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4 転生したら剣と魔法の世界だと信じたい④

おかげさまで週間SF30位!日間もキープでダブルありがとうどざいます。


――エリシス王国の主都星から程よく離れたここ、惑星アイリーンに家族と近所の佐古田家と共に引っ越して8年。

 14歳になった俺はエリシオンに居た頃と変わらず平和な日常を……送れてません!


 黒い神官服に身を包んだ白いリボンの俺と同じ黒髪の少女は、息を切らしながら巨大な昆虫の脳天を剣で突き刺している少年へ声を上げる。


「キョウちゃん右!」


 その指摘に右に視線を向けると。

 倒れている昆虫の小型種が今まさに顔面へ襲い掛かる瞬間だった。


「ふぇっ!?なろっ!!」


 迫り来る鈎爪の持ち主に向かって俺は念じる。


「(爆発しろ!)」


――パンッ!


「ひょー!ギリギリだよキョウちゃん」


 咄嗟の事で魔物の破裂を選んでしまい、体液で全身ドロドロだが。


「ふぅ、最後は力つかっちゃったけど、まぁ命大事にだな」


「それでも凄いよ!なんかママさんと同じ魔法使いみたい!」


 現在、10年以上先になると見込んでいたダンジョン攻略に勤しんでいる。


「そうだぞ京平君。せっかくのダンジョンでそれは無い。ほんと無い。10階層でこれだと先が思いやられる」


 俺の戦闘を離れて見ていた惑星エリシオンのダンジョン産の銀色のフルプレートを纏うのは、氷上ひかる司祭。

 ハルバートを担ぎ、なにしてんの?って表情でこちらを見ている。

 ダンジョン狂いの彼女にしてみれば肉体、もしくは魔法以外での攻略は許せないらしい。


「(ひかるはアレじゃな。一度脳を病院で診てもらった方がいいんじゃないか?ダンジョン好き好きゴブリンとか脳に入っとるぞ絶対)」


 当初、力の使用に否定的だった脳内神様アマテラスも今や力の使用肯定派に鞍替えしている。


 それ程にこのダンジョンは魔物が多くそれに加え、ひかる姉のダンジョン好きが激しいのだ。

 そんなひかる姉もダンジョン攻略での力の使用は否定的なものの。


「京平君、こっち!ここ!すごいいっぱい!いっぱいだから!」


 と、指をさす。


 慌てて何をそんなにして欲しいかと言うと。


「あぁ~はいはい」


 俺はそれらを想いの力で全て叩き潰す。


――パチッ!パチッ!パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!


 彼女はたまに蚊の大群や、その他モロモロゴミの処理で勇者の力を使わせる。

 考えが自由過ぎるし、いいように使いすぎだが……美人なので問題ない。

 それに別にポンと言うわけでもなく、間違いなく優秀ではあるのだ。ダンジョンさえ絡まなければだが。


「終わりましたよ、ひかる姉」


「ありがと。そのなんだ、私は別に今の君の力を『殺虫剤だ!』などとは思ってはないぞ」


「わかってますって」


「(殺虫剤て――うひゃひゃひゃひゃ!殺虫勇者!うひゃひゃひゃひゃ!この前はゴミ処理勇者じゃったの!うひゃひゃひゃ!)」


「どうした、顔色が赤いが……熱でもあるかもしれんな。今日はここまでにしょう。陽ちゃん一応彼にヒーリング魔法を軽く掛けておいてやってくれるか」


「あ、はい。キョウちゃん大丈夫?お腹いたくない?膝枕する?」


 駆け寄る陽ちゃんはこの星に来た頃から俺に対して非常に過保護になっている気がする。

 そんな彼女は俺の頭を自分の膝に強引に引き寄せ、ヒールを掛け乍ら。


「ひか姉、そう言えばキャロ姉が来週から宇宙港で授業って言ってたけど何をするんですか?」


 俺は長く一緒に居るせいか、氷上ひかる司祭をいつの頃からか「ひかる姉」と呼んでいる、そして陽ちゃんも同じく「ひか姉」と呼んでいた。


 そしてキャロ姉とは、ひかる姉の助手的な人で、エリシオンから一緒にやって来た助祭だったキャロラインさん。

 一年程このアイリーンを離れ、ソル教の本星に行っていたのだが、ソル教本部で勉強して助祭さんから司教になって帰って来たのだ。

 キャロ姉は優秀だと思うのだけど、あの丸山さんが同じ司教だと考えると丸山さんが優秀なのか、キャロ姉がまさかのポンなのか悩んでしまう。


「もうそんな時期か。ご両親には伝えてあるのだが、そろそろ二人とも身体強化をしてもいい時期だろうと言う話で纏まっているのだ」


「「おぉ~」」


 それを聞いて俺と陽ちゃんは驚いた。

 身体強化を施すのは成人後と相場が決まっているのだが、異例の速さ故の驚きだった。


 しかしひかる姉の顔色は優れない。


「――このままではダンジョン攻略の楽しみがあの人達に奪われてしまうからな」


「何か言った?ひか姉」


「いや、あ、ほらもう戻って来られたぞ」


 ひかる姉の指さす方に、見慣れた顔が手を振り歩いて来る。


「おーい京平!今日は30階層のボス部屋まで行ったぞー!」


「もうあなたったら、それは出たアイテム見せるまで秘密にしようって言ったじゃないの」


「え!すごいパパさんママさん!もう30階層突破したんですか!」


「へへ~凄いだろ」


 そう。寿命処理も既に終わり、アンチエイジングまで施した見た目20代の両親だ。

 この惑星に来てから8年だが、来た時より若い。

 しかもその料金はソル教持ちだそうだ。


 それに最近では「京平、妹か弟なんて欲しくないか?」としきりに聞いて来る。

 まぁ居れば楽しいだろうが……そこは夫婦で話し合って欲しい。


 そして身体強化まで終わらせてるので夜の方はどうなるのだろう……考えると怖いのでこれ以上は考えた事が無い。


 両親は身体強化は冒険者寄りの素養も相まって滅茶苦茶強くなっていた。

 次元断層がある惑星の住民はダンジョンに素養が引っ張られるとかなんとからしいが、詳しくは知らない。

 そしてどれくらい強いかと言うと、横のひかる姉の握る拳がプルプル震えるくらいには強い。


 ちなみにだが、父さんの素養は執筆家なので「筆まめ」とかそんな物ではなく「重戦士」。

 纏う鎧は惑星アイリーンのダンジョン産25階層で手に入れた黄金に輝くフルプレート。


 ヒカル姉の顔が赤い。


 母さんの素養は「専業主婦」等では無く「魔導師」。

 纏う羽衣は暗闇でも薄く光り輝き、ダンジョン外でもほんの少し空を飛べる。――ちょっと欲しい。


 身体強化を施した盾の重戦士と火力の魔導師の連携、そりゃ強い。それにそれだけではない。


「い、いやぁ流石は橘家の大黒柱とその奥方様です。その強さに憧れますよ」


「いやぁ~憧れるだなんて、私達夫婦はまだまだですよ。それに彼女が居ればこそです」


 そう言って父さんは一人の女性を前に押し出す。

 視力など今の世ではどうにでもなるのにわざわざ眼鏡を掛け、ソル教のシンプルな助祭の衣装を纏う紺色の髪でボブカットのおっぱい、いや、女性。シンプルな助祭服が余計に彼女のラインを露わにしている。


「こ、こんにちわ皆さん。きょ、今日もいい天気、ですね」


 ダンジョン内で天気の話をしだすこの天然おっぱ、女性は見たままソル教の人で、キャロさんと入れ違いでアイリーンへ来た助祭のリュカさんだ。


「(おい京平)」


「(なに?)」


「(おっぱい見すぎじゃ)」


「(み、みみみみみ見てねーし!)」


「(はん。それよりも、ひかるが限界突破しとるぞ。大丈夫か?)」


「(いつもの事じゃん。気にしたら負け)」


「(それもそうじゃな――ん?ひかるが呼んどるぞ)」


「なに、ひかる姉」


「身体強化が終わったら50階層まで一気に行くぞ。いいな」


「……お、おぅ?」


「(どんだけ負けず嫌いなんじゃ、乳はひかるも負けとらんじゃろーに)」


「(……たしかに)」


「(見すぎじゃエロガキ勇者)」


「(ヒドイ!)」



――エリシス王国に12ヵ所のダンジョンが見つかり早や5年。


 国は次元断層で生じるダンジョンの調査を、エリシス国内でたまたま長い休暇を取って生活していた元帝国惑星エリシオン司祭氷上ひかるに、ソル教の協力の元、依頼。


 エリシオンのダンジョン調査システムを流用し、民間のみならず兵士をも動員。


 しかしダンジョンに挑むには身体強化だけでは太刀打ちが出来ず、素養が重要なファクターであると判明。

 浅い階層は子供でも入れるが、3階層4階層と階を下る程に強さを増す魔物は、素養の加護の様なものが必要であると結論付けたのだった――。


 そして大きく国が動いたのは、ダンジョンを下る程に今の世でも珍しい鉱物や現在の科学力でも理解不能なアイテムが採取出来る事が判明した頃だった――。

 これらをもたらしたのは『男女ん』と呼ばれるパーティーを組む者達であったらしいが詳しくは秘匿されている。



――――

――



 惑星アイリーンから離れたエリシス王国首都星。惑星エリシス。


 その王宮の一室で一人の青年と呼ぶにはまだ幼さの残る顔だが、身長が180を超える少年がこれまた大きな両手剣を振り回し、数体の戦闘用アンドイドと戦闘を繰り広げていた。


 それを腕を組んで見守るのは軍服なのに海賊帽を被った赤毛の女。


「おい健太!いつまでちまちまやってんだ!そんなんじゃ立派な海賊にはなれないぞ!」


「クッソ!フェル姉!俺は!海賊じゃねー!」


「ここでは船長と呼べ!馬鹿者」


 身体強化を済ませた山田健太はエリシス軍特殊隊の少佐、今は中佐のフェルミナ指導の元、その力を発揮するその日の為に訓練に明け暮れていたのだった。


 ドアが開き、見目麗しい女性が数人のメイド、執事を引き連れ入室してくる。


「訓練辞め!」


 フェルミナの指示で健太は剣を納める。


「お、王妃様、ご、ごきげん麗しゅう」


「いいのですよケン。本来あなたは私より立場は上なのです、それこそ何もしなくてもそこに居るだけでいいのですよ?」


「すみません我儘言って、でも幼馴染達がダンジョン攻略に動いたって聞いていても経ってもおられず……俺も行きたいのです」


 そんな健太の謝罪に突然横入りする黒い影。

 ソル教の見た目20代の女性枢機卿だ。


「ほんと困った方ですよ、おとなしくしてくれればこちらも余計な出費を抑えれるってもんです」


「おい、お前!」


 フェルミナの静止に王妃は構わないと視線を送り、扇を口元へやる。


「あらあら、ソル教本部の方はいつから商業的に金銭を細かく計算される様になったのですか?」


「いやぁ~商業の戦鬼と言われた王妃にそう言われちゃぐうの音もでませんね。それはそうと王妃、いつまでもご神体をこの国だけに置いておくのも平等性に掛けると思いませんか?」


「うふふっ、彼がここへ来てまだ8年しか経っていませんよ?あと800年はこのままでも誰も文句はいいませんよ。――そうですね、もしこの判断に文句が出るとすれば、ご神体の力を根こそぎ奪おうとする帝国の盗人くらいだと思いませんか?ソル教のシスティナ枢機卿」


「(チッ)――ま、せいぜい私も彼に付き合いますがね、本星の指示もありますし」


「教皇様にはこちらからもそう伝えておきますよ。うふふっ平和が一番ですわね」


「はいはい」



――――

――



 丁度その頃、場所は戻り惑星アイリーンの宇宙港。


「お待ちしてました氷上司祭」


 いつものソル教の黒い服ではなく、白衣を纏い挨拶をしながら青い髪を束ねるキャロ姉を見て「身体強化するとどれくらい強くなれるんだろ」と思いワクワクしていると。

 俺以上にソワソワしているひかる姉が。


「もう最高レベルの身体強化をしても耐えれるくらいには彼らは強靭だぞ、キャロ」


「ははっ、それは素晴らしいですね。あ、司祭様、強化の前に枢機卿からコ・チ・ラに連絡が入ってますが、通信切ってませんか?」


「うっ、切ってはない。切ってはないが、通信室へ行くのを失念していたとは思う」


「はぁ、そうですよね。ですので通信デバイスをここへお持ちしましたので」


「な”!」


「とは言っても録画ですけど」


「なぁ京平。うちのキャロは意地悪だと思わんか?」


「枢機卿ってひかる姉のお母さんだろ?なんで逃げるのさ」


「ふふっ京平様、それは一緒に録画を見ればわかりますよ。ではスタートーーポチっ」


 すると枢機卿の立像があたかもそこに居るかのように現れる。


「お久しぶりねひかる。京平君のデーターは見ました。順調にすくすくのびのび育っている事、嬉しく思います」


「ほっ」


「ですが、少々ダンジョンへ通い過ぎです!心技体!全てを均等に学んでこそ将来色々な事が見通せる大人になるのです」


「(もっともじゃな)」


「いいですか?彼の処理数値は極秘ですがそれを理由にこの広い宇宙を学ばせない理由にはなりません。よってソル教司祭氷上ひかるへ命令です。彼を宇宙へ出しなさい、いいですね!詳しくはキャロライン司教に伝えてあります。とうぶんは彼女の指示に従う様に」


「そんな……では次はいつダンジョンへ」


「――今、次はいつダンジョンへ行けるか考えましたね?」


「ほへっ?これ録画っ」


「(あの枢機卿相当切れ者じゃな!)」


「(いや、普通にわかるだろ)」


「次の報告書を楽しみしておきます。キャロライン司教、宜しく頼みます」――スッ


 立体が消え、うなだれるひかる姉に。


「と言う訳で、本日より彼等には宇宙に馴れてもらいますのでダンジョンはしばらくお休みです司祭」


「うううっ」



――アイリーンに来て8年間、学業はオンライン及び睡眠学習、遊びは年に数回アイリーンの都会に出てゲームセンターで遊ぶ。

 ダンジョン以外はほぼエリシオンと同じような生活をしていた俺に、突如やって来たSF。


 しかしひかる姉の事も心配ではあるし途中で投げ出すのもなと思い。


「キャロ姉、ダンジョンは?」


「ふふっ、頭大丈夫?おかしくなってない?」


「はい?」


「ダンジョンダンジョン言ってるとああなりますよ?」


 よく見れば外れとはいえ都会の宇宙港に銀色のフルプレート姿のひかる姉のうなだれる姿。


「(あやうく我ですらおかしくなるところじゃった!考えたら普通に街中をあのカッコここまで来たんじゃぞ?あれは流石にまずいじゃろ)」


「軍人が多いから尚更目立つな……あのコスプレ」


「コスプレじゃない!正装だ!」


「いえ司祭。あなたの正装はソル教の儀式礼服です」


「およよよ」


 キャロ姉にまともに返され、ひかる姉はそのまま丸まってしまった。


「では陽ちゃんに京平様、私について来て下さい」


「はい。ですがどこへ」


「二人には今から機動兵器のシュミレーターを触ってもらいます」


「シュミレーター!」


「シュミレーター?」


 陽ちゃんはいまいちわかってないようだが、要するに人型機動兵器の操縦だ!

 やばい、ダンジョンくらいワクワクしてきた。


「(おのこじゃの。お主が街で遊ぶゲームとどう違うんじゃか)」


「(わかってないなぁ~全然、全然ちがうの!)」


「(ほ~ん。ま、我は見とくとするかの)」


「おう!」


 興奮して思わず声が出てしまった。


「まだだ」


 陽ちゃんがそう言った気がしたが。


「あら、凄いやる気ですね」


「はははっ」


 この時、キャロ姉に愛想笑をするのに必死で陽ちゃんの小さな異変を俺は見逃したのだった。

 



SFなのにほぼ宇宙に出ないSF、そんなSFも今日まで!

それでは次回以降お楽しみに。

本日夜に投稿と言いながら……。

今回は少し長めなのでじっくり咀嚼して頂き、次回は明日夜になるかと。

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