第4話「勇者の中の誰か」
キャロラインは女王との会話も終わり、庭園から出た所で8年前からエリシス王国に滞在する枢機卿、システィナとすれ違う。
「へぇ~最近の司教は王女と直接会話が出来るくらい偉いんだ」
彼女のその言葉に一礼して立ち去ろうとする、が。
「まてまてまて!別に取って食やぁしないさ。ちょーとだけ話し聞かせてくれや」
「特にお話するような事はありませんが?」
「こっちにあるってんだよ」
「ではここでお聞きしますが?」
「逆に聞くが、いいのか?こんな人目に付くところで」
キャロラインは周囲に王女の側近しかいない事を見計らい。
「やましい事はありませんのでどうぞ」
「じゃ聞くがお前のしてる研究、あれはどこが金を出してる」
彼女のその指摘に一瞬戸惑いながらも脳内で、彼女のその言葉の真の意味を見出す。
「勿論王女様からです」
システィナは一瞬目を細め。
「……まぁそういう事にしといてやる。ただな、もし氷上薫枢機卿あたりから金が流れてるんだとしたら……おまえさん、覚悟しろよ」
システィナ枢機卿はそう言い残し口笛を吹きながら立ち去った。
「あれが本部で助祭から一気に枢機卿までのし上がった傑物ですか……厄介な人物がいたものです。もし今回の計画に支障をきたす様なら――いえ、これ以上は神に仕える者の考える事ではありませんね」
キャロラインはシスティナと逆方向へ歩き出す。
一方システィナは陽気な口笛を突如止め後方を振り返り既に遠くになったキャロラインの背中を見つめ。
「あのやろう、絶対尻尾をつかんでやる。教皇様、見ていてください!私、今回もやってやりますから!」
そしてそっと取り出したペンダントを開き、そこに映るイケメンへ軽くキスをした。
◇
場所は戻り京平の自室では、急に開いたドア越しに氷上ひかると目が合ったまま二人で固まっていた。
「や、やぁ京平君。元気そうだな」
「ひかる姉も元気そうだね」
「「……」」
俺は考える。
部屋の前にひかる姉が居る事には驚いたが、問題はそこじゃないと直ぐに気づいた。
先ほど俺はアマテラスとの脳内会話を途中から声を出して喋っていたのだ。
やはりそれを聞いたからよそよそしいのか?独り言を永遠喋る危ない奴だと思われた!?
「「……」」
ど、どうしたと言うのだ。なぜ彼は微動だにしないのだ!も、もしかして独り言を言っていたのを気にしているのか?確かに前回の機動兵器戦闘ログでも彼は独り言を永遠喋っていたが……まて!いや違うぞ!これはあれだ、わ、私が彼の部屋を覗いていた事自体に不信感を持っているのだ!違うぞ京平君、私はそんな無作法者ではない!」
「「あの」」
声が重なる。
「ひかる姉からどうぞ」
「京平君からどうぞ」
「「ぷぷっはははははは」」
少し笑い合った後、俺から切り出した。
「なんだよひかる姉、一応年頃の男子なんだから覗き見はやめてくれよな」
「ばっ、違うぞ!覗いてはいない!私はただ京平がその、なんと言うかだな落ち込んでるのではないかと思ってだな――」
正直そんな事には気づいてたさ。
いつもありがとう、ひかる姉。と心で言いながら。
「ありがと、ひかる姉」ともう一度彼女に伝えた。
すると彼女は顔を赤くし。
「あ、当たり前だ。私はお前の……お前の……あれ?、なんだ?」
「知らないよ!!台無しだよ!!」
「す、すまん!家族!そうだ家族なんだからな!」
「知ってるよ!」
「くっ、今日は京平が悪い奴になってる」
「いつも善人だよ!」
「いーや、先程も誰かに取り憑かれた様に独り言を言っていたではないか!」
「覗いてんじゃねーか!!」
「あ」
――――
――
――部屋でひかる姉と騒いだ後、俺たちは場所をベランダへ移していた。
「じゃなんだ?京平はそのダンジョンの夢を見たから急いで攻略しようとしてただけなのか?」
「うん、なんかゴメン。変な気を遣わせちゃって」
「はぁ~なら良かった。もしかしてダンジョン愛がもう無くなってしまったのかと思ったではないか」
「え、愛してはないよ?」
「それは嘘だな。アイリーンの虫ダンジョンですら『ウヒャー!今夜は虫のちゃんこ鍋だぜぇ~!』って言うくらいは愛している事を私は知っているからな」
うわぁ~調子乗って言った記憶あるわ。
「(……のう、京平よ。氷上になら夢の話をしても構わんのではないか?)」
「(……だな)」
「どうした顔を伏せて。認めたら恥ずかしくなったのか?」
「なぁひかる姉。ちょっとおかしな事を言うかも知れないけど聞いてくれる?」
「……ん?今更?」
「(そーなるわなwwwww)」
「(頭の中にw入れるな!)」
「いつも真面目じゃないか!いいから聞いて!」
「あ、あぁ、すまん。よし、じゃ聞くぞ!」
ひかる姉は俺の前に正座して背筋を伸ばす。
その姿は彼女の本気説教モードに近いものがあったので俺もその前に座り正座した。
「その、夢の話なんだけど」
「ダンジョンを早く攻略しようと思ったきっかけの話だな?」
「そう。最近よく見る夢で、その夢の中の俺は俺じゃないんだけど……」
「まぁ夢だからな」
「ただ、その夢が妙にリアルで。俺は夢の中で別人になってダンジョンを攻略していってるんだ……」
ひかる姉は頷く。
瞳は俺を見つめ、真剣に聞いてくれているのが伝わる。
「……京平」
「うん」
「私よりダンジョンの事好きじゃないか?」
「ちげーからっ!!」
「(そーなるわなwwww)」
「(ダブリュやめい!)」
――そして俺はひかる姉に俺ではない俺の夢の話を語った。
「そうか。京平の言うその人物、ヘラクレスと言う人物に心当たりは?」
質問にどう答えようか悩む。
前世の記憶にヘラクレスと言う名の人物は確かに知っている。
ギリシャ神話のヘラクレスだ。
だがこの世界の俺はギリシャ神話を知らない。
「(京平よ、我もそのギリシャ神話?そんな神の話はしらんぞ?)」
ふむ、アマテラスが言うなら。
「心当たりはないかな」
「そうか……なら何故そこまでその夢を信じるのだ?リアルに感じるからだけではちょっとなぁ」
「それなんだけど、最近頭にシステム音声みたいなものが聞こえたんだ」
「システム音声?機動兵器のピピッ『stand-by』みたいな音声がか?」
「まさにそれ」
「ロボットも好きだからなぁ京平は」
うぐっ、何も言い返せねえ。
「もしかしてだが、勇者スキルの影響かもしれないな」
「勇者スキル?」
「あぁ、すでにデータとしても残ってはおらず、伝承のみで言われている事なんだがな。過去、勇者素養を持った者が居て、その者にはもう一人の人格が心に住んで居たそうだ」
「勇者の中に別の人格……二重人格って事?」
「いや、京平が言う様に心にもう一人居る状態らしいのだが。詳しくは母上、枢機卿に聞いてみればもう少しわかるかもしれないが……」
「そうですか」
「まぁ君は勇者の素養持ちだ。十分にそのシステム音声については考える余地はあるな」
「そうだよね」
「ふむ。では明日にでも私と京平で母様、枢機卿に通信で面会できるよう申請しておくとしよう。あれでも枢機卿だからスケジュールは押さえないといけないからな」
「是非お願いするよ。データ検索でも勇者の情報がほぼなかったから」
「ははっ、まぁ今更だけどな。事が事だけにちゃんと調べないといけないな」
「うん。あ、夢と言えばさ……」
「ん?」
「ひかる姉もここへ来るソバーシュの中で変な夢を見たとかでフェルミナさん呼んでなかった?」
「あぁアレな。あれはあれで面白いけど、今日はもう遅いし明日、いや起きてからにでもしよう」
時計は既に0時を回っていた。
「もうこんな時間!ごめんひかる姉こんな遅くまで」
「なんのこれしき。ではまたな」
「うん、ありがとうね!」
そして俺たちはベランダから其々の自室に戻った。
――――
――
「……」
「(なんじゃ?)」
「お前、なんで前に入り込んでた勇者の事黙ってたの?」
「(へ?)」
「いや、前の勇者にもう一人の人格が入り込んでたってまさしくお前じゃねーか!」
「(いやいやいやいや知らん知らん知らん、知ってたら『あーそれ我じゃな』って言っとるわ!)」
「……そ、それもそうだな。お前出たがりだもんな」
「(うるさいわい!)」
「んー、ならその勇者の中に居た奴って誰なんだろうな」
「(んーわからんのぉ)」
「(コンテキスト(文脈)の照合……)」
「(おい京平!)」
「ああ俺も聞こえてる」
「(情報処理開始……完了。勇者の中に居た個体識別が判明しました)」
「マジか……」
「(こ、こいつ意外と優秀じゃな)」
「(勇者の中に居た人格。対象、私です)」
「え?」
「(は?)」
「(私です)」
「超SF専用SNS作った」
「(今更じゃが、またなんでじゃ?)」
「ひかる姉とかの顔がわかると思って」
「(ま、まさかお主隠し撮りか!……じゃが見たいの!URLはよーなのじゃ)」
「タイトルX検索 で色々見れるぞ?」
「(おぉ~……うへへなのじゃ)」




