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まちまちリライト  作者: なつみかん


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3/7

Episode.3 マチでいいかな?

あたしはツトムくんと銀髪のお姉さんを交互に見比べる。

ツトムくんとは、さっきまで一緒に帰宅していた。

こんなお姉さんの話は聞いていない。

今までだって何度もツトムくんの家には遊びに来た。


脳内で様々な仮説を展開して、

あたしはひとつの結論を導き出す。

「……浮気?」


「おい! 付き合ってねぇ!」

ツトムくんが真っ赤な顔で反論してくる。

いつもの素直なツトムくんだ、かわいい。

でも……だったらなんで?


昔からずっと一緒にいて、

いつもあたしを守ってくれていたツトムくん。

ちょっとだけアタマは不自由だけど、

まっすぐで、男らしくて、あたしだけの騎士ナイト様。

なのに……


あたしは銀髪のお姉さんを見る。

雰囲気はあたしに似ている……気がする。

でも、あきらかに二十代半ばの女性だ。

だいぶ年上に見える。


あたしはこの事象も踏まえ、更なる仮説を展開した。

「……年上が好きなの?」


「だからチゲぇ!

 信じられないだろうが机から出てきたんだよ!

 いきなり現れて未来の俺の嫁とか言ってやがる!

 俺も実際、なにがなんだかわからねぇ!」


「……机から? ……嫁?」

まっすぐなツトムくんだ。

きっと、ありのままに起こったことを話している。

嘘なんてつかない。


つまり、この女性は物理法則を無視したんだ。

やっぱり! この世界は定理の書き換えが――


「コマチ」

脳内で仮説を立てていると、女性が話しかけてきた。

年上とはいえ、初対面で呼び捨てだ。

未来の嫁とか……急に現れた恋敵だけど、

今はそんなことより、この人と話がしたい。


「ちょっと2人で話しない?

 汚いけどツトムの部屋でいいよね」

汚いなんて……なんて失礼な。

ツトムくんの部屋は、ちょっと個性的なだけだもん。

でもお話は、あたしからもお願いしたい。

あたしは二つ返事で了承した。


「ツトムはここで待ってなさい。

 おとなしくしてんのよ?」

女性が言うと、ツトムくんが声を荒げる。

「なんでテメェの指図を……」


「お・と・な・し・く、してるのよ?」

女性がピシャリと言うと、

ツトムくんはムスッとしてソファに座った。


アタマが不自由なツトムくんに理屈を言っても無駄だ。

従わせるのが一番コスパがいい。

この人、あたしと同じくらい……

ううん、あたし以上にツトムくんの扱いが上手い。

そして、遠慮がない……


不思議な気持ちでツトムくんの部屋に移動する。

あぁ、いつ来ても個性的だ。ツトムくんの匂いがする。


「お姉さん、ここから出てきたの?」

あたしはツトムくんの机の引き出しを開ける。

なんの変哲もない、ノートも教科書も入っていない、

いつものツトムくんの引き出しだ。


「お姉さんなんてやめてよ。アタシはあなたなんだから」

そう言って、お姉さんはフッと笑った。


「やっぱり! そうなんだ!」

あたしは目を大きく開いて、未来のあたしを見る。


「あ、気づいてた?」


「途中から、だけど。

 いろいろ立てた仮説を潰していったら、

 その仮説が残ったの」


「さすがアタシ、優秀優秀」

未来のあたしは、

そう言って満足そうにうんうんと頷いた。


「それでどうして来たの? 実験とか?」


「……ん、まぁいろいろと、ね。

 そう、ツトムがダメ男だから、

 この頃から鍛えなおしてやろうと思ってさ」


そうだ、この人、未来の嫁って言ってた!

あたし、ツトムくんと結婚しちゃうんだ!

自然と顔がニヤけてしまうのを、

あたしは止められなかった。


「えぇ、でもツトムくんと

 一緒にいられるのは嬉しいよぉ」

あたしはニヤけたまま、ヘラヘラと話す。


「そんなこと言ってられるのは、今のうちだけよ。

 結婚は現実問題なんだから」

ヤレヤレといった顔で、未来のあたしは言う。

そうなのかなぁ、まだ実感が湧かないな。


「アイツ、まだアタシがコマチだって気づいてないし、

 このまま内緒にしてようか?」


「どうして?」

あたしがツトムくんのお嫁さんになるなんて、

今すぐにでも本人に教えたいのに。


「だって、アイツ、バカだしさ。変なふうに意識して

 未来が変わっちゃったら嫌でしょ?」


「あぁ、確かに!」

ツトムくんなら逆張りして突き放しかねない。

もぅ! あたしよりツトムくんのこと

わかってる女の子なんていないのに。


「それとね、2人で話したいことは、

 もうひとつあるんだ」

未来のあたしは少し真面目な顔になって微笑む。


「え? なに?」


「あなた、今、アインシュタインの理論を

 研究してる……よね?」


「うん、相対性理論。それにエネルギーと質量の等価性! E=mc²は普遍的で絶対なもの。でも数式で表せる以上、それを覆せる数式がきっと存在するはず。ううん、違う。あたしは『物理法則を書き換える数式』を作り出せると思うんだ。あなたはどう思う? というか、未来から来たんでしょ? つまりこの仮説は正し――」


「ねえ、コマチ」

饒舌に、早口でまくしたてるあたしを、

未来のあたしが遮った。

「その研究、やめようか」


「……どうして?」


「いっぱい勉強したけどさ。そんな数式、なかったよ」


「じゃあ、あなたはどうやってここに……?」


「んー、企業秘密」

何かを隠してる……どうして止めるんだろう。

でも、ここで言い争うことに意味はない。


「……わかった」


「言い争うコスパを考えたね。さっすがアタシ!

 じゃあ、そろそろツトムのところに戻ろうか」

そう言って、未来のあたしはひらりと部屋を出ていった。


「ねぇ、今のツトムくんはあたしのなんだからね」

階段を降りながら、あたしは未来のあたしに宣言する。


「取らない、取らない。子供に興味ないし、

 それにアタシはあなただよ?」

それもそうか……妙に納得感はあるな。

そういうものなのかな?


「そういえばさ、髪の色綺麗だよね。

 未来で流行ってるの?」

銀髪に輝く美しいショートヘアを見て、

あたしは気になっていたことを聞いた。


「これ? ただの白髪だよ。面倒だから染めてないの」


「し……しし、白髪ぁ!?」


「もう、あんまり言わないでよ、恥ずかしいじゃん。

 これでも色々と苦労してんのよ?」

衝撃的な事実を聞きながらリビングに戻ると、

ツトムくんはおとなしく待っていた。いい子だ。


「おぅ、遅いじゃねぇか。

 コマチと仲良くなったのかよ」


「ごめんごめん。コマチがいい子だから、

 つい話し込んじゃった」


「まぁいいけどよ。そういやテメェ……

 名前なんて言うんだ?」


「そうねぇ……マチでいいかな?」

……えっ!?

あたしは驚愕した。そんなバレバレの名前!?

未来の姿だってことは隠すって言ったじゃん!!


「へぇ、未来から来た割に古風な名前なんだな」

……って、気づかないの!?

ツトムくん! いよいよアタマ大丈夫!?

未来のあたし、マチはあたしを見て、

「ほらね」と呆れた表情を浮かべてみせる。


マチの銀髪を見る。白髪……苦労している……

ツトムくん。大好きだよ、本当に大好き。

でも、アタマが不自由すぎて……

あたしの未来がものすごく不安だよっ!

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