14 転生したら剣と魔法の世界だと思ってる⑭
ミッターは艦橋に到着後、座席に飛びつき艦橋のモニターが開くと自身の船団へ指示を飛ばす。
「各艦に告げる。既にチェイサーを確認していると思うが相手は帝国の特務艦であると思われる。幸運な事に戦艦クラスが居ない今がチャンスだ、全力で逃げるぞ。処理数250以上の者は艦橋よりCICに直ちに移動、チェイサーを確認せず機雷を散布せよ!」
そのまま彼女も艦橋からシートが下がり、CICへと移動をする。
移動した先には既にこの艦の副長、この艦の砲術士が各種レーダーを確認している。
「すまん遅くなった」
「同窓会は終わりました?」
「途中で抜けてきたがな。リンクは完了しているな?」
「アイアイマム」
彼女は返事を聞き、自身も自分の脳と特殊艦ソバーシュをリンクさせ電脳界へと没入する。
リンクと同時に処理数350の彼女はその数値を倍に跳ね上げる。
最初の行動はチェイサーがどこから現れたのかの予測。
敵が特殊艦に特殊艦をぶつけて来ている以上、確実に沈めに来ている事は間違いない。
ならばこちらは突然現れた敵に全力で逃げるのが確定している。
敵国の宙域で迎撃なんて事をして立ち止まっている間に戦艦や要塞級が出張って来たら確実にやられるのだ。
そもそも戦隊を組んでいたとはいえ特殊艦はそうそう見つかるものではない。
帝国最深部ともなれば発見されていただろうが、今回の任務は帝国の外れも外れ、超田舎の惑星。
そんな所に帝国の特殊艦が追ってきている。
出現場所はゲートではなく、特殊艦の特性を使ったショートジャンプ。
発進場所はシュナイゼル本星。
本国ではなく辺境シュナイゼルの領主の特務艦であれば迎撃したのち離脱でも問題ないだろうが、この事態のスピード感からして情報が流れていた?
我が隊に内通者?
そんな考えも過ったが、首を振る。
自分の部下を疑うくらいなら死んだ方がマシと思えるくらいには共に任務を遂行して来た者達。
しかも人員の移動はここ数十年していない。
なら次に疑うのは友人二人とその部下。それと保護した10人。
友人二人とその部下は昔からの仲であり、疑いから除外する。
保護された10人の内、一人だけ疑う余地の残る人物がいる事に気付き、氷上ひかるへと連絡をとる。
――この間1秒以下の思考。
「ヒカル!今すぐそこの禿げたおっさんを拘束なさい!」
「あーごめん」
「どうしたヒカル」
「ちょっとだけ遅かったみたい」
「何があった!?」
「子供を一人攫われたわ」
――――
――
少年がひとり禿げたおじさんに抱えられて船内を移動している。
その禿げたおじさん丸山が憎々しげに愚痴をずっと呟いていた。
「何故私だけエリシオンに戻らされるとかおかしいだろ!だが前もって氷上司祭以外に報告を上げていて正解だったわ。ざまぁみろ、これで少なくともシュナイゼル領の領主様に取り入る事ができる。なんせこのガキは勇者だからな」
50代のおっさんといえど6歳児が抵抗出来るはずも無く、ミッター大佐が退出後に丸山のおっさんは俺を人質に取り。現在。
「(なぁアマテラス)」
「(なんじゃ?)」
「(このおっさんどうしたもんだろ)」
「(キュッと念じて殺したらいいんじゃないのか?)」
「(こえーよ!やり方もだけど6歳児で殺人とかヤベーだろ!)」
「(お主今誘拐されとるんじゃろ?)」
「(そ、そうだけど殺すとか違わなくないか?い、一応近所でも気の良いおっさんではあったし、海賊の振りしたあの二人からも救ってくれたわけだし、今まで良いおじさんが一回ミスしただけで殺すのはちょっとなぁ)」
「(あぁ~悪い事ばっかりしている奴が一回良い事して皆から認められるってやつの逆のパターンの奴じゃな?)」
「(そう、それ)」
「(なら折衷案で足だけ骨折させるとかどうじゃ?)」
「(足、足だけかぁ)」
「(出来なくはないじゃろ。想いの強さの調節じゃな)」
「(そんな簡単に上手くできるかなぁ)」
「(まぁ試しに足の爪くらいからやってみたらどうじゃ?それなら光と闇うんぬんも誤差の範囲じゃろし)」
「(足の爪ね、足の爪足の爪……てかそもそも、戦艦かなんかが追跡してこなかったら丸山さんもこんな強硬に走らなかったんじゃないのかなぁ)」
「(はよー)」
「(あ、うん。爪はがれろっ!)」
「痛ぁあ!くそっ、サンダルだったから足の爪が割れた!」
「(成功じゃがいまいち効果薄じゃな)」
「(それな)」
「(もう折るしかないじゃろ)」
「(丸山さんの足?)」
「(……ほれ、ポキッとやれば全て解決じゃ)」
「(そんな軽く言うなよ。やるこっちはお尻がキュッってなるんだから)」
「(あぁ、ホラーとか見てる時になるアレじゃな?)」
「(そうそう。……まぁ仕方ないヤルか)」
「(ほれ。さくっと)」
「(ちょっと黙ってて、気が散る。てかほんと丸山さんごめんなさい、でも貴方も悪いんですよ?)」
その時、ぽつりと丸山さんがつぶやく。
「絶対長生きしてやる。約束は守る。お前のぶんも長生きしてお前が叶えられなかった夢を……儂が叶えてやる。かならずだ」
その言葉を聞いて俺は前世の記憶がフラッシュバックした。
何も成しえなかった普通の人生。
叶えたいと願った夢も人の悪意で消された未来も一瞬に。
「(……結局奪おうとする奴が悪いんだよな)」
「(…………)」
――――
――
CICでは額に汗を垂らし焦りの表情を見せながらもミッターは各艦と連携しつつこの状況を抜け出そうとしていた。
「ミッター大佐、チェイサーが機雷前で全艦停止!後方から大型艦の反応です!」
「まさかもう戦艦が来たのか!」
「最後方の艦より最大望遠画像入ります」
そこには全長数キロに及ぶ流線形の船体、その周りには縦に土星の環の様な円環を配置し、名も無き惑星の陰から恒星の光に照らされ巨大な船体が姿を現す。
「て、帝国、帝国軍突撃大戦艦ギガルーナです!」
「クソが!全艦ジャンプ用意!」
「艦長!緊急すぎます!それではジャンプアウトした時に何が起こるかわかりません!」
緊急すぎるジャンプはなんの計算も計測も無しに行うと最悪、星と衝突もあり得る。
この広い宇宙、ジャンプした所で何かに当たる確率はほぼゼロに等しいが、人類が作ったものは人類に関わるものに引きずられる。
計算計測なくしてジャンプを行えば、最悪人の住む惑星に突っ込む確率が上がる。
過去、そういった事故が多発した時代が歴史上あった。
その歴史を知らない者はこの戦場に居ない。
だがこの船はソル神の核を乗せている。
再び帝国に渡れば今度はその核すら残さず吸い尽くされるだろう。
突撃大戦艦、名前の通り大戦艦が機雷などものともせず、前面に展開したシールドと円環を用いて全てを薙ぎ払いながら突撃してくるのだ。
既に蒔かれた機雷は爆発を始め、最後方の味方は今にも戦艦の射程に入りそうだった。
彼女はジャンプをする決意を固める。ソル神様、何卒ご加護を――その時。
「艦長!ミッター艦長!」
「見ればわかる。何が起こったというのだ……」
CICの画面に映るのは、今までその巨体で死の威圧をしていた突撃大戦艦が見事に真っ二つに分かれている映像だった。
――――
――
俺は目をつぶり想いを強める。
「(折れろっ!)」
――――。
「(……折れておらん様じゃが?)」
「(え?)」
見れば丸山さんは足を口元に近づけ、それこそ足が折れそうな体勢で足の指をフーフーしていた。
「(いや、折れそうな体勢ではあるが折れとらんじゃろアレ)」
「(確かに)」
「(お主、何を折った。いや、何を想ったのじゃ?)」
「……」
――ポン。『本艦隊は敵の追撃を振り切りました。これより戦闘態勢を1から3に引き下げます。繰り返します――』
プロローグ終わらすのにあと1話必要でしたm(__)m




