第15話 勇気を持て
第一章最終話前の幕間です。
ブリーフィングが終わり前をあるく女性に駆け寄り声をかける。
――「ひかる姉!」
「京平、どうした?」
「あっと、その。腕はもう大丈夫なの?」
「これの事か?ほら」
ひかる姉は失っていたはずの右腕をぐるんぐるん振り回す。
「腕が吹っ飛んだ時はそれなりに痛いがな。2回目ともなると慣れてくるものなのだ」
「そうか……痛かったんだ、ね」
「ん?」
「ごめん。ちゃんと謝ってなかったから」
「はははっ、京平は優しい子だな。私はそんな優しい京平を愛しているからな。これくらいは当然だ」
「あ、あいしっ!」
「家族なんだから必ず守るだろ」
「そ、そうだよね、家族だもんね」
ひかる姉は俺の肩にそっと手を乗せ。
「あぁ。だから京平、今回の戦闘。危ないと思ったら私たち大人の事は放置して逃げろ。いいな」
「……そんな事」
「京平が将来大人になり、家族を持ったらわかる。だから大人になるまで生きるんだ」
「(こやつは精神年齢けっこういっとるぞ?)」
「(黙れ!今いい話してんだろ!)」
「わかったよ、ひかる姉。危なくなったら俺は逃げる」
「それでいい。今回の戦場では私は君を守れない。心配ではあるが、京平の中に眠るであろう神の力と勇者の素養に私は期待している」
「わかったよ、ひかる姉。ひかる姉も死なないで」
「私は私の腕を食ったドラゴンの首を撥ねるまで死なん!安心しろ」
「ははっ、じゃまたみんなでダンジョンいかないとね」
「あぁ、必ずだ」
そう言って彼女は俺の頭をクシャクシャっと雑になでると立ち去っていく。
「(ほぉ~、あのポンコツ司祭。我に期待するとはなかなか見どころがあるではないか?)」
「(そうだね、前回みたいにいちいち戦闘中に喋りかけて邪魔しないでね)」
「(なんじゃと!前回お主は吐くほどビビっとったではないか!それを励ました我を邪魔と申すか!)」
「(いやあんなの普通に吐くだろ。しかもカレー食いそこなってたから吐いたって言っても胃液だけじゃん)」
「(吐いた事にはかわりないわ!このゲロ勇者!やーいやーいゲロ勇者~)」
「(うわぁ~殴りてぇ~)」
「(お?殴ってもいいぞ?ただ殴るのは自分の顔になるのじゃがな!あははははははっ!)」
「……」
「(なんじゃ急に黙り込みおって。まだ納得、いや違うな。心に落とし込めんのか?)」
「(そうじゃないよ。ただ)」
「(ただ?)」
「(俺に出来ると思うか?)」
「(何を言うかと思えば、アホじゃの。今お主が考える事は出来る出来ないじゃない。そんなもの、できるに決まっておるんじゃから。じゃからお主が一番考えねばならん事はじゃな――)」
「おーい京平!」
後ろから父さんの声。
「父さん!」
「よっ、我が息子ながら色々巻き込まれるのは見てて飽きないな」
「やめてよ。それより突入部隊にって本気?ことわらないの?」
「ははっ。昔な、父さんと母さんはエリシオンのダンジョンに潜ってたの知ってるだろ?」
「え、知ってるけど何の話?」
「あの時な、結構な人が俺たち夫婦の目の前で死んでてな」
「……そうなんだ」
「ある日結結構な人数でダンジョンを攻略していた時にな、ほとんどの仲間が殺される中、父さんも母さんも死ぬ寸前だったんだよ」
「そんな事があったんだ」
「(男女んの本にそんな事かいてあったじゃろ)」
「(あれ創作じゃなくて本当の事だったんだ)」
「おいおい、親の本くらい読んでくれよ。ま、それは置いといて。その時俺たち夫婦を片腕を食いちぎられながらも助けてくれた人が居たんだ」
ダンジョンで腕を食いちぎられた?いや、確か今回腕を失ったのは2回目だと言っていた人に俺は心当たりがある。
「(我も心当たりがあるぞ?)」
「まさか……それってひかる姉!」
「あぁそうだ。親子二代で助けられたな」
「それはまた……」
「だからな、俺は氷上司祭が陽ちゃんのため。いや違うな。お前のために戦ってくれるなら父さんは京平の親として当然、この作戦に参加する。お前は守りたいんだろ?」
「……うん。俺は守りたい」
「なら大人の心配はするな『お前はただそれを成す勇気を持て』いいな」
「わかった。ありがとう父さん」
「おう!じゃ俺は私も乗り込むって叫んでる母さんの所に説得にいってくるよ」
「ははっ、母さんらしいや」
「じゃ、またあとでな」
「うん」
――「ありがとう父さん」
「(いやいやいや、我は納得せんぞ?)」
「(なんでだよ!今いい話してただろ!)」
「(我のセリフを取りよった……)」
「(はい?)」
「(『お前はただそれを成す勇気を持て』キリッ!――は、さっき我が言うはずのセリフじゃったのじゃ!)」
「(あ、あぁ~……それはまた。ご愁傷様です)」
「(ムッキーーーーー!なのじゃ!)」
――――
――
「フェル姉」
「なんだ健太。それより、カ・シ・ラな」
「いや、この状況でそれはないだろ」
「チッ。それでなんの用?」
「いや、さっきの作戦の事だ。大丈夫なのか?」
「どこがだ」
「京平の力に頼りすぎだろって話」
「あぁそれの事か」
「それの事って……」
「健太は今回で何回目の戦場だった?」
「え?7回目くらいだけど」
「よく生き残れたな」
「それをフェル姉だけには絶対言われたくないが?」
「人の寿命がながくなったこの世界で、わざわざ戦場に立って戦う者がそれだけ生きれたらそれはもうある種の勇者だな」
「勇者は京平だけどな」
「ふん。私は彼を勇者だと認めてはいないよ?」
「はぁあ?フェル姉が認めようが認めまいが京平が勇者だろ」
「いや、私が思う勇者は健太。お前だ」
「お、俺!?」
「あぁお前だな」
「おれはただの大剣士だぞ」
「ふっ、やっぱりまだ子供だな」
「なんなんだよまったく」
「お前は京平君を信じてるんだろ?それこそ子供のころから」
「お、おう」
「久々に会ってどう思った?」
「最初は落ち込んでたけど直ぐに立ち直るのは昔と変わってねぇなって。腹は立つけど、あいつは昔から俺たちのリーダーって感じでよ。なんかこう、なんでも出来るてか人を引き付けるてか……なんせ変わってなかったよ」
「そうか。なら作戦はこのままだ」
「なんでそうなるんだよ」
「私が認めたお前が信じる者を、私が乗らずにどうする。それが王者の立ち振る舞いと言うものだ」
「王者って、フェル姉大佐だろ」
「細かいなぁ、いいんだよ!せっかくいい感じに言ってんだから!乗れよ!会話のビッグウェーブに!」
「たまにフェル姉のキャラが俺には付いて行けねえ……」
「健太さん。あのキャラがブレっブレの時の大佐は結構緊張してるんです」
「え、ジャスリー姉?フェル姉が緊張してんの!って、じゃー俺が信じる者を私は信じるって話は!?」
「あんまり信じていないって事になりますね」
「……最低だ」
「馬鹿め。戦場で100%信じるなんて奴は死ぬのが早いって知ってるだろ。だが0%なら私はこの作戦を立てていないよ」
書いていて楽しくなっちゃって、ついつい心理描写を重ねてしまいますがご愛敬と言うことで!
次回第一章最終回!一話で書ききれるのか!明日の晩には上げます。




