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第11話 誘拐発覚

 商船の二人が帰り、再び食卓へ戻る。


「京平、陽ちゃんどこ行ったの」


「あぁ、ケーキを取りに帰るって言ってたよ」


「そうなのね。佐古田パパさんとママさんもカレーが食べたいって言ってたから少し多めに追加のカレー作ってるからもう少し待っててね」


「はーい」


「(なにが「はーい」じゃ、いい子ぶりよって。我がお腹すいて我慢の限界じゃというに一心同体のお主が平常心でおられるわけなかろう!)」


「(そうかりかりするなよ。お前の好きな順番で食べるからさ)」


「(うむ。では人参は全て排除してからじゃな)」


「(俺、人参好きなんだが?)」


「(知っとるよ?)」


「(いじめか!いじめだな!)」


「(いじめてるのはお主の方じゃ!いい子ぶらんと橘母にはよぉせいと言わんお主が悪い!)」


「(う、うるさい!腹が減ってる時にごちゃごちゃ言われたら流石にこっちも堪忍袋の緒が切れるぞ!とことんやるってやるぞ!)」


「(なにっ!こっちこそやってやるのじゃ!さぁかかかてこんか!)」


 などと脳内喧嘩が始まろうとしていたその時。


「京平~」


 書斎に戻っていた父さんが陽ちゃんの両親とリビングへ入ってきた。

 

「どうしたの父さん、とパパさんママさん」


「陽ちゃんの両親がもうだいぶん前にケーキを持ってこっちに向かったって言ってるんだが、お前見てないか」


「え?見てないけど。トイレは?」


「こっちのトイレには居なかったんだが、佐古田さん、そちらは?」


「はい、うちのトイレにも浴室にも。教会にもいなかったんです……こんな時間に隣の家に行くだけで居なくなるのはちょっとおかしいと――」


――「なにっ!それは本当か!」


 佐古田パパの話を遮るようにひかる姉の声がリビングに響く。


「ど、どうしました氷上様」


「うむ、橘パパさん。全員をここへ集めてくれ」


 その指示に父さんは周囲を見渡しここに居ないのは母さんだけだと、ひかる姉の緊張感を察したのかキッチンへ急いで向かった。


――――

――


 陽ちゃん以外の全員がリビングに集まる。


「リュカ、お前は宇宙港のソル教施設へ連絡、施設に居なければ全員に各個通信しろ。動ける人員は全員港へ集合させろ」


「りょ、了解で、です」


「キャロ、お前は今掴んでいる情報をもう一度全員に報告してくれ」


「はい。それでは氷上様は?」


「念のため周囲を見てくる。頼んだぞ」


「了解しました」


 ひかる姉は指示だけ出すと足早に部屋を出て行った。


「それでは皆さん、突然で何が何かわからないと思いますので説明いたします――」



――そこで説明されたのは商船の乗組員の二人の話。


 ゼムさんとスナッピーさん、二人の態度に違和感を覚えたひかる姉が、キャロ姉に念のため二人を調べさせていた。


「彼らの船籍はエリシス王国商業組合所属で商船として登録されていますが、航行履歴と積み荷情報に矛盾があります。通常の商船ではありません。」


「つまり?」


 父さんが促す。


「まだどこの組織の人間かは判りかねますが、偽装をするのは犯罪者、もしくはスパイ、あるいは軍関係者です」


「……今の流れとその言い方だと、陽ちゃんを攫ったのがその二人だと俺には聞こえるんだが」


「そう言っています。AIでの確率計算では90%以上の数値が出ています。ほぼ間違いないかと」


「くそっ、なんで陽を!」

「娘を!陽を助けて!」


 佐古田両親は立ち上がる。


「もちろんです。このままどこの者ともわからない者を放置するほどソル教は優しくはありません。それに我らはあなた方を軽く見てはおりませんので全力で当たります」


 キャロ姉は落ち着いて状況とこれからを話し、全員がそれを焦燥感を持ちながらも静かに聞いている。

 が、俺はいてもたってもいられなくなり、立ち上がった。


「俺も行ってくる」


「京平様!?」


「じっとなんてしてられないだろ!」


 立ち上がり、ひかる姉が向かったであろう家の外へ向かった。


 家を飛び出し、道路を進むとひかる姉の姿を見つける。


「ひかる姉!」


「京平君か」


 みればひかる姉の足元に踏みつぶされたケーキが散乱している。


「クソがっ!」


 俺は吠えた。

 あんなにも平和そうな大人が何食わぬ顔で嘘をつき、少女を連れ去ったと言う事実。

 過去の記憶が重なったのかは自分でもわからないが、心の底から怒りが沸き上がって止める方法が見つからない。


「(京平、落ち着いて息をするのじゃ!)」


「(クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!)」


「(京平!!冷静になるのじゃ)」


「京平君、君の怒りはわかる。私も少し……いや家族を奪われ、だいぶん怒っている。私の家族に何をしてくれている、とな。だから怒るなとは言わない。だが冷静さも失わぬ様に」


 二人の言葉に眉を寄せ、強引にでも意識を冷静な方へ戻そうと努力する


「(大丈夫。俺は冷静だ。いや、冷静だが……怒ってもいる)」


「(それでええのじゃ、お主が慌てても事は進まん。で、落ち着いたお主は次はどうするのじゃ?)」


「(そんなの決まってる)」


 アマテラスの言葉に俺は一瞬ニヤリと口元を歪め。


「ひかる姉。お願いがあります」


「ふっ、勇者の願いなら叶えよう」




――――

――



――宇宙港商船ドッグ。



「スナッピー、港の方はどうだ」


「そっすね、先ほど趣味全開なデカめなクルーザーが現地企業のドッグから発進して行きましたが特にこちらを警戒してる感じはなかったすね。あとこちらは商船用のドッグで修理の順番待ち状態なんで今すぐにでも発進可能っす」


「そうか。乗組員は」


「まだ数人街から戻ってないすが、もうすぐ戻りますね。ただ問題は船の方っす、修理は本当に必要だったんで宇宙のゲートにも入れないしジャンプもできないっすよ」


「それはいい。宇宙に上がり次第本隊に連絡を入れて迎えに来てもらうさ」


「それ大丈夫すか?流石にシュナイゼルの特殊艦が来たら戦争になるっすよ」


「特殊艦がステルスを切る一瞬の間にこの船を着艦させれば問題ない。まぁ確かにばれたらアイリーンと戦争だな」


「うへっ!」


「だからお前の操縦にかかっている。ぬかるなよ?」――ポン


「あれ?ゼム船長、本隊から通信す」


「はぁ!?アイリーンどころかソル教の奴らにまでバレるだかろうが!どこの馬鹿だ!」


「あー、本隊に乗ってたシュナイゼルの政務官すね」


「チッ馬鹿やろうが。この船に繋いだ瞬間一緒だ、開け」


「了解す」


――浮かんだモニターに黒いベッチンの外套を纏う鼻が大きく目の細い男浮かぶ。


「やぁゼム船長、いや大佐殿。修理を理由にしたバカンスはいかがですか?」


 あの野郎、船に火が入るのを見計らって嫌味だけ言いに通信してきやがった。


「バカンスはこの瞬間終わりましたよ、ギャロス政務官」


「そりゃ残念。それで?急に帰ってくる気になったのは何故ですか?次の便で私もそちらにバカンスへ行こうと考えていたのですが」


 なんだ次の便って!もう一隻修理の振りしてアイリーンに来るつもりだったのかよ!


「あーこちらで核について調査してたところ、惑星エリシオンの元司祭と助祭を発見しました」


「なんですって?で、捕らえましたか?」


「馬鹿言わんで下さいよ。相手はダンジョン狂いの氷の戦姫ですよ?彼女の眼を搔い潜るのでやっとですよ」


「それはまた……役立たずにも程があるのでは?」


 こいつ言うに事欠いて……クソ野郎が。


「ま、理由はありますよ。聖女の可能性のある人物を確保しましたのでこれより宇宙へあがります」


「それを先に言ってください!それは非常にすばらしい成果ではないですか。バカンスも馬鹿になりませんね」


 言ってろ。


「では迎えに行きましょうか?」


「そうしてもらえると助かります。本隊には私の指示とお伝えください」


「ええ、もしあなた方が捕まりそうな場合は惑星アイリーンへの攻撃も辞しませんよ?」


「……そ、それはやり過ぎですな政務官。では急ぎ空へあがります」


「そうして下さい。では宇宙でお待ちしていますよ」――シュッ。


「相変わらずいけ好かない顔すね」


「……」


「船長?」


「急いでここを離脱だ」


「え、まだ戻ってない乗組員が居るっす」


「構わん!急げ!あの政務官は俺たちが捕まりそうになったら、あいつは本気でアイリーンへの攻撃を始めるぞ!」


「そ、そんな事……」


「あいつはそう言う奴なんだよ!わかったら緊急発進だ!船の係留は偽装を解いて打ち抜いても構わん!」


「そ、そんな事したらバレるどころじゃないっすよ!」


「どうせもうバレてる!急げ!」


「りょ、了解っす!」


 商船用のドッグに係留されていた一隻の船の外装がパージされる。

 そこから現れた短い砲が係留装置を破壊していく。


「係留解除、大気圏離脱シーケンスに移行、航路上障害物なし、いけるっす!」


「偽装船発進せよ!」


「アイアイサー」



――――

――



 氷上ひかるは京平の願いを聞き入れる為に、自身のクルーザーを自宅に呼び寄せる。


「え?」


「ふふっ、驚いたか京平君」


「いや、え?」


 自宅の庭先でひかる姉に言われるがまま家族総出で空を見上げていると、ギンギンに輝く悪趣味なクルーザー級の宇宙船が上空で停止している。


 確かひかる姉のクルーザーは流線型のシャープでクールな船だった気がするけど……。


「ひかる姉、あれなに?」


「最近の流行にのってみたんだ。カッコいいだろ!」


 流線型ではあるが、全ての曲線にサイリューム的な光がカラフルに輝いて、空に浮かぶ遊園地になっていた。


「え?あ、ん?」


「(なぁ京平よ。ちゃんと言わないとあのおなごは行くとこまで逝ってしまうぞ?……ちょっとまて!お主)」


「(あ、ごめん。ちょっとアリかもって笑っちゃった)」


「(……これでちゃんと少女を救えるのかのぉ)」



――この時の俺はまだ、現実を理解していなかった。






本日もお越し頂きありがとうございます。相変わらず投稿時間がバラバラで申し訳なく……。

さて、そろそろ第一章の最終局面へ突入してまいります。

ブックマークと評価有難うございます。

まだの方はブックマークと評価いただけましたら幸いです。

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