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1 転生したら剣と魔法の世界だと信じたい①

 氷上ひかるはソバーシュに格納されている自身の船で、ある場所と通信を行っている。

 その通信自体はエリシス王国の許可を得てソル教本部と行う正式な物だ。

 ただ、その通信相手がソル教の枢機卿である自身の母であるだけ。


――「そうですか。勇者と聖女だけではなく、まさかご神体の核がその山田健太君の中にあるとは」


「はいお母様。ソル教のご神体と勇者と聖女を天秤にかけた結果この様にした方が最善であると判断しました」


「交渉は無事に済んだと言う事で間違いはない?」


「ええ、ソル教の核保有者をエリシスへ渡す代わりに、聖女をこちらにと話は付いています」


「勇者の存在は?」


「まだバレてはいません。惑星に到着するまでにこちらを彼の体内へ注入する予定です」


「素養造製剤、ですか」


「はい」


「これで勇者の素養が上書きされ勇者とは別の素養反応が出るはずです」


「わかりました、問題ないようですね。あと、辺境司教の扱いは任せなさい。こちらで再教育します」


 再教育。

 その言葉にひかるは冷や汗が出る。出るが自分ではないので、丸山に心で静かに祈りを捧げた。


 そして枢機卿、氷上の母、氷上薫かおるは目をつぶり。


「貴女の全ての判断を支持します。ご神体自体は帝国に力を吸われ今は象徴でしかありません。ならば力のある者の確保が優先です。今後は貴女がその二人を導きなさい」


 枢機卿が支持を表明した事で、氷上ひかるのこれからの行動に予算が付く事が決まった事を意味した。

 枢機卿決裁の予算は莫大。

 なので、ひかるはなんの憂いもなく今後の活動を行える事に素直に返事をする。


「はい」


「あと、先程こちらでエリシス王国方面で次元の歪みが観測されました」


 報告を聞いた彼女はシートから飛び上がる。


「次元の歪みですか!?え、エリシスのどの辺りですか!まさか、ダンジョ――」


 彼女の言葉を薫が遮る。


「惑星どころか宇宙空間の可能性もあります!軽々とダンジョンと判断せず、先ずは二人の育成に専念し心優しき大人に育て上げなさい」


「は、はい。……それではダンジョンは」


「エリシス王国内の事はエリシス王国に任せるのが筋です。軍が動く、もし人が住める惑星で現れたのでしたらエリシオンに居た貴女に相談くらいはくるかもしれませんね」


「そうですよね!」


「で・す・が!二人の育成が最優先です。もし違えれば予算どころか貴女をソル教本星にて再教育送りにします。いいですね」


「ヒッ!――全力で事に当たります!」


「よろしい、私の可愛いひかる。頼みましたよ」



――通信は終わり、氷上ひかるは消えたモニターの元でうずくまる。


「――う”う”う”ダンジョンに帰りたい」――ダンジョンジャンキー極まれり。




――――

――




 俺は、いや、僕は橘京平、6歳。

 出身は惑星エリシオン。

 現在はエリシス王国の領内にある惑星の一つに到着している。


 今居る場所だけかも知れないが、緑が多く、目の前には大きな湖。

 そこに集う水鳥達。

 その湖畔に立つ教会と一体となった二軒のログハウス。

 その片方のリビングで独りソファーに寝転び、のんびりしている。

 もう片方は佐古田家用だな。


 母さんは固形物を機械に入れた瞬間出来上がる料理に仰天し、お父さんはこの惑星でも本を出す気らしく、降りて来てます!と執筆がはかどっているようだ。

 向こうのログハウスから、佐古田ママの悲鳴がこちらと同じように響いているので、同じ状況なのだろう。


 細かい事はあまり気にしたくないが、俺が寝そべるソファー。床から少し浮いていて座り心地がすこぶるいい。


 まぁ状況としては、エリシス王国が探していたソル教のご神体を保有する可能性がある二人の少年少女を保護した結果、おまけとして俺達家族も保護されている。

 なので同じ惑星だが既に山田健太君家族とはお別れし、今はもう一度洗礼の儀式を行う為の準備待ち。といったとこだ。


 どうやらエリシス王国にも洗礼の儀式があり、それはそれでちゃんとエリシス王国に報告する為にもう一度全員洗礼を受ける決まりらしい。



「……ひまじゃの」


 脳内に住み着く神、アマテラスがごちる。


「あぁ、同じく」


 子供の身で何が出来るわけもなく、今は状況に流されてみようと考えていたが、どうやらアマテラスも同じ考えの様だ。


「そう言えばさっき食事に薬が混じっておったぞ?」


「はい?……あぁ~惑星への免疫とかみたいな感じのかな」


「いや、これは素養造製剤じゃな」


「なんぞそれ」


「素養が増える希少な薬じゃな。それ一本で大戦艦が買えると聞いた事があるぞ」


「なんでそんなもんを俺に?」


「なんじゃその喋り方は。まぁアレじゃ、造製剤のジョブは勇者の素養を隠すように上書きされるからの。反応が出ると困るんじゃろーな」


「司祭が俺の素養を隠したいってのは伝わってたから……そうなるよね丸山さんも消えちゃったし」


「口封じじゃな」


「こわっ!……でもまたアマテラスがこ・ん・ど・は、まともな一般的なやつを素養に入れてくれるんだろ?」


「んーそれなんじゃが、最初は天啓で余裕で介入できたが今度は人間が作った本物に近い偽物じゃからなぁ」


「出来ないかも知れない?」


「まぁやってはみるが、勇者は我の介入じゃし、普通にやれば普通じゃろーて。心配する事もなかろう」


「そういやそうだな。まぁ状況みながらだな」




―― 30分後、ログハウス中央の教会。



 俺は脳内で顔を真っ赤にして吠えている。


「アマテラーーーーーーーーース!」


「大きい声出さんでも聞こえとるわ!」


「お前、前にこれはレアジョブって言ってたよな!」


「わしゃ知らん!今回はなんもしとらん!」


「見ろよ水晶!なんて書いてるよ」


「英雄って書いとるの。お主凄いの……流石の我でも引くわ」


「どーすんだよ!ほら、氷上さんもプルプルしてるじゃん!ってなんか注射器出してるぞ!」


「不味いぞ京平、あやつもう一本お主にいくつもりじゃぞ!」


 素養造製剤が入っているであろう注射器片手に迫る氷上司祭。

 彼女は惑星エリシオンにてダンジョンに嵌っていて父さんの著書を沢山持っていた。


 しかも身体強化済みで戦闘大好き司祭。

 要するにめちゃくちゃ強いのだ。


 逃げる間もなく、コケタ俺のお尻に正気を失った司祭にもう一本やられたのだった。


――だがこの場で本当に恐怖していたのは一部始終を見ていたエリシオンから同行していた氷上司祭の助手である。

 彼女は見てしまたのだ。

      

       ――彼の異常な処理数値を。


 

一章入りました。

明日はお休みの予定ですが、ブックマークしといて頂けると感謝の念にたえません。

あと「乙女ゲームは知りませんが、悪役公爵令嬢が美人過ぎて辛い」作者名は別ですが私ですm(__)mも併せて宜しくお願い致します。何卒!

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