7 転生したら剣と魔法の世界だと思ってる⑦
――その頃。シュナイダー帝国の隣国であるエリシス王国。
元は大きな商会の集合体、商業連合国家であったが、数千年前に今のエリシス王家が金の力で周りの商会を捻じ伏せ王政を敷いた。
しかしながら隣国との領域等の問題から小競り合いが多くいずれ大戦があるのではと噂される今の時代、集合体の連合国ではなくトップダウンの王制で良かったのではと国内でも噂されていた。
それに今の3代目の王は、これまでの髭を蓄えた王様ではなく見目麗しい女王であり、国民の人気が高かった。
そしてこの国の始まりの王であるエリシス1世は信仰心が篤く、その信仰は今の女王にも引き継がれている。
今日も女王は城内にあるソル教の神殿で祈りを捧げていた。
「心を照らし世界を導く太陽神様、今日も我が国民が平穏に過ごせます様お導き下さいまし」
白いドレスを纏う女王は彼女自身が太陽神ではないのかと見まがう程のオーラが漂っている。
祈りを捧げ終わると、城内神殿の扉が開かれ数人の軍人が厳かに入室して来た。
しかし祈りを捧げに来たのではなく、急ぎ女王へ報告を上げに来た上級軍人であった。
上級軍人らしく左肩にはアギュイエット、右の胸には勲章が下げられている。
上級の将軍達の更に上、この国の元帥だ。
――「女王陛下、数十年前に放った潜入部隊がソル神様の保護に成功した模様で御座います」
その報告に王女はその表情を満面の笑顔に変える。
「それは素晴らしい報告です。最近は祈りが届かず人の生死の話題ばかりでしたから」
「心労お察しいたします」
「それで潜入されていた方々は今どちらに?」
「はっ。ソル神様をお招きする際シュナイダーの手の者に追われ、道中ソル神様諸共行方がわかりません」
「なんと!直ぐに全力でお救い差し上げねば」
驚きの声が教会内に響くが、司祭達はその会話を聞いていないかのように各々の作業を行っている。
彼らが軍事に口を出す事は無い。
しかし今回は自分たちが信仰する神の話。
平静を装うが、その心は穏やかではない。
「行方不明の場所がシュナイダー帝国の領内である為、隠密に長けた者達で構成された部隊を編成しております」
「ではその編成が終わり次第、なんとしてもソル神様をお救いして下さい!」
「はっ。仰せのままに」
元帥の言葉を聞き、王女は振り返りソル教の司祭、神父の面々へと視線を向け。
「ソル神様は我がエリシスが保護致します。無論保護した暁にはこちらにて世界を見守って頂きますので何卒お願い申し上げます。ですので今の会話はくれぐれも極秘として下さいます様お願い致しますわね」
その言葉に、戦々恐々としながらも礼をする司祭達であった。
――――
――
エリシス王国本星の地球で言うところの月に相当する衛星、ピケ。
その衛生は既に資源を取り尽くされ崩壊してしまった星を人の手によって要塞化された星である。
ピケの宇宙港に数千メートル級の巨大な戦艦や空母が数千隻停泊している中に、黒で統一された小さな船体が10隻程停泊していた。
特殊装甲によりステルス性に優れ、有視界短距離ジャンプが可能な船体全長600メートル程の「特殊航宙駆逐艦ソバーシュ」である。
宇宙空間専用駆逐艦であるものの、その特殊性と使用目的により、各艦3機程の最新鋭ドラゴンフライや特殊戦闘隊輸送船が搭載されており、数隻ではあるが戦闘機動兵器までもが搭載されている。
その特殊航宙駆逐艦ソバーシュの旗艦のブリッジのモニターに上級軍人が映し出される。
「ミッター大佐。情報通りであればシスターナの辺境も辺境、未だ寿命処理もしていない惑星と聞いている。可能であれば住民どもに気付かれず任務の遂行を願いたいが、物が物だ……極秘ではあるが保護が無理だと貴殿が判断した場合はその惑星を滅ぼしてしまい大戦の火種となろうとも構わん。健闘を祈る」
「はっ!必ずや任務を遂行いたします!」
画面に映る片目のエリシス軍中将の言葉に、ミッターと呼ばれた大佐は敬礼と同時に揺れる胸を気にする事無くモニターを閉じる。
ミッター大佐はその場で敬礼し、モニターが閉じられる。
間髪容れず大佐の後方に控えていた茶髪でリーゼントの大尉が口を開く。
「大佐。中将マジっすか?」
「何がだ?」
「いや、戦争になってもいいから惑星潰せって俺っち聞こえたんすけど」
「そう言ってたな」
「……戦争の火種になるなんて俺っち嫌っすよ?」
「はん、ならなんとしてでもお前がソル神を確保せんとな」
「うわぁ~無茶ぶり来た~」
「無茶もなにもあるか。中将は戦争推進派の中核だから失敗したら今度は我々が本体に敵諸共潰されるぞ」
「げっ」
ミッターはシートに腰かけ溜息をつき、指示をだす。
「特殊航宙駆逐艦ソバーシュ船団発進せよ!」
「「アイアイマム」」
動き出す艦隊を見つめながら同期の女の顔を思い浮かべ――。
――あの馬鹿、最後の最後にミスするんじゃないわよ全く。と、悪態をつくのだった。
――――
――
ちょうどその頃。
俺はヨウちゃんとケンちゃんを連れ去る女二人を追いかけていた。
二人の女は住宅街に入ると使えそうな車を探している様に見える。
「逃走用の車を用意してないのか?」
「突発的に児童を攫うとか最低なやつらじゃの!身代金目的にしては雑過ぎじゃろ」
理由はどうあれ、攫われている事実を前に気持ちだけが焦る。
住宅街に入ったし、ここは声を上げて大人に任せるか?
その思考を共有したのかアマテラスが静かに。
「それはやめた方がいい。あやつら寿命もそうじゃが、身体強化もされておる。この惑星の人間なぞ熊に襲われるネズミの様なものじゃぞ」
身体強化ってマジか……。
丁度その時、盗めそうな車を見つけたのか抱えたケンちゃんをおろすと、怯えたヨウちゃんはケンちゃんに縋り声も出さずに泣き出した。
その姿を見て我慢の限界が来る。
なにお前らの都合で幼女を泣かしてやがんだ!許さん!
「ちょ、京平!なにをするつもりじゃ!行くな!」
アマテラスの静止も聞かず俺は大声を上げ二人に突進する。
「コラーッ!お前ら何してんだ!!」
俺の突然の叫び声に驚いた二人はケンちゃんとヨウちゃんをそのまま残し、駆け出した。
「はえ?なんで逃げた?」
頭の中でアマテラスが疑問に思っているが、俺も同じ事を思っている。が「逃げんなーー!」
俺は更に追い打ちをかける。
しかし、その追い打ちがまずかった。
咄嗟に子供に叫ばれ一度は驚いて逃げたが、考えれば逃げる必要などない事に気付いたのか二人がケンちゃんとヨウちゃんを無視して、一気にこちらへ距離を詰める為に走り出した。
そのスピードが人間のスピードじゃない事は見ればわかる。
突然加速した大型バイク並みの加速。
こちらは素手の6歳児、南無三!――が、突然住宅街の十字路から車が現れ。
――ドーーーーーーン!!!!キーーーーーッ!
衝突音がしてからのブレーキ音。
確実に跳ねられたパターン!
両腕で顔を庇ったが、ゴムの焦げた匂いが辺り一面に立ち込める。
「ノーーーーーッ!まだローン残ってるのにーーー!」
ひしゃげた車から悲壮な叫びと共に降りて来たのは頭の毛の無い教会の司教こと丸山のおじさんだった。
帝国の名前が間違ってたので修正。




