強くなりたくて
老人は部屋を貸してくれた。
しばらくして。
扉が開く。
「……お待たせしました」
バンは振り返った。
言葉を失う。
白い巫女装束。
長い金髪。
風に揺れる髪。
さっきまで男だと思っていた相手とは思えなかった。
「……」
レイナが首を傾げる。
「どうしましたか?」
バンは慌てて視線を逸らした。
「いや」
頭を掻く。
「ヤベェな……」
「?」
意味が分からないらしい。
レイナは不思議そうな顔をした。
「行きましょう」
「あ、ああ」
歩き出す。
レイナはいつも通り隣へ来た。
だが。
バンは一歩離れる。
「?」
レイナが首を傾げた。
「どうしましたか?」
「あー、あれだ」
バンは視線を逸らす。
「魔物が来るかもしれねーじゃん?」
「そうですか?」
「そうだ」
即答だった。
「前後に分かれた方が見つけやすい」
「なるほど」
レイナは素直に頷いた。
バンは胸を撫で下ろす。
誤魔化せた。
そう思った。
「では」
レイナが一歩近付く。
「こちら側を警戒しますね」
結局距離は変わらなかった。
「……」
「バン?」
「何でもねぇ」
山道を歩く。
「……なんで男のフリしてたんだ?」
レイナは少し考えた。
「強くなりたくて」
「は?」
「男性になれば、強くなれるかなって」
バンは吹き出した。
「なんだそれ」
「おかしいですか?」
「いや」
バンは肩を竦める。
「強い奴は女でも強ぇし」
レイナが目を瞬く。
「弱い奴は男でも弱ぇ」
「……」
「まぁ、お前は」
バンは少し考えた。
「思ったより根性あるけどな」
レイナが少しだけ笑った。
「バンは強いですよね」
「そうでもねーよ」
「でも」
レイナは真っ直ぐ言った。
「私を助けてくれました」
「たまたまだ」
「今も」
バンが顔を上げる。
レイナは少しだけ笑った。
「クリスタル探しを手伝ってくれています」
「それは金貨のためだ」
即答だった。
「そうですか」
「そうだよ」
レイナは頷く。
だが。
どこか納得していない顔だった。
「……なんだよ」
「いえ」
レイナは首を振る。
「優しい人だと思っただけです」
バンは言葉に詰まった。
「……」
そういう顔で言うな。
調子が狂う。
「それに、お前女だったしな」
「女性なら、助けるのですか?」
「そ――」
バンは言葉を止めた。
「……」
レイナが首を傾げる。
「バン?」
「いや」
頭を掻く。
「どうだろうな」
珍しく曖昧だった。
レイナは少し不思議そうな顔をする。
「そうですか」
「そうだ」
バンは前を向く。
女だから助けた。
それなら話は簡単だった。
でも。
レイが男だと思っていた時から。
放っておけなかった。
「……ったく」
「?」
「何でもねぇ」




