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13 転生したら剣と魔法の世界だと思ってる⑬

 まさか本当に壊れると思わなかった。

 なんと言うか、頭の天辺から何かがはじけた感覚。


「ぎゃぁあああああああ!」


「おいどうしたフェルミナ少佐!」


「み、み、みっちゃん。れ、レーダーが壊れた」


 ミッター大佐がレーダーを覗き込むと、メインの画面がぱっかり割れて中から液体がポタポタ垂れている。


「修理は可能なのか?」


 大佐はフェルミナ少佐に質問しながらも答えは分かっていた。

 見た目は小さくチープな物だが、次元断層災害で発生したダンジョン産の代物。

 宇宙の神秘を丸裸にした人類でさえ、ダンジョンについては分からない事が多すぎるのだ。

 資源だけが取れると思っていたダンジョンに、人の手が加わった様な加工されたアイテムが湧く。

 そんなものはファンタジーでしかない。

 故に、ダンジョン産のアイテムが修理出来るとは思えないのだ。

 しかもなんか液出てるし。


 しかしミッターはまだだ!と、そのアイテムをミッターに預けた本人に視線を向ける、氷上ひかるだ。

 過去、ダンジョンの戦利品だと自慢するだけの為に渡されたアイテムはソル神の核の位置を示すレーダーだったのだ。

 まさかソル教にとっては最重要アイテムのはずであるが、そんな物を友人であるミッターに預けた。

 ソル教の信徒が魂であるアイテムを渡す。これは最大の信頼であり、友情の証だった。

 視線を氷上へ向けるが、彼女の表情は「?」だ。


「(え?なんでみっちゃん私を見つめるの?)」


 氷上はそれがなんのアイテムかわからず、実は少佐の説明を聞いて滅茶苦茶驚いていた。

 聞けばソル教のご神体の位置をだいたいでも見つける事が出来るアイテム。

 そりゃ驚く。

 が、ここであたふたして足下を見られる訳にもいかず、平静を装い。「そうね、このアイテムはそういう事が出来るアイテムですね」と、知ったかぶりを貫いていた、からの「?」なのだ。

 ただ自分は田舎に派遣されたけど自由にダンジョンで楽しんでる!と自虐的に渡したアイテムであり、無論、渡した事すら覚えていない。


「氷上司祭、これは貴女から預かったアイテムだけど直し方はわかるかしら」


「(私がわたした?)」


 そう言われ氷上の脳内は高速処理を始める。

 彼女の処理数値は驚愕の800。

 その思考速度は訓練により、その辺の処理機器を上回る。


「そうね、なんとも言えないけど預からせてもらえればなんとかなるかも知れないわ。それにここにはダンジョンに精通された男女ん先生もいらっしゃいます」


「あぁ、ダンジョンの冒険記を書かれてる男女ん先生がいらっしゃったんだな。ではこれは君に任せる」


「そう、じゃ預かるわね」



――――

――


「よくやったのじゃ」


 そんなやりとりを見ながら俺は脳内のアマテラスと成功を喜んでいた。


「まったく。でもこの力ヤバくないか?想いの強さでそれを実現させるとかチート過ぎだろ」


「んーまぁ勇者じゃしのぉ。そんなもんじゃろ?」


 そんな曖昧な返答で俺が納得するわけがない。 


「じゃろ?って。過去の勇者の逸話とか調べても見つからないけど……お前何か隠してるのか?」


「フューフュー」


 そっぽを向いて口笛を吹いているが、鳴ってない。


「……いずれ詳しく聞くからそのつもりでな。兎に角あのレーダーさえ壊してしまえば俺がアマテラスを飼ってる事はバレる事は無いわけだ」


「飼われてないわい!」


「あとはヒカルさんが言っていた様に彼女の実家での長い人生が始まるんだな」


「無視するな!飼われて無いからな!それとお気に入りじゃからと脳内で名前呼びしてると咄嗟に出るぞ」


「そんなヘマしない。でも考えてもみろよ、現代日本の文明レベルから一気に超SFの世界に行くんだぞ?ちょっと剣と魔法じゃなくてもいいかもって思ってしまうよ」


「んーそれなんじゃがな。光と闇の関係をお主は知っておるか?」


「光と闇?光があるから闇があるって感じか?」


「そうじゃ、勇者は所謂光じゃ。ならば勇者が現れれば闇もまた産まれる」


「あ、あんまり聞きたくない話だけど一応聞こうか」


「それがいい。要するにお主が先程勇者の力を使った事で闇が産まれたのじゃ」


「先に言えよ!」


「じゃがあのままだと幼気な少年少女とその家族は殺されておったぞ?」


「うぐっ」


「じゃがまぁ闇と言っても今お主の使った力は小さい物じゃ。そこに産まれた闇も小さい物じゃろう」


「無視でいいと」


「直接害が無ければ無視でいいじゃろ」


「な、なんだよ。勇者と対を成す闇みたいに言うからちょっとファンタジーな魔王とかと今後戦わないといけないと思ったじゃないか」


「……お主、なんで魔王を知っておるのじゃ?」


「え。だから前世ではそんな物語がいっぱいあって」


「またそれか、そんな事あるわけないじゃろ。そもそも別世界の人間を別の世界で蘇らせるとか神でも命がけじゃぞ」


「そう言われてもなぁ、記憶があるんだから。お前も一心同体なんだから嘘じゃないのわかるだろ?」


「妄想が凄い奴じゃなぁとはおもっとるよ?」


「妄想ちゃうわ!」



――ビーッ!ビーッ!



 突然の警報音と共にミッター大佐の目の前に画面が現れる。



「司令!シュナイダー帝国の特殊艦隊です!至急ブリッジへお越しください」


「なっ!わかった。総員戦闘態勢を取りつつ20航宙速度まで加速せよ!私はそちらに向かう」


「はっ!」


 ミッターは画面を閉じると3家族へと向きなおった。


「と言うわけで皆さんには申し訳ないが今しばらくこの部屋で待機していて下さい。必ず無事にエリシスへ送り届けます。氷上司祭、あとは任せます」


 そう言って軍服の3人は氷上と視線を合わせこの場を立ち去った。


「司祭様どういう事です?このエリシスの艦艇がシュナイダー領に入れたのはソル教の監視ありきじゃなかったんですか?」


 イケメン陽ちゃんのパパさんが前のめりに質問する。


「すみません、ソル教も一枚岩ではないのです。それに宇宙は広いのです。エリシスを快く思わない者も居るでしょうから」


「クソッ」


「今は耐えるのです」


 悪態をつくパパさんに寄り添ったのは丸山さんだった。


「丸山さん」


「皆さんも聞いて下さい。この難局を乗り越えれば我々は晴れてその人生をすばらしい物に変える事が出来るのです。便利な生活だけではありません、そこに待つのは数百年に及ぶ幸せな生活です。皆さんで力を合わせ頑張りましょう」


「丸山さん!あなたが居てくれて良かったです。共に参りましょう!」


「ええ、ええ、共に」


 丸山さんとヨウちゃんパパを氷上司祭も見つめ声を掛ける。


「丸山さんを誤解してました」


「氷上司祭?」


「本当に地域に根差した布教をされておられたのですね」


「あ、あぁ。ありがたきお言葉です。今後も本部にてこの気持ちを忘れずに神に仕えて参ります」


「えーっと……丸山司教は本部に戻りましたら惑星エリシオンに戻って布教に努めて頂く予定なんですが」


「なんで!?」


――部屋の隅で体育座りをして微動だにしなくなった丸山さんだったが、船体を揺らす衝撃に全員が戦慄した。


 




 

次話で少し長いプロローグが終わる予定です。

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