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3 転生したら剣と魔法の世界だと信じたい③

 氷上ひかるは教会裏にある通信室の前で座り、両手で顔を覆い考えていた。

 そしてその指の隙間から通信機を見つめている。


――どうする、私。

 彼の素養は勇者で間違いない。

 それはあの帝国の戦闘艦を吹き飛ばしたのが証拠だ。

 山田健太君がそれをしたとみっちゃんは思ってるだろうけど、丸山辺境司教の表情を見ればわかる。あれは間違いなく彼の仕業に違いない。それにエリシオンでの洗礼式の素養データも既に私の手元だ。

 それはいい。

 その為に彼を私の元に置くようにと枢機卿は命じたし、帝国にも王国にも情報は洩れないだろう。

 住民についてはそもそも田舎過ぎて誰も行く事はないだろうし、枢機卿の手配で新しい司祭が上手くやるだろう。


 偽装の為と思い、別の素養反応を出すために素養造製剤を投与したら信じられない事に「英雄」が出てしまったが、エリシス王国には二本目の造製剤で出た結果の「農民」を提出すればいい。

 農民なんて素養は食料生産もアンドロイド任せなこの時代、なくてもいい程の素養だ。

 王国も今後彼に触れる事は無いだろう。


 これも問題ない。

 だが問題は農民の時に出た処理数値だ。


 英雄が出た時は気が動転してしまい見る事を失念していたが、農民が出た時に驚愕の処理数値をだしていた。


「百万ってなんなんだキャロ」


 氷上は顔を覆いながら、後方で立っている助祭のキャロラインに声をかける。


「私に聞かれましても、異常者としか」


「だよな!なんだこの数値は……どう報告すればいいのだ」


「いっそのこと処理数値は手書きで渡せばいいのでは?」


「手書き!?」


「ええ。処理数値は優秀な者でも千前後、最高値でも2千強。百万なんて数字は彼が勇者や英雄の素養を持っている事を知ってる私達だから納得出来ている数値です。だれも農民の処理数値が百万なんて信じなと思います。私も信じていませんから」


「だが手書きっ――「手書きで充分です」


「いや、しか――「手書きです」


 氷上が何かを言う度に言葉をかぶせて来るので、流石にと思い振り返ると。

 彼女の瞳から白目が消えて遠くを見ている。

 彼女は私以上に精神的ダメージを受けている様だ。

 

「……うむ、落ち着いて考えてみれば処理数値など今更だれも興味ないか。軍に行くか行かないかの指標でしかないのだから、水晶の不調と言う事で手書きでいこう。お母様には……一応伝えておいた方がいいか」



――――

――


「おーい、起きておるか?」


「……」


「何度も言っておるが二回目も三回目も我のせいではないぞ」


「……処理数値」


「あ、あぁ~あれな。あれはじゃなぁ~……まぁなんと言うかお遊び的なやつじゃな!」


「お前はお遊びで人の人生狂わせたのか!悪魔め!」


「あ、あ、悪魔じゃと!?あんな者達と一緒にするでないわたわけ!そもそも最初にノリノリで面白い方がいいって言ったのは京平じゃぞ!」


「そ、それはそーだけど、限度ってあるだろ。なんだよ処理数値百万って、脳内検索でも出てこないぞ?」


「そりゃそうじゃ、百万なんてのは我らの領域じゃからな」


「……我らの領域って、なに?」


「だからそれくらい凄いって事じゃな!」


「なーんそれ」


「まぁいいではないか。今のこの世では処理数値自体は軍で使い物になるかならないかくらいしか見ておらん様じゃし、あの氷上司祭とか言う奴もソル教も勇者にしか興味を持たんじゃろうて」


「そーいうもんなのか?」


「そーいうもんじゃ。(そもそも処理数値の基本誰もをわかっておらんからな)」


「なんか言ったか?」


「いやなにもいっとらん」


「……お前一心同体なの忘れてるだろ」


「ヒゅーヒゅー」


「口笛鳴ってないし」


「そうじゃ!」


「い、いきなり大声だすとびっくりするだろ!で、今度はなに?」


「忘れておったわ。ダンジョンじゃ!」


「あぁ~なんか戦艦の中でビシッ!って指さして言ってたなそんな事」


「なんじゃ興味ないのか?お主と出会った晩にえらくダンジョンや剣と魔法を熱く語っとったじゃろ」


「……そーは言ってもあれは俺達の居たエリシオン限定だろ?」


「いや、じゃからダンジョンが産まれたと言ったであろうが」


「あれ、本当だったのかよ。なんか次回へ続く!みたいに決めたいだけかと思ってた」


「たわけ!そんな事あるか!じゃが、じゃがしかしじゃ、しかも聞いて驚け。なんとダンジョンが発生しておるのは一つではない」


「じゃがじゃがうるさい。でもお前ダンジョンの事は次元の隙間で魔物が巣くうこの世の異物とか言ってなかったか?このままでダンジョンできた所は大丈夫なのか?」


「一語一句覚えておるではないか……まぁよい。我も正確な数は把握できんが、ここの近くにも産まれておる」


「父さんと母さんが喜びそうだけど心配だなぁ」


「いや、お主ももう少し喜ぶと思ったんじゃが?」


「いや、喜ばんし……それに見てよ」


「何をじゃ?」


「俺の姿見てみ?」


「脳内じゃが俯瞰で見ておるが?」


「俺、6歳。身長115センチ」


「で?」


「で、じゃない!こんなちっこい身体でダンジョン出ましたって言われてもどうしようもないって事を言ってんだよ!」


「あぁ~~ん、お主はほんとちっさい男じゃのぉ」


「だからそのちっさいのが問題だって言ってんだ」


「馬鹿め。産まれたばかりのダンジョンに今すぐ入れるわけがなかろう。もし入れたとしてもトイレくらいのダンジョンじゃろうし核もまだ無いわい」


「お、おう。もしかしてダンジョンは育たないと探検できないのか?」


「そうじゃ。エリシオンのダンジョンを考えればわかるじゃろ」


「100年もののダンジョン!」


「おーだんだんわかって来たようじゃな」


「そして俺達は数千年生きる処置をこれから受ける」


「そーじゃ。今すぐではない、何十年、何百年後からじゃが共にダンジョン攻略開始としゃれこもうではないか」


「アマテラスもノリノリだな!俺もなんか乗って来た!」


「そーじゃろそーじゃろ。まぁのんびり鍛えればよいじゃろう」


「え、なんで鍛えるの?俺勇者で英雄だよ?ステータス限界突破してるんじゃないの?」


「……お主、まさか想っただけで魔物バーンとか考えておらんか?」


「……」


「なさけない、なさけないぞ京平!剣と魔法と仲間で進むダンジョン探索こそが至高じゃろうが!」


「お、おう。言われて考え直した。そうだよな!それでこそだアマテラス!なんだか滾ってきたー」


「流石じゃ。どのみちダンジョン発生はエリシス王国でも問題になるじゃろうが直ぐにどうこう出来るもんでもないじゃろう。その間、10年くらいは剣と魔法を鍛えながら仲間を集めるか?」


「おぉ~いいなそれ!先ずは聖女のヨウちゃん誘ってヒーラー確保だな!」


「乗って来たのぉ、我もなんだか楽しくなってきたぞ!」


「うっひょー!リアルダンジョン!なんか楽しくなって来た!」



――――

――


 その頃、ソル教本部枢機卿の部屋では氷上の母、薫が娘の報告で頭を抱えていた。


「これは本当なの?」


「はいおか、枢機卿」


「お母さんでいいわよ。でもそうなると彼は神に選ばれし人類で間違いないわね」


「神に選ばれし人類……まさかお母様!」


「『神の選びし神子が生まれる時、人類の敵現れん。その者、神の代行者として想いの力で人類を救わん』」


「……まさか使徒様」


「間違いないわね、彼の重要度が今この時最高レベルに上がります。この件は私だけではどうにもなりません、教皇様へ報告をあげます」


「は、はい。ですがその後彼は……」


「今どうこう出来るタイミングではないわ教皇様と私の方から人員を送ります」


「そ、そうですか」


「ひかる?貴女はエリシオンでちょっとダンジョンに嵌り過ぎたふしはありますが、私の娘で優秀なのは間違いないのです。卑屈にならず、貴女の責務を全うなさい」


 そう、彼女は少し周りが引く程ダンジョンが好きだっただけ。

 それさえ無ければ優秀な司祭なのだ。


「わかりましたお母様!彼を、京平君を必ず立派な青年に育て上げてみせます!」


「頼みましたよ、私の愛しい子。キャロラインも頼みますね」


「はい、かしこまりました枢機卿」

「お任せください、お母様」


――――

――



――そして8年の月日が過ぎ、俺は14歳となった。




次回以降から登場人物が爆増します。

いきなり8年進みますが、ところどころで8年間の出来事は多めに語られますので宜しくお願いします。

ブックマーク、☆☆☆☆☆評価もモチベ爆上がりますので是非お願い致します。

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