第7話 New機動兵器
「え、ダメですよ?」
「そこをなんとか!」
静止軌道衛星基地パスカル、指令室では。
山田パパと橘パパはミッター准将にモンスター狩りに参加させろと食い下がっている。
「そもそも橘さん機動兵器に乗るの今日がはじめてですよね。そんな方をあの訳の分からない生物と戦わせるなんて出来るはずないじゃないですか。なんかあったら息子さん達に顔向けできません」
「しかしですよミッターさん、あれはどう見てもダンジョンモンスターですよ?ダンジョンと言えば王女様も攻略だーって言ってたじゃないですか」
「そうは言われましても、今はこちらの戦力で十分間に合ってるのでお二人が危険な場所へ向かう理由がありません」
これ以上の会話は意味が無いと、ピシャリと話を打ち切るミッターだったが。
「――司令!次元断層から敵性生物がさらに増えています」
「何匹だ!」
「おおよそ百!」
「百匹だと!?こちらの機動兵器の動きはどうだ」
「30機が戦闘状態に入っておりますが、1匹に3機であたっていますので現状維持が精一杯の様です」
「モニターを出せ!」
「はっ!」
10匹の巨大生物に30機の機動兵器が戦っている。
1匹に対して3機の機動兵器が囲み中距離から射撃で応戦しているが、昆虫型のモンスターはその機動力を生かしその射撃を軽々と躱していた。
「3機で中距離射撃?なんで前衛と後衛で別れない……あ、粘液飛ばされてる。ば、馬鹿、なのか?」
そんな橘パパの独り言に苦虫を噛み潰したような顔をするミッター。
――ポン
その時モニターに映し出されたのは出撃デッキ上のフェルミナ大佐。
「みっちゃ……ミッター准将、敵はダンジョンモンスターが巨大化したものに間違いない!私も出るが出来れば橘さんと山田さんも出して機動兵器に指示を出させてくれ!」
「指示ならここからでも――」
「上がって来るんだよ!」
「はい?」
「だから、京平君ご一行が上がって来るから機動兵器でパーティー組んで戦うんだとさ」
「……どういう事?」
◇
「はぁ、これから漸く皆でダンジョンだって思ったのに……父さん達は機動兵器かぁ」
「(京平のパパじゃから機動兵器に乗ったらハマって当分ダンジョンどころではないの)」
「(もうその姿が目に浮かぶよ……)」
ため息をつきながら、ランチのサンドイッチを頬張る。
「お、そう言えば俺達の機体も完成して上にあるらしいぜ?」
「俺たちの機体?」
ケンちゃんの言葉に首をかしげていると。
「あぁ、言ってなかったな。3人の素養を活かせる様に君たち専用の機体が既に完成しているそうだ」
ひかる姉の言葉に俺はサンドイッチを食べる手が止まる。
「(おい、心拍数が激上がりしとるぞ?大丈夫か?)」
「(だ、大丈夫……なわけないだろ!)」
「(ど、どうした!)」
「(どうしたもこうしたもない!専用機だぞ!せんよう機!ダンジョンどころじゃないだろ!うわぁ~俺も行きたい、今すぐ宇宙に上がりたい!)」
「(いやダンジョン攻略が先じゃろ)」
「(ぐぬぬぬっ、わかってるだけに辛い)」
――ポン
ひかる姉の腕に反応があり、彼女はモニターをそのまま開く。
「やぁフェル。こんな時間にどうした?」
「お?サンドイッチか。うまそ~」
「なんだ、フェルは昼食べてないのか?」
「食べてる途中に警報が鳴り響いてな」
「警報?なにかあったのか」
「ほら、宇宙に次元断層が一個あったろ。あれが開いて中からモンスターが出て来た」
「は?」
「そして聞いて驚け。そのモンスター、地下のモンスターの20倍くらいデカイ」
「……お前はなにを言ってるんだ?」
「お、後ろに映ってるのは京平君じゃないか、オーイ!きょーへーくーん!」
俺はひかる姉越しに手を振る。
「地上のダンジョン攻略中に悪いんだけどさ、宇宙のダンジョンもついでに攻略してくれないかな」
「おい、私たちは今それどころじゃ――」
「よろこんで」
「京平?」
「よろこんで」
ひかる姉を差し置いて二度言った。
「ひかる姉、クルーザー出して」
いまだ目をぱちくりさせる彼女だが、フェルミナさんは。
「流石勇者。君たちの機動兵器は準備しておくから待ってるよ」
「フェルミナ!」
「まぁまぁそうカリカリしなさんなって、嫁の貰い手いつになっても現れないぞ?」
「う、うるさい!」
「あ、そうそう。上にあがるついでにみっちゃんの娘も乗せて来てくれない?」
「ニャーか?」
「そうニャーちゃん。彼女の専用機も完成してるから宜しくね~」――プツン
「おい!フェル!」
立ち上がるひかる姉だが、そこにフェルミナさんの姿はもうない。
そして遠巻きに見ていた陽ちゃんとケンちゃんは。
「結局宇宙だね」
「そうみたいだな。俺も前の機体を誰かさんにボロボロにされて乗れてないから専用機ってのにはワクワクするけどな」
「んー私は何でもいいかな。だって可愛くないもん」
「いや、陽ちゃんの機体の映像だけ前に見せてもらったけど可愛かったぞ?」
「え、ほんと!」
「タヌキみたいで可愛かった」
「タヌキなの!?」
騒がしくなりだしたリビングで独り項垂れるひかる姉に俺は声を掛ける。
「そんなにダンジョンに行きたかったの?」
「……そうじゃない」
「どうしたのさ、ひかる姉らしくもない」
「私の……私の機体はまだ修理中なのだ」
あーそっちか。
なんか俺って人の機体ばっかりボロボロにしてて申し訳ないな。
「(あー、あの趣味の悪い金色の機体かの?)」
「(そーそれそれ)」
その発言が耳に入ったのかケンちゃんが振り返り。
「あ、ヒカル姉さんの機体はフェル姉が軍の方で新しいの用意するって言ってたぞ?」
「なにっ!それは……いいのか?私はソル教の司祭だぞ?」
「んーその辺は良く知らないけど、お金ならあるってフェル姉が言ってた気がするなぁ。だから俺も結構わがまま言ったし」
「……まさか母上が?いや、もっとダメな気が……」
「ま、いいじゃんとりあえずそのニャーって子連れて上にあがろうよ」
「あ、あぁそうだな。ちなみにその機体の色って」
「……軍だから流石に金色じゃないんじゃないかなぁ」
ケンちゃんのその言葉にがっくり肩を落とすひかる姉。
「(どんだけ金色好きなんじゃこのおなごは)」
◇
静止軌道衛星基地パスカル、機動兵器ドック。
「新型の準備はどうか」
フェルミナが整備兵に問いかける。
「大佐。全機即時稼働可能です」
「そうか」
「ですが大佐。機動兵器で金色って本気ですか?狙ってくださいって言ってる様なものですよ」
「スポンサーの娘さん本人のたっての希望だからな」
「はぁ、ですが……新型が全部金色って……目立ち過ぎですよ」
「……そっちの方が面白いと思った」
「え?」
「どうした?」
「今面白いって……」
「一機だけ金色とかより全機金色の方が面白いだろ?」
「マジですか」
「マジもなにも既に全部金色だからな!あはははははははっ!」
そして俺たちはミッター准将の娘さん、ニャーさんを待ち宇宙へと上がる。




