第3話 勘違い
――エリシス王国、本星ダンジョン。
「京ちゃん右だよ!」
陽ちゃんの指示で右に飛ぶ。
その瞬間、後方からハルバートが空を切る音が響く。
――ブォン
大きな黒い狼は姿勢を変え、大斧を躱す。
「チッ、早い奴。健太君!」
「はいよっ!」
ひかる姉と間髪入れずスイッチした健太が、大剣を右斜め上から振り下ろす。
――ザシュッ!『gyaaaaaa――』
目の前の魔物は断末魔と共に小さな宝石へと姿を変えた。
「ケンちゃんすごーい! 魔物が真っ二つだ!」
「うむ。ミスへのカバー、見事だ」
「(……)」
「……」
「でもみんな怪我しないから私の出番がないよぉ」
「おいおい、怪我するのは御免だぜ」
「そうだな。出来れば陽ちゃんの出番はない方がいいな」
「「「あはははははは」」」
「……」
「(…………のう)」
「(言うな)」
「(まだ何も言っとらん)」
「(……わかってる)」
「(なにがじゃ)」
「(わかってんだよ!)」
「(お……おう)」
――『gyaoooooo!!』
「魔物が集まって来たな。私が陽ちゃんのディフェンス! 二人は両翼で――」
「(潰れろ)」
――グシャグシャグシャグシャグシャ
集まりだした魔物は断末魔を上げることさえなく全滅した――。
「「「…………」」」
「(……)」
「どうしたみんな。さっさと20階層行こうよ」
俺の呼びかけに、ひかる姉が少し厳しい表情で近づいてくる。
「京平、今日はここまでだ」
「くっ……わかった」
――ダンジョン19階層。特に成果もなく帰路に就いた。
◇
最近は女王の要請もあり、ケンちゃん家族を含めた3家族とリュカさん、ひかる姉と共に生活している。
今日は初日ということもあり、俺と陽ちゃんの強化された身体をダンジョンに慣らすため、4人で潜っていたのだ。
――その日の夕食の席。
「京ちゃん! あんなのないよ!」
「そうだぜ。お前があんなことするなら俺達いらないじゃないか」
「うっさいな。別にいいだろ、全員無事なんだから……母さん達、ごちそう様。ごめん」
俺はいたたまれず席を離れ、自室に戻った。
アイリーンのログハウスっぽい造りではなく、それこそ近未来、いや未来的な造りの部屋は、ほぼ全てが自動だ。
そんな部屋のベッドへそのままダイブする。
「(のう。謝るならもっと上手くやればよかろうに)」
「(……)」
「(ふん、まぁよい。お主の見た夢の話は我も興味はあるしの。じゃからと言って、まだ本当かどうかも分からんことに焦ってどうするのじゃ)」
「(そう、だな。明日からは上手くやるよ)」
「(それがよかろう。じゃが今、問題はそれじゃないぞ?)」
「(ん?)」
「(お主、気づいておらんのか!?)」
「(な、なんだよ)」
「(はぁ、なんて奴じゃ。お主、みんなから自分が活躍出来ないから勇者の力で魔物を殲滅したと思われとるぞ?)」
「(はい?)」
「(お主本気か!? 当然じゃろ。佐古田陽は回復役じゃから別として、お主は魔物の攻撃を避けることばかりで、実際に倒すのは氷上か健太じゃったろ)」
「(まぁ、そういう連携を意識したからな)」
「(そこじゃよ。氷上と健太が魔物を次々倒すもんで、出番の無いお主が不満を募らせ、魔物瞬殺の暴挙に出たと思っとるぞ?)」
「いやいやいやいや、なんでそーなるんだよ!」
「(氷上の最後の顔をお主は覚えておるか?)」
「あ、あぁ。凄い顔だったな」
「(あれはお主がダンジョンに対する浪漫を台無しにしよったからじゃぞ。多分じゃが)」
「浪漫って……夢のことを思ったら、それこそ――」
いらない。
そう言いかけ、俺は言葉を詰まらせる。
「すまん、俺が浅はかだった。せっかくのダンジョン攻略を俺自身が台無しにしてしまうところだった」
「(ふん、氷上にあの顔をさせたんじゃ。早めに謝っといた方がよかろう)」
「あぁ、そうするよ」
俺はさっそく謝りに行こうと、ベッドから起き上がる。
――プシュー。
部屋の扉がひとりでに開く。
「あっ」
そこには今から謝りに行こうとしていた、ひかる姉の姿があった。
――――
――
――エリシス王城、女王のテラス。
庭園にある池の畔のテラスで一息ついている女王。
そこへ白衣の女性が現れた。
「陛下。この度のご高配、感謝いたします」
「なにを言います。氷上枢機卿派の方々とは、全面的に協力し合う理由が十分にあります」
「はい」
「ダンジョンへ彼を送ることで、彼の中に眠る者を呼び起こす。強引ではありますが、私は既に時代が動き始めていると感じていますのよ? キャロラインさん」
「はぁ」
「彼が戦闘中に話していた内容も気になるじゃないですか。それに、その時呼びかけていたアマテラスという名の人物」
「ええ。彼に宿る人格がアマテラスという名であることはわかっておりますが、その者が何者なのかまでは……」
「彼は神の核を宿す者。そして、その内にはアマテラスと呼ばれる何者かがいる。それが神の核に由来する存在なのか、それとも別の何かなのか……我々には、それを調べる必要があります」
「もちろんです、女王陛下。例の計画もつつがなく進行しております」
「例の計画もありますし、敵のスパイを攪乱するためとはいえ、彼らをダンジョンへ向かわせる理由は少し強引でしたけどね」
「あぁ、魔王が復活するかもしれないから、調査もしくは踏破してほしいというあれですね。確かに強引でしたが、ダンジョン狂の氷上司教がいらっしゃれば、彼らも楽しむのではないでしょうか。それに、こちらも次の段階へ移る準備は既に整っております」
「ふふっ……そうですね。本当に何が出てくるのか、楽しみですわ」
「(おい。今日は短いけど大丈夫なのか?)」
「(なにが)」
「(せっかく風が吹いてSF日間12位まで上がってたじゃろ)」
「(……い、一瞬だからいいの!)」
「(いやダメじゃろ!ちゃんと書くのじゃ!ブクマも評価ももらえんじゃろが!)」
「(そ、そんなの気にしな……いことはない)」
「(思いっきり気にしとるじゃないか。まったく、お主は)」




