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まちまちリライト  作者: なつみかん


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22/25

Episode.22 さよならバイビー

「ふんふんふーん♪」

洗面台の前で、俺は鼻歌を歌いながら

リーゼントをセットしている。

今日はポマードでガチガチにしたほうが

いいかもしんねぇな。むっちゃんもきっと気に入るだろ。


あれから四日経った週末。

今日はなんと、むっちゃんとデートの日だ。


あの胸のデケェ、とにかくデケェ、

バチクソ好みの女と仲良くなった。

こんなことが俺の人生に訪れるとはな……


「あんたねぇ……相手はギアナイトよ? ロボよ?

 わかってんの?」

隣でマチが呆れた顔で腕を組みながら

ため息をついて言う。


「バカいえ! むっちゃんはあんなに柔らけぇし

 それにケガだってするんだぞ?

 あの鉄野郎と同じわけねぇだろ!」


「はぁ〜っ! バカだバカだとは思ってたけど

 ここまでとはね……

 まぁいいわ、一回痛い目見ときなさい」

心底呆れた顔でマチが続ける。


「ただし、アタシとコマチが遠くから見張ってるからね

 そこんとこ忘れないでよ?」


「はぁ?! なんでテメェらに

 覗かれねぇといけねぇんだよ!

 『はじめてのおつかい』じゃねぇんだぞ?!コラァ!」

最悪だ。何考えてんだよ。コイツら……


「あの子、一応敵よ? ギアナイトよ?

 見張るのは当然でしょ?」


「だから違ぇって……

 むっちゃんはどう見ても人間だっつーの」


「まったく、アタシは反対したのよ?

 というか、そもそもデート自体潰そうって言ったの。

 そしたらコマチが少し様子を見たいって……」

マチは上を見上げて眉をひそめながら言う。

「あの子、何考えてんのかしらね?」


……コマチが?

クソッ! なんだよ。

アイツ、今はむっちゃんと暮らしてやがるんだよな……


むっちゃんはコマチに、

なんて言って俺とデートに来るんだ?

別に悪いことしてるわけじゃねぇのに

妙な罪悪感が湧いてきやがる。


「悪いと思ってんなら

 やめといたほうがいいんじゃないのー?」

マチが見透かしたように、ニヤニヤと覗き込んでくる。

ああああ! この年増! ムカつく!

俺は急いで準備して家を飛び出した。


「いってらっしゃーい」とかマチが言ってやがるが

白々しいんだよっ! 覗いてるくせによぉ!


でもアイツらはやると言ったらやる女どもだ。

言い争うだけ時間の無駄だ。

悔しいがやらせとくしかねぇ。

俺は血涙を飲み込み、待ち合わせの公園に向かった。


※ ※ ※


公園でベンチに座って、むっちゃんが待ってると

ツトムきゅんが走ってきた。


「よ、よぉ。むっちゃん、待たせたな」


「ツトムきゅん、おそーい!

 今日マジで楽しみにしてたんだから、

 責任とって最高にエモい一日にしてよねっ!☆」

最強のセリフに最強の笑顔、

これでツトムきゅんは、むっちゃんにガチ恋決定♡


むっちゃん今日は、ちゃーんと使命果たさなきゃ。

あーでも、ツトムきゅんとくっつくと

秒で距離感バグるんだよねー。


この前みたいにおかしくなっちゃうのは

マジ回避したいんだけど……

今日はちゃんと制御できるかなぁ?


……ま、いっか! 今はイチャつけばいいっしょ!


ツトムきゅんの腕をぎゅーっと独占して、

むっちゃんはとろけそうな顔でネイル自慢。

――パチッ

うっわ、またキタ……

思考回路がパチパチしてショートしそう!


「ほら見て、このネイル! マジ天才じゃない?

 ツトムきゅんの為にデコったんだよー!  

 これ絶対優勝っしょ? 褒めて褒めて〜☆」


……てか何これ、マジでヤバい。

ツトムきゅんに触れるだけでおかしくなるとか、

ホント勘弁してほしいんですけどー。


「お、おぉ、そうだな。魔女みてぇでスゲぇな」

もーっ! ツトムきゅんったら、

マジ女の子の扱い下手くそすぎん?!


……って、あれれ? 今のちょっと変だよね?

むっちゃんって女の子だっけ、ロボだっけ……?

なんか自分でもよくわかんなくなっちゃった。


ま、いっか! どっちでもいーや。

……だって、今は『女の子』のむっちゃんの方が、

ツトムきゅんも絶対テンション爆アゲっしょ?

だからむっちゃんは、最強にカワイイ女の子でいよっと☆


おしゃべりしながらカフェ来ちゃったー!

ツトムきゅんってば「おぉ」とか「あぁ」って

語彙力死んでるけど、マジでちょー楽しい。


……好きな子といるって、こんな感じなのかなぁ?

やっぱり人間って楽しそうだよねー。


……てかさ、そもそもむっちゃん何で

ツトムきゅんとデートしてるんだっけ?

……うわ、なんか頭の中モヤモヤするかもー!


「むっちゃん、そっちに座んねぇのか?」

ボックス席でツトムきゅんは正面の席を顎で指した。

ツトムきゅん、むっちゃんと離れたいの?

も〜マジムリだからね!


「えーっ! むっちゃん隣がいいよぉ!」

ツトムきゅんにくっついてんの居心地良すぎ、

ガチでヤバい。 ずっとこのままでいたいわ〜。


「ねぇ、ツトムきゅん……

 むっちゃんだけのツトムきゅんになって?♡」

……あれれ?

上目遣いでなに言っちゃってんの、むっちゃん!

これガチ? マジ本気で言ってんの?


――ガッシャーーーン!!

デカい音がしたからそっち見たら、

コマチがマジで顔真っ赤にして立ち上がってて、

マチがガチで抑えてた。


……あー、コマチじゃん。結局つけてきてたんだねー。

でもさ、ツトムきゅんは早いもの勝ちだから。

むっちゃん、絶対渡さないからねっ♡


「ったく、アイツら何やってんだよ」

ツトムきゅん、マジで呆れ顔してる〜。

よし、ここはむっちゃん追い打ち、いっちゃうよ!


「ねぇツトムきゅん、コマチ撒いちゃお?

 二人でどっか遠く行こうよ!」

……そうだ、そうだった。そういう命令だったんだった。

今さら、そんなのどうでもいいんだけどね。

なんか急に思い出しちゃった!


「……ダメだ、コマチからは離らんねぇ」

あれれ……?


「……どーして?」


「コマチ守るのは俺の使命だからな」

ツトムきゅん……なんで?


むっちゃんホントに好きになっちゃったんだよ?

くっついてたら、ぽーってなって……

命令とかじゃないんだよ、ホントに好きなんだよ?


あ〜でも、むっちゃんってロボなんだっけ。

やっぱりコマチみたいに

本当の女の子のほうがいいのかな?


「コマチ、好きなの?」


「ばっ……別に好きとかじゃねぇ!!」

ツトムきゅん、真っ赤になってる。


……そうなんだ。コマチ好きなんだ。


もしワンチャン、ツトムきゅんゲットできても

むっちゃんがロボだって知ったら、

きっとツトムきゅんはがっかりするよね。


ぐるぐるぐるぐる……

シミュレートをくり返す。


あーあ。詰んでんじゃん、

むっちゃん、コマチに勝てんし……


「ツトムきゅん……今日はありがと、むっちゃん帰るね」

ツトムきゅんから離れて小さく手を振る。


……もう思考回路も元に戻らない。

むっちゃん、壊れちゃったみたい。


「えっ! むっちゃん、急になんで?!」

ツトムきゅんがびっくりしてる〜。ウケる。


むっちゃん涙でるように作られてないんだよねー。

だからせめて笑顔でお別れしちゃおう。


「さよならバイビー!!」

最っ強の笑顔でお別れして

むっちゃんはカフェから出てっちゃった☆

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