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第6話 宇宙モンスター

――シュナイゼル皇帝。


 その男がいつ皇帝になったのか。それを気にする者は少ない。

 何故なら既に数万年を皇帝として座しているからに他ならない。


「陛下、我が軍は既にエリシス王国国境にて惑星要塞を3基配置。大型戦艦を含む一万五千隻をそれぞれの惑星に配置しております」


「四万五千隻か。少ないな」


「ですがエリシスは元は商売をして出来た下賤の者達の集まりです。滅ぼすならこれくらいで十分かと」


「そうか、お前が言うのならそうなのであろうな。できるのか?」


「お任せください」





「そんな訳で変な誤解させて悪かった。ごめん」


 その日のランチの場で陽ちゃんとケンちゃんに頭を下げた。


「謝るほどでもないけど、お前がそれで納得するなら承ったよ」


「気にしてないよ?きょうちゃん」


 ケンちゃんには伝わったが陽ちゃんは本当に気にしていない様だ。


「ところでさぁひか姉」


「なんだ?陽ちゃん」


「今日から京ちゃんのパパとママがケンちゃんのご両親と機動兵器の訓練するから当分はダンジョンはお休みするって言ってたよ?」


「なにっ!?これから皆で攻略だと考えていたんだが!?」


――――

――


 エリシス本星、36000km上空。

 静止軌道衛星基地パスカル。


 巨大な軌道衛星基地の基地司令室でミッター准将はモニターを見ながら感嘆していた。


「冒険者とはここまで凄くなるものなのか……」


 午前中に地上の機動兵器シミュレーターで基礎訓練を行い、午後には宇宙へ上がって実機訓練にまで参加している。それだけでも驚嘆すべき事だが、既に軍のパイロットと互角に渡り合っていた。


「橘さんのパパさんママさんは異常ですね」


 ミッターは近くで見ていた士官のその言葉に首を振る。


「いや、山田夫妻の事を思えば彼らだけが異常とも思えない」


「あ、そう言えばあの二人も健太君も異常でしたね」


「あぁ……惑星エリシオンに何か秘密があるのかも知れないな」


「宣戦布告されましたから調査には行けませんね」


「難儀な話だな」――ビー!ビー!ビー!ビー!


 その時急に鳴り出す警報音。


「何事だ!」


「今レーダー観測室から報告を受けてます!――――なにっ!以前から報告のあった軌道上の次元断層から!?」


「どうした!」


「はっ、報告します!静止軌道上の次元断層より、その……」


「なんだ!はっきり報告しろ!」


「その、モンス……モンスターが湧いてきてます!」


「はぁ?」



――――

――


「あなた?」


「ん?」


「機動兵器って面白いわね」


「んー僕は自分の身体で飛んだり跳ねたりしてる方が好きだけど気持ちはわかるよ。魔法、使えるものな」


 橘スグルの白い機動兵器の隣、橘ヒナ子の乗る機動兵器から放たれる緑に輝く斬撃。


 ライトビームサーベルなので、誰でも斬撃を飛ばすのは可能だが、問題はその数だ。


 一振りにつき一筋が普通だと聞いていたが、自分の奥さんが放つ斬撃は一振り数百なのだから、異常なのはそこだろう。


「た、楽しそうだねヒナ子」


「ええ、そうなの!剣に魔法が乗るとか先に言って欲しかったくらいよ。ほら見ててあなた」


「ん、え?」


 妻の指示で機体を見ようとした時、レーダーが赤く染まる。


「おいヒナ子、レーダーおかしくないか?」


「え?あ、まっ赤ね。なんでしょ」



――『橘夫妻!直ちに帰投してください!繰り返します!直ちに衛星基地へ帰投してください!』


 

「なんか様子がおかしいな。ヒナ、すぐに帰るぞ」


「ええ。でもあなた」


「どうした?」


「あれ、見える?」


 ん?と顔を上げたスグルはあり得ないものを目にすると同時に、懐かしさと興奮が押し寄せて来た。


「あれ、ダンジョンのモンスターだよな」


「ええ、エリシオンダンジョン地下13層。インセクトモンスターだわ……大きいわね」


「あぁ……デカイな」


「やる?」


「いや、数が多すぎだ。パーティーも二人だけだから辛そうだ」


「じゃ撤退ね」


「帰るぞ」


 二人の判断は早い。それはダンジョン探索者として常に正解を引いてきた者の経験なのだろう。


――――

――


 衛星基地に戻ると山田夫妻が待ち構えていた。


「お帰りなさい橘さん」


「あぁ山田さん。機動兵器は楽しかったのですが、この騒ぎで」


「ええ。宇宙でモンスターが現れたっておかしな事言ってましたよ」


「いや、それ本当ですよ。今、見て来ましたから」


「え、本当だったんですか!そうかぁ本当だったか……それで、どうします橘さん」


「どうします?とは……」


「橘さんは重戦士、奥さんは魔導士でしたよね?」


「ええ、そうですが……まさか!いや、でも山田さんって素養は職人系じゃなかったですか?」


「いえ実は私、魔法士なんですが見た目がコレなもんで周りの方には黙ってたんですよ」


 その巨大な姿を見てスグルは納得する。

 見た目はどう見ても前衛職だ。


「それにうちのかみさんも素養は武闘家なんですが、かみさんもダンジョンに興味がなかったもんで」


「魔法士に武闘家ですか……それはまたダンジョン向きな素養ですね」


「で、ですね。この8年、仕事は相変わらず楽しいんですが、ダンジョンも楽しくなってしまいましてね」


「おぉおお~それはご愁傷様です!」


「で、どうします?」


「ふふふっ、では4人。いや、リュカ氏も一緒にここへ上がって来てますからミッターさんに直談判しに行きましょう」


「ふふふふっ、楽しみですね。機動兵器でモンスター狩り」


「ええ、人間と戦うとか頭おかしいですからね。是非ご一緒しますよ」



「「ふふふふふふふ」」



 そして二人はミッターに機動兵器でモンスター狩りをさせてくれと直談判に向かうのだった。




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地球的なら、36000kmないと燃料が持たない、静止衛星。
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