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第12話 初めて人を殺した日

本日2話目です。


 俺はひかる姉のクルーザーへ乗り込む。


 当初父さんと佐古田パパさんは母さんと佐古田ママを必死でクルーザーに乗らせまいとしていたが、二人の勢いに押された結果全員で乗り込んだ。

 流石に操縦席辺りは危険だと、佐古田夫婦と母さんは、どんな荒い運転でも体感的には何も感じることのない、船のお腹辺りにある安全な部屋でモニターを見守るという事に。


「色々あったがこの船ならそこらの船は相手にならない。みんな、一気に宇宙まで上がるからシートへ」


「氷上様、操縦は私が」


「いや、今回は私が操縦する。約束もあるからな」


「約束ですか?」


「そーだ。では大気圏を一気に駆け上がる!みんな準備はいいか!」


「おう!」「お、おk」「お願いひかる姉!」


「では発進!――ぽちっとな」


「(おい!聞いたか!今、このおなご、ぽちっとなっていいよっt――うひょーーーーーーっ!)」


 脳内の神様が緊張感のないひかる姉の発進の合図へ、ツッコミを最後まで言えず凄いGが体を押しつぶす。

 

 母さんは別として、身体強化されてない佐古田夫婦を安全な部屋へ移動させた理由がここにもあったのだと、大気圏を抜けるその時に初めて知った。


――――

――


 一方、元偽装船。

 偽装を解き、小型故に特務艦へ搭載可能ながら輸送機の役割も果たす立派な小型戦闘艦だ。


 そこには牢屋などと言うものはない。

 操縦席の後ろに長いシートが設置されており、そこで横たわっていた少女が目を覚ます。


「あれ?ここは」


「おっ、天使ちゃんのお目覚めですよ船長」


「あぁ、お前が相手してやれ」


「……そーっすね。行ってきます」


 船の操縦をゼムに代わり、スナッピーが後方のシートへと向かう。


「スナッピーさん!ここはどこですか?」


「あ、えーっと、実は事情があって陽ちゃんさんをシュナイゼル領に連れて行かなくちゃならなくなったんすよ」


「え?」


「あ、勘違いしないでくださいね!勿論その、身代金を寄こせとかお前の命はあと二日だ!とかそんな怖い話じゃないんすよ!」


「誘拐……なんですか?」


「えーっと……端的に言えばそうなるっす。だから!だから本当に申し訳ないっす!向こうに着くまで、いや着いてからも俺っちが全力で陽ちゃんさんを守るっすから!」


「……なんか事情があるんですね?」


「えと。はい」


 そしてスナッピーは自分とゼムがシュナイゼル領の軍人だった事。神の核を持つだろう海賊を探していた事などを、軍人なら秘密にしておかなければならない事情までゼムの後姿を確認しながら包み隠さず話した。


「えと。私、核なんて持ってませんよ?」


「それは知ってるっす。だけど、聖女かもしれねぇから連れて帰れってあのおじさんが」


 いきなりゼムのせいにしだすスナッピー。

 流石に聞き捨てならなかったのか。


「すまんな陽ちゃんさん、君のその能力は国として放置できない素養なんだ」


「なんとなくですが事情は分かりました。危険なく連れて行ってくれるなら従いもします。でも家族はどうなりますか?いつ会えますか?私、出かけるって何も言って来てないないです!」


 スナッピーは答えを探すが言葉が見つからず、視線を逸らす――。


――ビービービー!


「スナッピー!追っ手だ!」


「了解っす!」


「スナッピーさん待って!追っ手って私を追いかけて来たんですか!」


 またも言葉が見つからず。


「だ、大丈夫す。こっちから攻撃なんかしませんし。じゃ、戻るっすね」


 佐古田陽の視線を背中で痛いほど感じながら操縦席に戻った。


「お前は優しすぎる。人としてはそれも魅力だがお前は軍人だ」


「……わ、わかってるっす」


「ちっ、やっこさんなんて速さだ。てか追っ手にしては早すぎるだろ!どこのどいつだ!」


「レーダーの反応は普通のクルーザー級っすけど……通常空間でこのスピード、マジ異常すよ」


 艦影はみるみる戦闘艦へ近づいてくる。


「スナッピー、後方クルーザー級に威嚇射撃用意!」


「ゼム船長!」


「うるさい!このまま捕まったらおめえの母ちゃん誰が面倒みるんだ!いいから撃て!」


 だがスナッピーは射撃ボタンに指を掛けることすらできない。


「どけっ!俺がやる!」


「無理っす!」――ドカッ!


 ゼムを片腕で押しのけ立ち上がる。


「俺が機動兵器で出て足止めして来るっすよ!それでいいでしょうが!」


 スナッピーは操縦席を離れ後方のシートに座る佐古田陽を視界に入れつつも、そのまま走って後方下部の貨物室目掛け走り去る。


「あのバカ、おめーが出たら俺たちも動けねぇだろうが」



――――


――「スナッピー機、追撃者の足止めの為出撃します!」


「勝手にしろ……だが危なくなったら逃げろ。いいな」


「流石ゼム船長っす!一生ついていきやすぜ!発進!」




――――

――



「氷上様、小型艦から機動兵器の発進を確認。迎撃しますか?」


「いや、ここは彼に任せる。約束だからな」


「またですか?」


「あぁ、まただ」


 そして氷上はモニターを開き、自身の私物である機動兵器のコクピットを映す。


「京平君!君の出番だ。準備は済んでいるか」


「いつでも。悪い奴らは俺がやっつけてやる」


「そう早まるな。素質は十分あるんだ、落ち着いていけばいい」


「りょ、了解」


「あと、出来ればでいいんだがその機体は結構高くてだな――」


――京平機、出撃します!


「お、おい!陽ちゃんが乗ってるから援護射撃が出来ない!くれぐれも無茶はするなよ!」


 金色の機体は光の粒子を撒きながら一直線に小型戦闘艦へ向かう。


「あれが敵の機動兵器か」


 黒で統一し、太陽の光で辛うじて見えている。

 が、これだけ近いと色は関係ない。

 その重量感でその存在がハッキリと感じ取れるからだ。


「上に回り込んで敵戦闘艦を巻き込まないように射撃で沈めるか」


 直線から直角に上昇し、角度が出た所で右手のライフルで狙いを定める。

 ヘルメットの中のスコープ機能が敵を捕らえると、そこには既にこちらへ銃口を向けた敵機。


――バシューーン!


 一発だけ敵がこちらを撃って来た。

 身体強化で動体視力も上がっているため、銃撃の射線が光りながら自機に近づいてくるのが見えた。

 

 それは集中の深度で変わるのかもしれないが、確かに射線が見えた。


 だが見えはしたが、避けるまでは機体が動かない。


――ゴバーンッ!!


 派手な破裂音と衝撃。

 何が起こった!?


 頭を振り音のした方へ視線を向けると既に機体の左腕が無くなっている。 


「(おい京平!なにをしておる!)」


 頭の声に我に返り、黒い影をとっさに避ける。

 近接へと持ち込んできた敵機の足だ。


――バコーン!


 揺れる機体と敵の洗練された機動に翻弄されて戦闘にならない。


「クッそ!こんな事じゃ」


「(とにかく落ち着け!戦闘にすらなっとらんぞ!)」


 そんな事はわかってる。

 だけど、敵の手数が段違いなんだつーの!


 たまらず一気に後方へ下がる、が。


「なんだ?追撃してこないのか?」ヘルメットがノイズの乗った音声を拾う。


――ガガッ……や……て。


「なんだ」


――ガガッ……やめて。


 微かに聞こえた音声は何年も聞き親しんだ幼馴染の女の子の声。


「陽ちゃん!」


 その時、敵の機体も音声を拾ったのか自分の船へ振り返る。


「(今じゃ京平!)」――その浅はかな考えは次の瞬間、言葉の通り打ち抜かれる。


 誘われた!?



 気づいた時には既に敵の銃撃が俺のコクピット目掛け――瞬間、よこからクルーザーが飛び込んで来る。


――ゴーーーーーッ!


 バリアがあるとは言え、その衝撃はクルーザーのコクピットまで届く。


「みんな!!」


 炎が吹き上がり回転しながらクルーザーは遠ざかる。


「お前。お前!お前お前お前!!」


「(京平!)」


 俺は無我夢中で敵の機動兵器目掛け何も考えられず、ただ引き金を握り続けた。


「当たれ当たれ当たれ!当たれよ!!」


 残りの段数は少し。

 だが一発もかすりもしない。


「当たれって言ってんだよ!」


 俺は最後の一発に思いを乗せる。


――ガッ!バーーーン!


「(最後の最後に当てよったか)」


「みんなは!」


 宇宙の暗闇で、すでにクルーザーを見失っている。

 レーダーにも反応がない。


――スナッピーさん!スナッピーさん!


「なんだ?」


 陽ちゃんの声がするがその呼び声は俺にではなく、先ほどリビングに居た男の名前を叫んでいる。

 俺は尚もみんなの乗った船を目視で探す。


 そして目の前に飛び込んで来たのは、俺と戦っていたであろう手足を失って宇宙を漂う人間。



「おい、聞こえるかスナッピー!お前なんで最後の攻撃を除けなかった!」


「へへっ、俺っちが避けたらそっちに当たるじゃないっすかー―ゲホッ」


「ばかやろうが、今迎えに行ってやる!動くな!」


「へへっ、ダメっす、よ船長」


「もう喋るな!」


「せ、船長、陽ちゃんさん……ゲホッ、に伝言たのめますか」


「はい!私います!ここに居ます!」


「へへっ、最後に天使の声が聞こえるなんて最高っす。ありがとうっス……あと、ごめんな、さい」


「スナッピーさん!大丈夫です!私ならあなたを助けれます!あきらめないで!」


「……嬢ちゃん、もう奴のバイタルが反応してねぇ」


「――いやーーーーーーっ!さっきまでお話ししてたじゃない!なんで!なんで!」


「チッ、こんな時に駆逐艦かよ!すまん嬢ちゃん!ここから離脱するぞ!」


 遠ざかる小型戦闘艇。

 

 俺は何故か拾っていた通信で全てを聞いていた。

 その通信が何故俺の所にまで届いたかはわからない。


 どこかの誰かが俺に試練でも与えるかのように、聞いたら心がおかしくなってしまう……そんな試練。


「――ゴフッ、オエェェーー!ヒッ、オエェェーー」


「(おい、京平!しっかりしろ!京平!京平!)」


 嘔吐物で汚れたヘルメットを震える手で辛うじて脱ぎ捨て、俺はそのまま意識を失った。



――――

――



「カシラ!前方に戦闘!」


「こんなとこで戦闘!?映像は」


「へい、まだ距離がありますが最大望遠で映像、出ます」


「……あのキンキラのクルーザーに金色の機動兵器?……ひかるじゃないか!ジャスミー!全速力!」


「え!?あ、はい!」


「あいつはこんな所でなにやってんだ」


 そこへ大剣を背負う大きな男。


「……カ、カシ……フェル姉、どうしたんだ?慌てて」


「同級生の船が戦闘して中破してるから急いでる」


「なるほど…………はい?どうゆうこと?」


「それより健太。カシラ、な。カ・シ・ラ」


「……フェル姉。先にいっておくけど、俺には無理だからな」


「チッ」



今回もお読みいただきありがとうございます。

少し気持ちがざわついた回となりました。ですが私はハッピーエンドが大好きです。

そろそろ第一章が終わりに近づきましたが、今しばらく続きます。

ブックマーク、ご評価、まだの方は宜しくお願いいたします。



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