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5 転生したら剣と魔法の世界だと思ってる⑤

 教会のおじさんは自治会長としばらくやりとりした後、車に乗り込むとそのまま自分で運転してどこかへ行ってしまった。

 処理数値を聞いてないので自分で数値を確認する事にする。


 処理数値の確認方法っと。

 意識を集中し、脳内の処理数値確認方法のページを開く。


 なになに?クリスタルタワーと連動した水晶玉に触れる事で処理数値が表示されるっと。

 

 ならばと再び水晶玉のある所まで歩みを進めようとした時、あろう事か水晶玉を教会の人がジュラルミンのケースに回収するところだった。


「まって!処理すう――うわっ!」


 不意に身体を抱きかかえられ、そのままの勢いで担ぎ上げられた。

 担いだのはお父さん。


「でかしたぞ京平!勇者なんて凄いじゃないか!」


「あ、ありがとう」


 そんなに都会の惑星に行きたかったのだろうか。

 しかし考えてみれば寿命が延びると言うのは何物にも代えられないのだろう。

 だが、前世で適当になんとなく生きてはいたが寿命が延びたらいいのになんて思った事はない。

 どちらかと言えば、生きていること自体がなにかの修行なのか?とも思って生きていた節もあるくらいだ。


 すると父の後方から母が俺に顔を寄せると。


「勇者だなんて本当に信じられないわ。凄いね京平ちゃん」


 勇者が凄いと皆が言うが、何が凄いのかいまいちわからない。

 脳内ページの勇者項目にある《《説明があまりにも少な過ぎる》》。

 処理数値関係無く強いって、なーーーんそれ、だ。


 ならば凄いと言っている本人に聞いてみればいいと思い至り。 


「勇者ってそんなに凄いの?」


 俺のその問いに父は目を輝かせ。


「凄いなんてものじゃないぞ」


「何が凄いの?」


「何が凄いってそりゃもう凄く強いらしいぞ」


 あー、うん。そーじゃない。


「強いと、ダンジョンとかでモンスターとかに負けない?」


 勇者と決まってしまったならば仕方がないと既に切り替わっている。

 ならばその勇者はこの世界のダンジョン攻略に役に立つのかが問題であり、腐っても勇者。絶対悪い事にはならないだろう。

 ならば、その勇者の称号がどれ程役に立つのかが問題なのだ。


「京平は凄いなぁ、もう脳内検索の仕方がわかった上にダンジョンの事まで検索するなんて」

「私達が冒険者だった頃の話を目を輝かせて聞いていたものね」


 そうなのだ。

 俺が俺になる前の俺も、両親の冒険者時代の話が大好きだったのだ。

 ちなみに、脳内検索の方法が他の皆と同じなのかは分からない。

 他の児童達は水晶玉に触れる事でネットワーク機能が脳に宿るみたいだが、俺は脳内のアマテラスを介してだから。

 そんな事より、両親の表情が思わしくない。


「どうしたの?」


「あぁ京平、そのなんだ、たぶん都会の惑星にもダンジョンがあるかもしれないから、あれば一緒に行こう」


「そ、そうよ!家族でダンジョン攻略なんて楽しそうね!……あればだけど」


……もしかしてだけど、ダンジョンってこの星にしかないの!?


 急いでダンジョンページを開く。



 ダンジョン。

 シスターナ帝国シュナイゼル領惑星エリシオンにて、100年前に起こった魔力災害時に発生した次元断層迷宮。迷宮には希少鉱石等が稀に採取出来るうえ、迷宮内の生物は狂暴であり――――。


 読み進めるが、最初の一文で全てを察している。

 そもそもダンジョンで調べたのにも関わらず、地名がピンポイントでこの星の名前を指しているのだから。


「まぁなんにせよ引っ越しの準備しないとな!」

「そーねあなた!」


 俺は家に帰ってから、脳内で鳴らない口笛を吹くアマテラスとじっくり話をしないとなと誓うのだった。




――――

――



 シュナイゼル領の主都どころか上手く行けば帝国の首都星にまで行くかも知れない才能を持った子供が二人出た事で、報告を上げる為に代官ビルへと車を運転する教会のおじさんこと、シュナイダー帝国ソル教の司祭、丸山。

 うまくやれば自分も首都星は無理でもシュナイゼルの主都くらいには行けるのでは?と浮き足立っている。


 丸山は代官を務める女上司の司祭である氷上にアポイントを取る為に車上より電話を鳴らす。


「氷上司教様、山陰地区の丸山です。今お電話よろしいでしょうか」


「おや丸山さん、今日は洗礼の儀式でお忙しいのでは?」


 おじさんである丸山はダミ声だが、年上である上司の氷上は非常に若々しい声の持ち主。

 実際彼女はソル教の本部より派遣された人間である為、寿命の処理がされており見た目は20代だ。


「今日も綺麗なお声でご機嫌麗しゅう。あ~いえ、私の地区は子供が少ないもので今年の儀式は終了しております」


「そうですか、どこも一緒ですね。寿命が長くなれば子供を滅多に作る事すらしないし、寿命が短くても治世の不安などで子供が少なくなる。困ったものです」


「え、ええ本当に」


「それはそうと、今日はどの様なご用件で?」


「実は今そちらに向かっておるのですが、当地区より聖女で処理数500を超える少女と勇者の素養が出た少年が現れましたので出来ましたらお会いしてご報告をと」


「ガタッ!――なんですって!!」


「氷上様?」


「あ、いえ。それは素晴らしい。私も長年代官としてここへ居りますが初めての事です」


「そーでしょうとも!ですので今向かっておりま――」


 そこで丸山の声は氷上によって遮られる。


「来なくても結構です」


「え?で、ですが今回の件は重大な――」


「大丈夫です。それよりも丸山さんには一度引き返して頂いてご家族、お二家族に今後のご説明をお願いしたく思います。明日、お昼過ぎに私もお伺いさせて頂きますのでそれまでに説明を終わらせて頂いていれば嬉しく思います。尚本件はソル教特級事項とさせて頂きますので他言は無用と致します」


「そ、それではシュナイゼル領主様に報告があがらないではないですか!」


 先ずはシュナイゼルに取り入ろうと考えた丸山からすれば当然の反応だったのだが。


「丸山さん先日貴方を歓楽街で見かけたと報告を受けてますが、まさかソル教の司祭がいかがわしい店、確か子猫のお城って名前でしたか。に通うなんて事はなされていませんよね?」


 行きつけの風俗店の名前までバレてる事に戦々恐々とする丸山は急いで手のひらを返す事を決定する。

 それもそのはず、ソル教の司教以上は風俗に通うとソル教から脱退させられるのだ。

 そうなるといきなり無職となる。


「か、畏まりました!直ちに説明に向かいます、では!――プツン」


 電話を切り、椅子に深く座りなおす氷上。

 丸山は氷上に対し、少し邪な心が見え隠れする人物ではあるが嘘を吐くような人物ではない。本当に聖女や勇者であれば、ここシュナイゼル領の領主等に渡すわけにはいかない。

 可能であればソル教が保護しておくのが一番だろうと思考を巡らせた上での判断を間違っているとは思わない。


 片手を上げ、モニターが空中に浮かぶ。

 そこに書かれた特級回線の文字が氷上の視線で起動すると、回線は直ぐに繋がった。


「おや、特級回線とは珍しい。何か希少な子供でも見つかりましたか司祭」


「お久しぶりです母、いえ枢機卿。音声のみで失礼致します」


「そうですね、可愛い娘の顔が久々に見たかったのですが急ぎでしょうからいいですよ。それで?」


「はい、私の確認がまだですが聖女と勇者が発現した模様です」


「……そうですか。二人同時というのはまた」


「なにか?」


「いえ、こちらの話ですので気にしない様に。それでは子供達とその家族はソル教の船で直接お迎えへ行かせますのでそれにお二家族とも乗せてあげて下さい。引っ越しの為の人員もこちらから派遣します」


 首都星の船でも領主の船でもない事に枢機卿の考えも同じである様で心配事が一つ減る。


「流石です。かしこまりました」


「当然です。あとヒカルの代わりに別の代官を向かわせますので貴女もそれに乗って帰って来るように」


 司祭は自分の名前を呼ばれた事よりも、別の代官と入れ替えに帰って来いと言われ動揺する。


「いや、しかし私は――」


「だまらっしゃい!結婚もせずいつまで次元断層のダンジョンで遊んでいるのですか!順調に行けば50年前には大司教になってたはずなんですよ!先日みっちゃんのお母様からお孫さんの運動会の動画を興味も無いのに2時間も見せられたこっちの事も考えなさい!」


 100年前にこの地に赴任している間にダンジョンなるものが出現し、戦争に行かない司祭は今まで持て余した魔法をここぞとばかりにダンジョンで放ちまくり、それ以降ダンジョンに毎週通うヘビーユーザーであったのだが何故かバレていた。ちなみに、みっちゃんとは数年前に結婚した軍部に所属する幼馴染である。


「ううっ。畏まりました」


「わかればよろしい。あ、それと、そちらのシュナイゼル領内で何やら警備隊と別の枢機卿の方で不穏な動きが見られます。心の隅に留めておきなさい」


「他の枢機卿ではなく、別の枢機卿、ですね」


「そうです。では」――


 画面を閉じ再び椅子に座ると溜息をつく。


「はぁ……ダンジョンともおさらばかぁ。結局50年通って50階層までしか進めなかったかぁ残念。それより別の枢機卿という事は他国へ行ってる枢機卿では無く、国内の皇帝派もしくは貴族派の枢機卿か。まったく何を企んでいることやら」


――コンコン


 ノックの音に返事をすると、助祭の一人が入室する。


「司祭様、警備隊より昨日上空あった戦闘の報告が上がっております」


「戦闘?そんなものがあったのか」


「はい。警備隊の報告では賊の戦闘機は撃墜しその際乗組員も死亡しているとの事で問題ないとの事です」


「ほ~、ぼんくら警備隊にしては素早いな」


「それと賊が山陰で機体より盗んだ物を上空から放出した様なのでしばらく調査に入るそうです」


「空中爆破される前に宝を捨てて後で回収するつもりだったが撃破されてしまったと。で、その山陰の場所はわかっているのか?」


「はい、山陰のイナミ町との事です。まぁ田舎なので警備隊の調査ものんびり行われるかと」


「山陰のイナミ町だと!?」


「え、はい」


「いつ!いつ調査に入るんだ!」


「えーっと報告書には明日からだと」


 え、えらくのんびりだな。まぁこんな田舎の警備隊なんてそんなもんか。と思いながらも氷上の行動は早い。

 彼女は立ち上がり、上着掛けから上着を取りながら。


「今すぐ屋上の小型飛空艇、いや、私の小型旅客船の準備を!今すぐイナミ町に向かうぞ!操縦は君に任せる。急ぎ準備を」


「え、あの宇宙船ですか!?動くんですか?」


「失礼な事を言うな。あれは毎日手入れして色々改造もしてある優れものだぞ?」


「か、畏まりました。直ちに準備に入ります」


「準備出来次第出発だ」


 立ち去る助祭をしり目に氷上は内心焦っている。

 無論自分の船の事では無く、調査の事だ。


 ぼんくらな調査などどうでもいい。場所が問題なのだ。


 山陰のイナミ町は丸山司祭の管轄。

 もし、もしも聖女と勇者がイナミ町の人間であったなら、二人の登場に沸く住民が黙っているはずもない。

 いずれバレるにしろ、連れ去った後であれば領主にいくらでも言い訳なり理由を付けて誤魔化せるが、先に見つけられると厄介極まりない。

 幸か不幸か調査に入るのは明日。

 ならば今日中に二家族とも私の船でこの惑星から連れ去る他ないのだ。




――――

――



 時間は少し戻り、洗礼式前日の深夜。 

 熊が徘徊する深夜の山中。


―ーぐぉお~、ぐおぐお。



「少佐~生きておられます?」


「問題ない。中尉は問題ないか?」


「問題はないですが、降りれそうもありません。出来れば助けて頂ければありがたいのですが」


 そこには木にぶら下がる盗賊姿の二人の女性の姿があった。




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