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第13話 立ち上がる勇者

本日3本目です。

週間SF/宇宙安定の24~26位くらい。

大変ありがとうございます。

 シュナイゼル領軍特務艦バシール。

 全長は350メートル程で、駆逐艦クラスとしては小型である。


 そんな特務艦に一隻の戦闘艇が着艦する。



――「えらく時間がかかりましたね。どうしました?」


 黒いビロードの外套を纏う、鼻が大きく目の細い男。

 ギャロス政務官がゼムを待っていたかのように出迎えた。


「あぁ。途中で追っ手に追いつかれて戦闘になった」


「なんと、それはそれは。で、聖女様は?」


 ゼムの後ろから一人の少女が顔を出す。


「おぉ~あなたがそうですか。おい、そこの者!こちらのお嬢様を丁重にお連れしろ!」


 並んでいた兵士が二人前に出る。


「ささ、お腹もすいたでしょう。好きなもの……はこの船では用意できないかもしれませんが、ええ、美味しいケーキならありますよ?ささ、こちらに」


「おい、政務官!」


「あぁ貴方はお疲れでしょう。今後艦の事はこちらの大佐にお任せするようシュナイゼルへは連絡を入れていますので、自室でゆっくりお休みくださいな」


「なにっ!?」


「おやおや、最新鋭の機動兵器とエースパイロットを失って、何か申し開きがあると?」


「……くっ」


「ささ、お嬢さん。一緒に――」


「嫌」


「はい?」


「だから貴方とは居たくない。ゼムさんと一緒にいます!」


「いや、ですが」


 ゼムが佐古田陽の前に立ち塞がる。


「ちっ、どのみちここにいる間はどこにも行けないのです。勝手になさい」


 立ち去ろうとしたギャロスだったが、最後に振り返る。


「あぁそうそう。貴方が追われたせいで色々バレる前に、あの惑星……アイリーンでしたか?消滅させる事に決まりましたので」


「なんだと!追われただけでか!」


「当たり前じゃないですか。そもそも特殊艦と言えど軍行動で他国へ侵入しているのです。証拠隠滅するのに何を迷うことがあるのです?」


「そもそも200億人もいない惑星でしょう。それくらいの人口の増減、宇宙規模では誤差ですよ。誤差」


 笑いながら立ち去るギャロスを、佐古田陽は睨みつけ、ゼムの手を握りしめた。


「……嬢ちゃん。大丈夫。俺に……俺に任せろ」



―――――

――


 一方、エリシス王国特務隊、特務艦ソバーシュ。


 艦の医務室で横たわる氷上ひかるは意識を取り戻し、身体を起こす。


 だが右手をついて起き上がろうにも、その右腕は肘から先が無かった。


「またか……エリシオンのダンジョンで無茶して失って以来だな」


「あら、もう起きたの?凄い回復力ね」


 顔を上げると、この艦の艦長が憎まれ口を叩く。


 だが氷上ひかるは、その艦長へ感謝を告げた。


「ありがとうフェル。君たちが居なかったら今回は流石に危なかった」


「ふぅ、ほんとよ。でもお礼は結構。貴方には何度も助けてもらってるんだし」


「でもどうなってんの?あんたの自慢のクルーザーはボロボロだわ、見た事もない黒い機動兵器は浮いてるわ、戦闘艇はすごい勢いで逃げていくわ。説明できる?」


「フェルとみっちゃんは知っているから言うが、陽ちゃんさんの素養がバレた。どこの勢力の者かまでは……」


「貴方にしては早計ね。いや、早計すぎない?」


「……面目ない」


「はぁ、まぁいいわ。今のは貴方の頭が正常か確かめただけだし」


「それと、貴方の船の乗組員……というか家族は全員無事よ」


「そうか、それは幸いだった」


「それに大体もうわかってるの」


「なにがだ?」


「佐古田陽ちゃんを攫ったのはシュナイゼル領軍で間違いない」


「シュナイゼルが?」


「浮いてた機動兵器を調べたら色々わかったのよ」


「なるほど」


「で、小型戦闘艇程度じゃ逃げられる距離も限られてる」


「……本隊が近くにいると」


「間違いなく居るわね。しかも入国レーダーにも引っかからないとなると――」


「まさかシュナイゼルが独自に特殊艦を開発したのか!」


「そう考えるのが妥当だと私は考えてるわ」


「……」


「乗りかかった船だし?まぁ貴方が乗ってるのは私の船だけど、手伝うわよ?」


「いいのか?」


「そのかわり!神の核を持つ彼と陽ちゃんはエリシス王国へ連れて行くわよ?」


「そうか。そうだよな……お前とみっちゃんが居るなら問題ない」


「あとは頼む……」


「ああ見えて彼は、京平は寂しがり屋だ。あと人参が結構好きで、ダンジョンも機動兵器も好きだな。嫌いな物はシイタケだ。蕁麻疹が出るくらい嫌いだ――」


「ちょっ、ちょっと!あんた何言ってんの?」


「いや、だから彼の好き嫌いを知っておいてもらおうと」


「はぁ……あんた馬鹿ねぇ。既にあんたのお母様と教皇、それにうちの女王さんで話はついてるわよ」


「??」


「あんたは責任持って彼らを育てろって言ってんのよ!」


「そもそも私は山田健太だけで手いっぱいなんだから、余計な荷物増やさないでよね」


「いいのか?」


「いいもなにも、あんな危険人物を相手に出来るの貴方くらいでしょうに」


「そ、そうか!」


「わたしだけか!そうだな!あぁ問題ない!私がいい男に育て上げてみせる!」


「あんた好みに育ててどうするつもりよ、全く」


「じゃあ、とっとと彼を迎えに行ってやりなさいな」


「彼?」


「京平君だよ」


「彼、戦場で敵兵の死に際の通信を聞いてしまって相当落ち込んでるからな」


「なっ!?それは不味いじゃないか」


「あぁ、京平なら相当なトラウマになるな」


「こうしちゃいられない!」


 氷上ひかるは患者服のまま医務室を駆け出す。


「ちょっとひかる!あんた服!てか腕!腕忘れてるわよ!つけていきなさい!」



――――

――



――ソバーシュ艦内の展望デッキ。


「(のう京平、お主の胸が苦しいのは痛いほどわかる。わかるが、あれはどうしようもないじゃろう……それに人間は脆いのじゃ。それはもう、お主がたまに想像してるアニメや漫画?なんぞより何倍も脆いんじゃ。それを知らなかったのは普通じゃし、今のお主の葛藤も普通の事じゃ。だけどな京平、今お主が立ち止まったら誰が佐古田陽を助けられるんじゃ)」


「(……そんなの俺じゃなくても誰かがやるだろ)」


「(はぁ、難儀じゃのぉ)」


 なんで陽ちゃんを攫ったのがあいつらなんだ。

 なんであいつは機動兵器なんかに乗ってたんだ。

 なんであいつは弾を避けられなかったんだ。

 なんであいつを陽ちゃんが助けようとしたんだ。


「くそっ!」――ガンッ!


「おぉ~荒れてるなぁ~」


 振り返ると、そこには凄く懐かしい感じのする大きな男が立っていた。


「ほっといて下さい」


「あれ?おい、京平。お前もしかして俺の事忘れたのか?」


「え?」


 俺は男の顔をまじまじと見つめ、その鼻の下に鼻水を足してみる。


「……まさか、けんちゃん?」


「おせーよ!俺なんて後姿で京平だってわかったってのに。てか今変な想像しなかったか?」


「久しぶりだね、ケンちゃん。元気そうでなによりだよ」


「はぁ~~~。そういうお前の元気が無さすぎだろ」


「……すまない」


「なにが」


「陽ちゃんが攫われて……救えなかった」


「……そうじゃねーだろ」


「……」


「人が目の前で死んだんだ。それにショックを受けてんだろ」


「……」


「……図星か。まぁ慰めたところで、それは自分でなんとかしていくしかないな」


「ケンちゃんに何がわかるってんだよ」


「は?めちゃくちゃわかるわ。フェル姉に連れられて、どんだけ戦場に駆り出されたと思ってんだ」


「戦場?」


「そーだよ。こっちはお前の身代わりだぞ!?なんだよ神の核って。しかもお前が見つかるくらいなら、誤解して俺を連れ去らせるとか、とんだ身代わり作戦だぞ?」


「……そ、それはなんかスマン」


「ま、なんにせよだ。このまま本気で何もしないつもりか?」


「……」


「今度は俺もお前を手伝うって言ってもか?」


「ケンちゃんが?」


「おうよ。お前たちとダンジョン潜るつもりで結構……いや、むちゃくちゃ、地獄みたいな日々を送ったんだぞ!どうしてくれんだ!」


「途中から文句になってるじゃないか」


「っと、すまねぇ。今日この日を俺がどれだけ待ちわびたか。8年だぞ?みっちゃん姉やフェル姉とは京平とはたまに会ってたんだろ?」


「あぁ、結構な頻度でアイリーンに来てたな」


「俺の事は?」


「なんにも聞いてない」


「よ、陽ちゃんは?」


「と、特にお前の事は……あ、そういえばケンちゃん」


「なんだよ」


「陽ちゃんの事好きだったよな」


「ひっ!なんで知ってんだ!」


「いや、普通にわかるだろ」


「す、好きだよ。悪いかよ」


「いや、全然。陽ちゃん可愛いしな」


「今もか!」


「8年前の8倍増しで」


「マジか!マジでか!おい京平!」


「な、なんだよ」


「行くぞ!今すぐ!」


「どこにだよ!」


「そんなの陽ちゃん様を助けに決まってるだろ!うだうだ考えてる暇はないぞ!行くぞ京平!」


「お、おおおっ!おいマジか!」


「マジに決まってんだろ!しかも聞いて驚け。なんとこの船にはアイリーンで行う予定だったエリシス本星の最新鋭試験機動兵器が搭載されてる!もうフェルミナ領の軍隊なんぞ一撃だ!」


「ちょ、ちょちょ、敵ってフェルミナ領軍なのか!?」


「あ、そっか。まだ言ってなかったな。すでに目星はついてる。あとはやるかやらないかだけだ」


「……」


「どうする。このまま逃げるのもいいし、俺と行くのもいいし。お前次第だ」


 はぁ~男が男に「逃げてもいいぞ」って言われてさ、じゃあ俺は逃げるなんて答え……あるわけないだろう。


「(ようやくか、京平)」


「(すまんなアマテラス。嫌な気持ちをお前にもぶつけて)」


「(そんなのは気にしとらんよ。我とお主は一心同体なのじゃから)」


「ケンちゃん」


「なんだ?」


「行くに決まってんだろ。俺を誰だと思ってる?勇者京平様だぞ?」


「けっ、さっきまで死にそうな顔してたくせによく言うぜ」


「「あははははははははっ」」


――その時、こちらに駆けてくる女性が一人。


「京平!京平!もう大丈夫なのか!」


「(ひかるじゃな)」


 見れば患者服一枚で走ってくるものだから、たわわな胸が今にもこぼれそうになっている。


「ひかる姉!胸!胸出てる!」


「へっ!きゃっ!」


 両腕で胸を隠そうとするひかる姉だが、よく見ると……いや、見ちゃいけないのだが。


「ひかる姉、右腕は……」


「あぁ~昔ダンジョンでドラゴンに食われてな。それ以降右腕は人工腕なんだ。次で3本目だな」


「それはあの戦闘で?」


「そうだな。右腕じゃなかったら人工物が増えるところだ」


 え?そこ!?


 と思うも。


「ん?君は山田健太君だね?」


「あ、はい」


「なんで君は前かがみなんだ?」


「(そこは触れてやるでない)」


「(いや、アマテラスが言うのも違う気がする)」


「(なんでじゃ!我にもツッコませるのじゃ!ここんところ全然ツッコんでおらんのじゃぞ!)」


 なんか悩んでいた自分が馬鹿らしく思えてきた。


 でもこれは多分必要なことだったんだろうし、ケンちゃんが居てくれて本当にありがたいと思った。


「(そりゃいいことじゃな)」


「(〆の言葉に相槌打っちゃダメだろ)」


 ふぅ。きっとスナッピー氏のことは、これから何度も夢に出るんだろう。

 でも今はそんな事を気にしていたら前には進めない。

 いつか気にしないといけないだろうけど、それは今じゃないだろう。



前回から今回までを早くUPしたかったので本日は3本になりました。

ブックマーク、ご評価、合わせて何卒よろしくお願いいたします。


米シュナイゼルをフェルミナと誤表示修正。

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