第8話 本物の機動兵器
――惑星アイリーンの宙域に、この辺りではあまり見かけない型のコンテナ船が単独で航行していた。
「テステス、聞こえますかー。こちら船体番号5568439、エリシス王国惑星ポスティ商業組合所属のコンテナ船だ。船籍の照合たのむ」
「――こちら惑星アイリーン航宙パトロール船、そちらの船籍の照合を確認した。それでどうしました?こんな中途半端な場所で」
「あぁ、ゲート通過前からちょっと船の調子がおかしくて、念のためにそちらで修理できないか寄ってみたんでさぁ」
「あ~それで、了解しました。あいにく修理衛星が現在メンテナンスのため地上の宇宙港での修理になると思いますが、大気圏突入は問題ないですか?」
「ええ、外装と動力は問題ないんですがゲート通過システムAIが不調なもんで」
「あぁ~そっちですか。ソフトの交換はうちの惑星だと安いから正解ですよ」
「そりゃあ助かる」
「では大気圏突入航路と地上宇宙港のナビを送ります」
「了解、ありがとさん。あ、あとついでと言っちゃなんだが、観光名所とかってありますかい?」
「修理の合間のバカンスですか、いいですね。勿論ありますよ。それと数年前にダンジョンが出たんで興味があればどうぞ」
「ダンジョンですかい?」
「私も一度だけ入口まで行ったんですけど、少し遠いので平日ならがらがらですよ」
「そりゃ一度覗いてみてもいいかもですなぁ」
「まぁ、他にもいろいろありますから宇宙港の受付案内でまた聞いてみてください」
「ご親切にどうも」
「いえ、ご安全に。では送信します」
――ポン
「艦長ナビ来やした」
「ふぅ~、偽装ナンバーが無効だったらと思ってひやひやしたぜ」
「はは、ゼム船長いつも以上によくしゃべってたすもんね」
「うるせぇ。ま、これも神の思し召しだろ。たまには地上でゆっくりしようや」
「そうっすね。あ、さっきパトロールの奴が言ってたダンジョン、行ってみません?」
「お前ダンジョンなんかに興味あんのか」
「アレが最初に出た惑星って俺っちのかあちゃんの出身惑星なんすよ」
「なんだ?お前のかあちゃんスゲー優秀だったのか?」
「処理数が200近くあったらしくて、軍にスカウトされたらしいっす。それで今の俺っちがここに居るって感じすね」
「けっ、お前なんぞ田舎で芋でも掘ってるのがお似合いだぞ」
「ひっでーすよ船長。あ、ビーコンも来たんで大気圏突入しますね」
「あいよ」
――――
――
身体強化を終えた俺たちはメディカルセンターを出て隣の宇宙港にあるキャロ姉の居るあのシミュレーターのある建物へと向かっていた。
「こんなに早く終わるならもっと早くしとけば京ちゃんパパママと一緒にダンジョン楽しめたのにね」
陽ちゃんが白いワンピースのスカートを抑え、くるりと回りながらひかる姉と俺を見た。
「だから言っただろ、強化するにも体がある程度成長するまで待たないと」
「そうだけどさぁ」
「ま、心配せずとも今日からみんなで一緒にダンジョン祭りだ」
「(おい京平。あやつダンジョン祭りするらしいぞ?ってお主!!)」
「(……ごめんなさい。俺も少し思ってた)」
「(いわんでもわかるわい!はぁダンジョンの何が楽しいのか我にはいまいちじゃ。まぁたまに珍しいアイテムが出るのは面白いがの)」
「(それがメインだろ!)」
「京平君、陽ちゃん。今日ダンジョンへ行くのは決定したんだが、少しここに寄ってみないか?」
キャロ姉のいるビルに向かう途中の倉庫を指さすひかる姉。
「ここは?あといつ決定した?」
「ふふふっまぁまぁ、身体強化の基礎も教えておきたいしな」
「ここで?」
「いや、ここは別だ」
「あ、ソル教のマークだ」
陽ちゃんの指摘に大きな倉庫の上部を見上げると、扉の中に太陽が描かれ太陽の中で女神がほほ笑むマークがあった。
「ソル教の倉庫なんだ。まさかまたひかる姉、宇宙用クルーザー買ったの?」
「またって、買ってないぞ?私は今のクルーザーを愛しているからな。あれを超える船はそうそうみつからんのだ」
「(趣味の多い司祭じゃの)」
ひかる姉の後をついて、警備ゲートをくぐると建物の中へと歩みを進める。
エレベーターで四階へ上がり、油の匂いが鼻をつく廊下を曲がる。
曲がった瞬間、ここがなんなのか嫌でもわかる。
目の前に飛び込んでくるその重量感と圧倒的存在感。
人の形をした巨大な機械。人型起動兵器だ。
「――す……すげぇ」
「大きい!」
「はははっ、実はこれを見せてその表情が見たかったんだ」
「あ、あぁ……ありがとうひかる姉」
こんなものがあのシミュレーターで動かした様に本当に動くのだろうか――。
カラーリングは白ではなく青い胴体に赤の手足だが、所々白が使われていてセンスもある。
俺はただただ感動していた。
――――
――
「来ると連絡を受けてからなかなか来ないので探しに来ましたよ司祭」
「ご苦労さまキャロ。京平君がまったく動かなくてな……」
「ほんとにお好きなんですね」
「いや、あれは好きとか嫌いではなく……なんと言うか言葉にはできんが何かを感じているんだろうな」
「京平様も14歳ですしね、そういうお年頃なのでしょう」
「……それ京平君に言わない方がいいぞ」
「??」
「――京平、そろそろ帰ろうか。ダンジョンでご両親とリュカが手ぐすね引いて待ってるぞ」
「え?あ、うん……。ごごめんひかる姉。俺、もう少しこいつを見てたい」
「そ、そうか。キャロ、あとは任せても?」
「はい。中二病が発症するまでには帰宅してもらいます」
「へ?俺の事!?ち、違うから!」
「ですがあの機体に何かを感じて思いにふけっているのですよね?」
「そ、そうだけど違うんです!」
「まぁ今しばらくお付き合いしますよ。良ければもう少し近づいて説明しましょうか?」
「是非お願いします!!」
そして俺は二人を先に帰し、もう少し起動兵器を堪能させてもらうことにしたのだ。
――――
――
「ほぉ。ここがダンジョンか」
「そっすね、しかし人がいませんね」
「そりゃこのご時世、誰が好き好んで命がけで体なんか動かしたがる奴がいるかって話だ」
「でも希少鉱石とか採れるらしいっすよ?」
「いくらくらいだ?」
「どうでしょ、採れれば高級ホテルに数日泊まれるくらいじゃないっすかね」
「……よし、もう少し進むぞ」
「え、あ。待って下さいよゼム船長てば」




