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2 転生したら剣と魔法の世界だと信じたい②

 私はソル教本部より氷上様とエリシオンへ派遣され数十年彼女を支えさせて頂いた助祭のキャロライン。

 正直に申し上げて帝国の辺境も辺境、田舎も田舎のエリシオンに派遣されると聞いた時は眩暈で倒れました。

 

 ありえないのです。


 私はソル教の助祭ではありますが、なんの伝手も無いいち信徒が助祭になるにはそれ相応の努力が必要なのです。

 司教を飛び越え司祭となり、私がエリシオンを担当するならそれでも納得はできませんが怒りは無かったでしょう。


 そもそも問題を起こした枢機卿の娘の助祭など、エリートに足を踏み入れた私には受け入れられない事でした。


 しかし人間とは不思議な生き物の様で、何年も何年もその立ち位置に居ると馴れてしまうものです。

 十年、二十年と司祭と共に過ごす間に彼女の人となりも充分理解でき、今や彼女が何をして欲しいのかも手に取る様にわかります。

 正直エリシオンでの生活が安定し楽しくなっていました。


 それに辺境に向かうにあたり、兵士でもないのですが身体強化も無料で受ける事が出来ました。


 わかります?


 辺境の数億人居る人間の中に強化された人間が居るのです。

 勿論司祭様の方がいくぶん強くはありますが、エリシオンで見たスーパーサラリーマンという映画の様に事件に遭遇すれば瞬く間に事件を物理で解決したり、素養のおかげで聖魔法が多少使えるので道路でコケて怪我をした少年少女を道すがら癒すなんて事もした事があります。


 ですが、それが悪かったのでしょう。

 私の素養は修復。処理数は200と少し。


 司祭様は私の素養で機械関係が強いと思っていた様で、当時嵌り出したダンジョンに私を誘う事はなかったのですが、少年少女を癒す姿を見た瞬間。私の素養が人間にも有効な事がバレてしまったのです。

 教会の人間が癒しの力を使えるとなると、本来もっと高位、いえ、聖女と祭り上げられてもおかしくはなかったでしょう。

 しかし私はその聖女の扱いに疑問をもっていたので隠していたのです。


「なんで今まで隠してたの!」


 私は聖女の扱いに不満があり隠していた事を言うか迷いましたが。


「次の休日は一緒にダンジョンに行くわよ!」


「はい?」


 斜め上の彼女の答えに、街のヒーローごっこもそろそろ飽きて来たのと「あ、力の事じゃないのか」との安心感から思わす行きますと返事をしてしまったのです。


 それから来る日も来る日も彼女はダンジョンへ足しげく通いました……私を連れて。


 ええ、勿論強化してますし?多少の怪我も治せますので問題は無いです。

 ないですが次元断層のダンジョンというのはエリシオンにしか無く、そもそも強化もされていない地元民の素養だよりでの攻略です。

 

 ですが、いつの頃からか状況が変わり出したのです。


 戦闘や魔法に特化した素養を持つ子供がエリシオンに多く現れました。

 他の惑星では考えられない割合で。

 下手をすれば強化レベルの低い人間と同じくらいの強さでは?という者まで。


 それからダンジョンは徐々にその攻略スピードを増して行ったのですが、まさにそんな時。

 勇者と聖女の素養を持つ者が現れたと報告が入ったのです。


 それとほぼ時を同じくしてエリシス王国がソル教のご神体を求めて惑星に船団を引き連れて現れたと言うのは流石に驚きましたが、氷上司祭を既に信じ切ってしまっていた私にとってはどんな困難でもこの方となら乗り越えられると。


 ですが蓋を開ければなんて事は無く、方や勇者と聖女の確保、方やご神体。


 交渉もうまく勇者を隠し通した事でうまく行った様でした。

 後は勇者の素養を偽装し、エリシス王国へ提出すれば万事丸く収まる。


 ですが、まさかここで問題が発生すると誰が予想したでしょう。


 勇者の素養を持つ少年、橘京平君の偽装の為の素養が水晶に浮かぶと。そこには『英雄』の文字。


 私もこれには驚きました。

 勇者の素養だけでも大問題なのにそれに重ねて英雄が出たのです。

 

 いったい神はこの少年に何を求めていると言うのでしょう。

 しかし素養造製剤は人間の傲慢が生み出した業の様な物。

 もしかすれば神がお怒りになったのではないのか?そんな疑問も生まれます。


 生まれますが、今問題なのは少年の素養。


 氷上司祭が注射を持って彼を追い回していますが私はそれを止めません。

 それが世界のバランスを保つ為なのです。


 そしてふと、自分が洗礼式の担当だった時の様に水晶で処理数値を確認したのです。

 

 そこに示された数値は――


「うっそ……百万て……」


 私は思わずタワーに表示された水晶の数値を手で覆い隠したのでした。



昨日、今日は休みますと言ったのは間違いなく私です。

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