か食おうぜ」
バンは通りの食堂を指差した。
だが。
レイナは首を振る。
「私、あれでいいです」
指差した先。
小さな弁当屋だった。
店先には色々な弁当が並んでいる。
「弁当?」
「はい」
レイナは頷く。
「美味しそうです」
バンは苦笑した。
「食堂の方が安くねぇか?」
「そうですか?」
「いや、知らんけど」
レイナは真剣に悩む。
その様子を見て。
バンは吹き出した。
「じゃあ俺もそれでいい」
「本当ですか?」
「ああ」
二人は弁当を買った。
それから近くの公園へ向かう。
ベンチに並んで座る。
風が心地良かった。
レイナは弁当を開く。
「……美味しいです」
嬉しそうだった。
バンも一口食べる。
「ああ」
確かに悪くない。
しばらく静かな時間が流れる。
レイナは本を抱えていた。
図書館で借りたものだ。
「バン」
「ん?」
レイナは少し迷う。
それから口を開いた。
「明日、一緒に図書館へ行ってくれませんか?」
バンは目を瞬く。
「図書館?」
「はい」
レイナは頷く。
「まだ調べたいことがあるんです」
少しだけ間が空く。
「それに……」
言いかけて止まる。
「それに?」
「いえ」
レイナは首を振った。
「何でもありません」
本当は。
今日一人でいた時。
少しだけ寂しかった。
けれど。
なぜそう思ったのか。
自分でも分からなかった。
バンは弁当を食べながら答える。
「いいぜ」
即答だった。
レイナが目を丸くする。
「いいんですか?」
「別に」
バンは肩を竦めた。
「俺も暇だしな」
レイナはほっとしたように笑う。
「ありがとうございます」
「おう」
バンは視線を逸らした。
なぜか。
少しだけ機嫌が良かった。
ーー
夜。
見つけた宿は、ほとんど満室だった。
宿屋の主人が申し訳なさそうに頭を下げる。
「空いているのは一部屋だけです」
「一部屋?」
「ダブルベッドの部屋になります」
沈黙。
バンが固まる。
主人は続けた。
「嫌なら他を探してもらうしか……」
だが。
今日は祭りの時期らしい。
どこの宿も満室だった。
バンは頭を掻く。
「どうする?」
レイナを見る。
レイナは首を傾げた。
「それでいいです」
即答だった。
バンは目を瞬く。
「……マジ?」
「はい」
レイナは頷く。
「ベッドは大きいんですよね?」
「そうだけどよ」
「なら問題ありません」
問題しかねぇ。
バンは頭を抱えた。
レイナは本当に分かっていないらしい。
「バン?」
「……何でもねぇ」
むしろ何でそんな平気なんだ。
バンはため息を吐いた。
「分かった」
主人が鍵を渡す。
レイナは嬉しそうだった。
「今日はちゃんと眠れそうですね」
「……そうだな」
たぶん眠れねぇけど。




