表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
まちまちリライト  作者: なつみかん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
20/25

Episode.20 負けんなよ

教師たちの「関係者以外立ち入り禁止」という

静止を無視して、アタシは裁縫部へと向かい突っ込んだ。


何が立ち入り禁止よ!

今はそれどころじゃないってーの!


あの反応は絶対ギアナイト。

学校近くに出たってことは、狙いはコマチ。

息を切らせて廊下まで着くと――


……コマチが見知らぬ金髪ギャルと、

ある意味ガチの死闘を繰り広げていた。


「あんた誰よ! なんでツトムくんにくっついてんの!!」

コマチが謎のギャルの服を引っ張って叫ぶ。


「やだ〜、コマチ怖すぎ〜!

 てか顔めっちゃ赤くない? 超ウケるんだけど〜!」

笑いながらも謎ギャルは

ツトムの腕にさらにギュッとしがみついて、

上目遣いでとろけるような声を出す。


「ツトムきゅ〜ん、むっちゃんのこと守ってぇ〜♡」

ツトムは顔を真っ赤にしてフリーズ。

タケシくんは目を閉じ、

両手合わせてブツブツとお経を唱えていた。


……状況がまったく理解できない。なんなのこれ?


「ツトムくん!しっかりしてっ!

 ツトムくんを好きになる女の子なんているはずないよ!

 絶対この子、ギアナイトだよっ!」

追い詰められたコマチが、結構ひどいこと言う。


とりあえずデバイスを展開してむっちゃんをスキャン。

『生体反応 なし』

あ、ホントにギアナイトだ。

でも……なんか戦う気にならない。なんでだろ。


「え〜っ、コマチひどくない?

 マジキズつくし、鬱なんだけどぉー」

むっちゃんはウルウルした目でツトムを見上げる。


「ツトムきゅん、むっちゃん泣いちゃいそう。

 ねぇ、ちゃんと否定してよ?

 むっちゃんはツトムきゅんの女の子だもん♡」

その上目遣いに魂を抜かれたのか、

ツトムがコマチに向かって口を開いた。


「……なぁ、コマチ」


「何よっ、浮気者!」


「お、落ち着け……この柔らかさは、本物だ……」


「キーーーッ!!!」

コマチがついに沸点を超えた。

やれやれ、ここは大人のアタシが出るしかないか。


「まったく、あんたたち何やってんのよ」


「あっ! マチ来てたの? ほらーっ!マチ来てんじゃん!

 やっぱギアナイトじゃん!!」

口を尖らせてコマチが叫ぶ。

昔のアタシ、こんなにヤキモチ焼きだったっけ?


……まぁ、ツトムに言い寄ってくる女の子なんて

アタシの時代にはいなかったから知らないんだけど。


「だいたい、なにが『本物』よ。

 どうせ揉んだこともないくせに」

アタシはツトムに近寄って会心の一撃を決めてやった。


「うるせぇ! テメェなんか揉むほどねぇくせに!!」


…………空気が、凍る。


アタシとコマチは無言で目を見合わせ、

同時に手を振り上げ――


パァンッ!!

ツトムの両頬に、それぞれ渾身のビンタを叩き込む。


「イぺー! ヘメェラハヒホ――」

(いてぇ! テメェら何を――)

頬の腫れ上がったツトムを、むっちゃんは見逃さない。


「キャーッ! ツトムきゅん大丈夫?!」

すかさずツトムの頬を撫でる。


「頬っぺた赤くなっちゃって、マジ尊い……

 むっちゃんがちゅーして治してあげるね♡」


そして――


……チュッ♡

や り や が っ た !!!


「「このデク人形がーっ!!」」

アタシとコマチが同時にむっちゃんへ飛びかかり、

廊下は瞬時に混戦状態へ。


ほっぺにキスされたツトムは白目を剥いてノックアウト。

煩悩を消そうとするタケシくんのお経が鳴り響く中、

三つ巴のキャットファイトが幕を開けた。


※ ※ ※


「……皆さん揃って、なんですかそのケガ」

ツトムの肩の治療にやってきたジュドーが、

傷だらけのアタシたち三人を見て呆れた顔をする。


戦い疲れた結果、一時休戦して

そのままアタシたちはツトムの家に転がり込んできた。


全身ひっかき傷とアザだらけ。

むっちゃんも同じ有り様だ。

……傷まで再現するとか、ホントよくできてる。


「むっちゃんは悪くないしー。

 恋ってバトルっしょ? 早い者勝ちっしょ!」

そう言いながらツトムの腕に

しっかりくっついたまま離れない。


ツトムはツトムで夢見心地だ。

あーもうムカつく、このデク人形!!


「うっさい! このギャルナイトっ!」

コマチとむっちゃんが全力で睨み合っている横で、

ジュドーがそっとアタシに近づいてきた。


「彼女、戦闘能力はゼロみたいですね。

 完全に人間として設計されている。……面白い」


「何が面白いのよ。あんたが作ったんでしょ?」


「いえいえ。僕の時代には

 ああいうタイプのギアナイトは存在しなかった。

 彼女は僕たちとは、違う未来から来てます」


「……違う未来?」


「考えてみてください。

 彼女は明らかにツトムくんを狙っている。

 そう『設計』されてるんですよ。

 ツトムくんが恋に落ちて戦線から離れるように、と」


「まぁ、そうでしょうね。

 しかし、NOVAもなんて回りくどい……」


「どうして未来のNOVAが、

 ツトムくんの好みまで把握してるんでしょう?」


「そんなの、ちょっと調べれば――」

言いかけて、止まった。

アタシの未来に、ツトムは……いない。


それって、つまり――


「……ツトムが、生きてる?」

思わず口を手で押さえた。ヤバい。視界が滲む。

未来は、変わり始めてる。


「まだ『揺らいでいる状態』ですけどね。

 それはマチさん、あなたの存在が証明している」

ジュドーは続けた。

「……このままで、本当にいいんですか?」


「気づいてたの?」

こいつの前で泣くのだけは絶対嫌だ。

深呼吸して、落ち着かせてから答えた。


「いいの。コマチが掴んだ未来が、

 アタシの未来になるんだから」


ツトムが生きている未来。NOVAが消える未来。

そんな世界が確定したなら

過去に逃げてきたアタシは、最初から存在しない。


つまり『マチ』は、全ての時間軸から消える。


でも、それでいい。

ツトムのこと。カナデさんのこと。

ずっとずっと、後悔してたから。


むっちゃんを全力で威嚇するコマチを見て、

アタシは小さく呟いた。


「頑張れ、コマチ。負けんなよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ