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まちまちリライト  作者: なつみかん


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Episode.21 あんたはちょっと黙ってなさい!

ユウヤさんがツトムくんを診察するために、

むっちゃんが離れたので、

あたしはまた近づかないように、むっちゃんを見張る。


ツトムから離れたむっちゃんは

「あれれ?」と言ってキョトンとしていた。


「さて、と。これでよし。

 傷も塞がってますし、僕ができるのはここまでですね」

ユウヤさんがツトムくんの肩をペタペタ触りながら言う。


「つってもよぉ、肩全然動かねぇじゃねぇか。

 やっぱチャラ男のヤブ医者じゃダメなんじゃねぇか?」

上半身裸のまま、肩を小さく動そうとするツトムくん。

——ちょっと待って、その仕草……いいよ。


さすがあたしの未来のお婿さん。

リーゼントはちょっとだけ、どうかと思うけど、

いい身体してる! 色っぽいよ!


「組織自体はつながってるんですから、

 あとはリハビリですよ。

 無理矢理にでも動かしたいなら

 可動モーターを埋め込みましょうか?」

にこにこと、なんの罪悪感もなくサラッと

機械化を提案してくるユウヤさん。


実はユウヤさん、これまで何度もツトムくんの肩を

『機械化』しようとしてる。

でもなぜか毎回、原因不明で失敗してるんだよね。


結局いつも普通の治療で終わって、

ユウヤさんも「あれ?」って首を捻っていた。


技術の問題……じゃないよね、これ。

そうだとしたら……


「ねーねーコマチ!

 むっちゃん帰るとこマジでないんだけど、

 コマチんちに置いてくんない?」

唐突に、むっちゃんが爆弾発言する。


「えぇ!? なんであたしが……」


「んふふ〜、じゃあツトムきゅんにお願いしちゃう?

 それはコマチ的にゼッタイ嫌だよねぇ?」

ニマーッと小生意気な笑み。

やっぱりギアナイト……この子、絶対性格悪い。腹立つ。


「ちょっと。アンタ、ツトム狙いなんじゃないの?

 なんでわざわざ離れる方に持ってくわけ」

マチが横から鋭くツッコむ。

そうだよ。残念なツトムくんに言えば

二つ返事でOKしそうな話なのに。もちろん却下だけど!


「……なんかねぇ、自分でもマジでわからんのよねぇ。

 ツトムきゅんにくっついてると、

 自分がロボなこととか、コマチたち遠ざける任務とか、

 全部どうでもよくなっちゃうっていうか。

 頭がバグってる感じ? なんだろ、ウケるよね」

むっちゃんはツトムくんを見ながら

キョトン、と不思議そうに言った。


「だからさー、ツトムきゅんの近くにいるの、

 なんか不安っていうか……」


「作戦喋っちゃっていいの? バレバレじゃない」

呆れ顔のマチ。


「いいのいいの!

 だってむっちゃんこんなにかわいいし?

 ツトムきゅんくらいチョロいから余裕〜☆

 ねぇねぇダメ?『ゼロホール』搭載だから

 ご飯もいらないしー」

このギャルナイト!

かわいいだけで世の中渡り歩く気だ……!

あたしの怒りメーターが振り切れる。


「コマチ、預かってあげたら?」

少し考えてから、マチがぽつりと言った。


「なっ……マチまで裏切るの!?」


「だってツトムの家に置いときたくないでしょ。

 ……それに、この子ちょっと変。

 『機械なのに自由意思が芽生えてる』

 そんな感じがするのよ。

 観察しといたほうがいいかも……」


自由意思。……意識?

——あれ、なんか引っかかる。

意識ってどこから来るんだろう。


あたしとマチが研究した『相対性理論』、

ユウヤさんから教わった『量子力学』、

どちらも『意識の在処ありか』の答えをくれない。


「ねーねーコマチ、黙っちゃったけど?

 いいのー? わるいのー? どっちー?」

考え込むあたしに、

むっちゃんが気だるげにウザ絡みする。


「……うん。いいよ」

「じゃあお友だちになろっか」

さっきまであんなにイライラしてたのに……

むっちゃんことがもっと知りたくなっている。


むっちゃんに意識が『ある』と仮定するなら、

それは当然、脳から生まれたものじゃない。

じゃあ、どこから?

もしかして……身体の中に意識はない?


「ホント!? やったー、

 むっちゃん友メン欲しかったんだよねー!」

ぱあっと花が咲くみたいな笑顔。


かわいい。

あれ、さっきまで何にイライラしてたんだっけ。

こんなにかわいい『研究対象』、他にないのに。


「じゃあね、ツトムきゅん! むっちゃん帰るから!

 週末は絶対デートしよーね、お約束♡」


「で、で、で、デートだぁ!!」

ツトムくんが真っ赤になって慌てふためく。


「そんなのダメに決まってるでしょーっ!」

そうだ、研究のことですっかり忘れてた!

この子、今まででダントツ最強最悪の敵だったー!


「えー、コマチに聞いてないしー!

 友メンでも恋愛だけはマジで譲れないっしょ!」


「お、俺は……そのぉ、やぶさかでもねぇけどよ」

デレッデレのツトムくん!

ほらっ、なんか『やぶさか』とか

ちょっと小難しい言葉使ってカッコつけてる!!


「ツトムくんのバカーッ! もう知らないっ!」

あたしはツトムくんに一喝すると、

むっちゃんの手をひっつかんで家を飛び出した。


すぐ後ろから、マチがついてくる。

「ツトムのバカはガッツリ叱っとくから。

 むっちゃんのこと、よろしくね」


「うぅ……マチぃ、ロボにボロ負けとか悔しすぎるよぉ」


「負けるとかじゃないでしょ。

 あんたも積極的に行ってみれば?」


「いやいやいや無理っしょ!

 むっちゃんはツトムきゅんの

 理想詰め合わせで爆誕してるんだよ?

 勝ち目とかゼロっしょ!」


「「あんたはちょっと黙ってなさい」」

むっちゃんは「うへぇ」と言って静かになる。


「そういえばマチ、うちには来ないの?

 お父さんとお母さんに会いたくない?」


「母さんたちねぇ……」

マチがふっと遠い目になる。


「遠くから、こっそり見てるだけでいいんだ。

 アタシが顔出したら、混乱させるだけだしね」


「そっか……」

会ったらまた『嘘』つかなきゃいけなくなる。

マチはそれが、嫌なんだろうな。


「ふーん。アンタたちも色々あるんだねー。

 でもいいなぁ、むっちゃんも人間になりたいなー」


「あんたも十分、人間っぽいけどね」

今日は、完全にこの子に振り回された。

ロボだと思うほうがもう難しいくらい。


「マジ!? むっちゃんやるじゃーん!」


『有機物』と『無機物』。

その境界線はどこ?

『意識』って、一体なに?


金色の髪が夜風になびき

にしし、と得意げに笑うむっちゃん。

あたしは、答えの見えない問いの答えを探し続けていた。

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