第2話 エリシス女王からのお願い
――特殊艦ソバーシュは俺達を乗せたまま、エリシス王国本星エリシスに到着していた。
「あぁ~腹減ったぁ。これでようやく美味しいものにありつけるかな」
「ここの名物はイカの生け作りだけど、京平生もの大丈夫なのか?」
「おいおい、エリシオン出身者にそれを聞くか?」
「と、すまんすまん。寿司とか刺身が普通にあったな。このエリシスも食はエリシオンに近いから多分好みの食べ物があると思うぞ」
「やったー!」
「(我ももう食べる順番で文句は言わんからはよぉなんか食べるのじゃ!)」
健ちゃんの話で隣の陽ちゃんは両手を上げて喜び、アマテラスは食の催促。
だが俺はタラップから降りる際に視界に飛び込んだエリシスの青い空と海。
軍港であるこの場所から見える岬には白い大きな城の様な建物があり、その自然と大きな城のコントラストで息を呑む。
立ち止まる俺を気にしたのか、聞きなれた声が後ろからした。
「あれがエリシス王国の王城だ」
「ひかる姉は行った事あるの?」
「昔に一度だけ母上とな。それとあそこには今から向かうぞ?」
「……そうなんだ」
俺の力は既にひかる姉やフェルミナさんにもバレてる。
だから8年も俺をアイリーンに匿ってくれていた。
でも今回の件でそれを隠しておく事も難しくなったのだろう。
細かい説明は聞いていないが、言われなくても状況はわかっていた。
ひかる姉と出会って8年。
その前のひかる姉は100年程エリシオンの司祭をしていてその間帝国から出てないって言ってたのを思い出す。
そして再び景色に見とれ、不意に言葉が出た。いや、出てしまった。
「じゃひかる姉があそこに行ったの大昔の話なんだね」
――ガシッ!!
頭を両手で鷲掴みされ、そのまま握力の許す限りの力で圧迫してくる。
「痛い!それ痛い!まじ痛い!」
「(なんじゃ!超痛いぞ!おい!痛いぞ!)」
「京平君。君はレディにそんな口を叩くとこうなるという事を覚えておいた方がいい」
「(京平!今のはお主が悪い!謝るのじゃ今すぐ!)」
「(い、痛くて、こ、声が、だ、だせない)」
「(マジか!痛たたたたっ!我関係ないじゃろう!もらい事故じゃーーーーーっ!)」――――
◇
昼時という事もあり、全員で食事をして王城へ向かう事に。
「(ひどい目にあったのじゃ)」
「(ごめんなさい)」
「(ひかるの言う通りじゃ。これからは年頃の女子には言葉を気を付けるんじゃぞ?)」
「(返す言葉もございません)」
地面からわずかに浮かぶ豪華な車で王城に到着すると。
「おーい!橘さん、佐古田さん!久しぶり!」
一組の高身長な夫婦が出迎えてくれた。
「山田さん、お久しぶりです!お元気でしたか?」
父さん達が前に出て握手をかわしたり、それぞれの夫婦達が思い思いに挨拶を始めた。
「来んなっつったのに、恥ずかしい」
ケンちゃんがそっぽを向いて愚痴る。
「いいじゃん、8年ぶりなんだしさ。俺たちのせいで今の状況なんだし」
「まぁそうなんだがよ」
「てかケンちゃんのご両親……若返ってるのはわかるけど、前よりなんかこーデカクない?」
「あぁアンチエイジングは勿論、あれはダンジョン用に強化した結果あれが最善なんだと」
「……はい?エリシス本星にもダンジョンがあるのか!?」
「エリシオンは100年ものだろ?こっちはまだできて8年だそうだ」
「(京平、ここで3つ目じゃな)」
「(あぁ)」
「ケンちゃんはそのダンジョン行ったの?」
「おう、まだ20階層まで行けてないけどな」
「(結構進んどるの。お主まだ10層そこそこじゃったな)」
「(身体強化終わってからまだ行ってないんだから仕方ないだろ)」
「(そうなんじゃが、ひかるの耳に入ったら当分連れ回されるぞ)」
「(……いや、ここでそんな自由はないんじゃないかな。残念だけど)」
「(……そうじゃな、すまん。軽率じゃった)」
アマテラスも俺が力を使った事で、俺達がこの国の厄介になる理由を改めて察したのか、それ以降は何も言わなくなった。
――「皆様お久しぶりです。そしてお疲れ様でした」
ショートヘアに深く軍帽を被ったタイトスカートにブーツ姿の非常にスタイルの良い女性が声を掛けてきた。
「みっちゃん、今回はこんな事になってしまって迷惑をかけた」
ひかる姉がミッターさんへ頭を下げる。
「ひかるが頭を下げる事ないじゃない。悪いのは全部『海賊帽が無くなったから作り直してから出発する』ってほざいてたフェルミナのせいなんだから」
「な”!みっちゃん!それは士気に関わるから言わないでくれって言ったじゃないか!」
「あらフェルミナも一緒だったの」
「当然だ!帝国艦を8隻も沈めた英雄だぞ私は!」
その言葉に一瞬俺は硬直する。
「あんたわかってて言うその性格。良くないわよ?」
「ぴゅーぴゅー」
「口笛鳴ってないわよ。っと京平君、久しぶりね」
「お久しぶりですミッター大佐」
「あら、もう准将よ?」
「あ、そうなんですね。ひかる姉とフェルミナさんの同級生って聞いてたので、まさかフェルミナさんより上官だとは思いませんでしたよ。やはり見てる人は見てるんですね。ねっ、フェルミナ大佐」
「クッ、このクソガキ。やっぱり健太と同じくらいクソガキだわ」
「はははっ、フェルミナお前が悪い。では皆さん!女王がお待ちですのでどうぞこちらへ」
◇
城に入り、と言っても大きすぎて城の中でも乗り物移動だったのだが。
謁見の間らしき広間に到着する。
そこには神官らしき人達と軍属らしい制服の方達、そして鎧を着て剣を掲げた騎士の姿。
彼らが作る通路の先。5段ほどの階段を上がった場所に、銀色の髪を束ねた『麗しい』という言葉が似合う女性が王座に腰掛けている。
「まずは我がエリシスへようこそ。そしてよく無事であられた事、嬉しく思います」
全員が王の前だからといって跪くことはしないが、周りに合わせ俺も頭を下げる。
「ここに居る者は全員信頼できる者たち。少しこれからの事をお話ししましょう」
女王の隣に立っているおじさんが『説明は私が』と言ったが、彼女はそれを制し。
「皆様にはダンジョンの攻略を目指して頂きたいのです」
ん!?
先ほどまで黙っていた脳に住んでる少女が。
「(京平!自由が無くなってダンジョン無理!とか言っとったが……あの女、強制参加みたいな事言っとるぞ?)」
と思えば、隣でひかる姉が急にソワソワして顔を赤くしている。
両親も心なしか笑顔だ。
「(どゆこと?)」
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次回も明日ですが、いつもすみません。時間は未定です。




