図書館
図書館。
高い本棚が並んでいる。
レイナは目的の本を見つけた。
だが。
「……」
少し高い。
背伸びする。
届かない。
もう少し。
「バン……」
そこまで言って止まった。
「……」
レイナは瞬きをする。
いない。
バンはここにいない。
女性と出掛けている。
「私……」
小さく呟く。
「変ですね」
いつもなら。
振り向けばいた。
困った時は助けてくれた。
それが当たり前になっていたらしい。
レイナは首を振る。
考えすぎだ。
本を手に取る。
ページをめくる。
だが。
文字が頭に入らない。
今頃。
バンは何をしているんだろう。
女性と話しているのだろうか。
笑っているのだろうか。
「……」
レイナは慌てて首を振った。
関係ない。
そう言い聞かせる。
それなのに。
なぜか気になった。
ーー
店の中。
「お兄さん、かっこいいー」
「絶対モテるでしょ?」
女性たちが笑う。
バンも適当に笑った。
「あー、まぁな」
いつもなら。
こういうのは嫌いじゃない。
むしろ好きだった。
なのに。
今日は何だか落ち着かない。
「ねぇねぇ」
女性が腕に抱きつく。
「聞いてる?」
「……あ?」
バンは我に返った。
「何だっけ」
女性たちが笑う。
「全然聞いてないじゃん」
「悪い」
バンは頭を掻いた。
図書館。
今頃レイナは本を読んでいるんだろうか。
「……」
何考えてんだ俺は。
アイツが言ったんじゃねぇか。
羽伸ばして来いって。
俺が誰と何してようが。
アイツには関係ねぇ。
バンは酒を飲んだ。
「お兄さん、飲み過ぎじゃない?」
「あー?」
適当に返事をする。
また酒を飲む。
気付けば。
窓の外が赤く染まっていた。
「……」
バンは目を瞬く。
夕方だった。
「……ヤベ」
立ち上がる。
「え?」
女性たちが驚く。
「もう帰る」
「帰るの?」
「悪いな」
バンは代金を置いた。
そのまま店を飛び出す。
図書館。
まだいるだろうか。
バンは足を速めた。
ーー
館内に鐘の音が響く。
『まもなく閉館いたします』
レイナは顔を上げた。
気付けば外は夕暮れだった。
「もうそんな時間……」
本を閉じる。
結局。
クリスタルについての手掛かりは少ししか見つからなかった。
レイナは立ち上がる。
窓の外を見る。
「……」
バンはまだ来ない。
レイナは小さく笑った。
「よっぽど嬉しかったんですね」
女性に囲まれて。
楽しく過ごしているのだろう。
それなら良かった。
そう思う。
思うのに。
なぜか胸の奥が少しだけ重かった。
「……変ですね」
レイナは首を傾げた。
ーー
図書館。
まだいるだろうか。
バンは走った。
そして。
図書館の前で立ち止まる。
「レイナ!」
レイナが振り返る。
「あ……」
ほっとしたような顔だった。
「バン」
バンは息を整える。
「悪い。遅くなった」
「いえ」
レイナは首を振った。
そして少し笑う。
「楽しかったですか?」
「……あ?」
バンは一瞬言葉に詰まる。
楽しかったか。
そう聞かれると。
「まぁな……」
適当に答えた。
レイナは嬉しそうに頷く。
「よかったです」
「……」
なぜか少しだけ面白くなかった。
バンは頭を掻く。
「それより」
話を変える。
「手掛かり見つかったか?」
レイナは抱えていた本を見せた。
「少しだけ」
「そうか」
二人は並んで歩き出した。
夕日が街を赤く染めていた。




