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まちまちリライト  作者: なつみかん


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19/25

Episode.19 むっちゃん

トントントントン……

リズムよくキャベツの千切りをこなすアタシを、

カナデさんが目をまん丸にして凝視してる。


「マチちゃんっ、千切り超うまくない!?

 いつそんな技、身につけたのよ!」

あれから一週間。ようやく学校も再開して、

ツトムも渋々登校していった。


今日はカナデさんも仕事がお休みで、

一緒にお昼ごはんを作っている。


「んー、ツトムと結婚してからかなぁ。

 あの頃はめっちゃ張り切ってたから」


「へぇー! 大したもんだよ。

 私なんかほら、中学でツトム産んだでしょ?

 だから、料理なんかテキトーに覚えちゃってさー」


「そんな、カナデさんの方がすごいよ!

 アタシなんてちょっと前まで学生だったんだよ?

 なのにツトムみたいな子、ちゃんと育てて」

実際、今のカナデさんは

アタシよりたった五つ年上なだけだ。


「まーねぇ。あのバカ、肩に風穴空けて帰ってきてさ。

 どうした?って聞いたら『なんでもねぇ』だって。

 親の気持ちも知らないんだからまったく!」

ゔっ……それ、アタシのせいだ……

罪悪感で、包丁を動かす手が一瞬止まる。


ジュドーが定期的に診てくれたおかげで

傷は塞がったけど、まだ腕が上がらない。

もう少しリハビリしないと。


カナデさんは、そんなアタシの背中をやんわり擦った。

「気にしなくていいよ。

 アンタのために身体張ったんでしょ?」


「……う、うん」

やっぱり、この人はなんでもお見通しなんだなぁ。


「だったら母親冥利に尽きるじゃん!

 好きな女も守れないようじゃウチの息子じゃないね!」

バンバンバン、と背中を叩く。

ちょ、包丁持ってるから! てか、好きな女って!


……でも、アタシは知ってる。

未来でアタシをかばってツトムが殺された時、

誰よりも泣いてたのは、カナデさんだった。


若い頃にツトムを産んで、

青春の全部を注ぎ込んで育てたカナデさんから、

その息子を奪った張本人。それがアタシだ。


「カナデさん……」


「ん?」


「アタシ、もう絶対っ、

 カナデさんに悲しい思いはさせないから」

きっと未来は変えられる。

あの時とは違う。ツトムは強くなってる。

コマチも全部知った上で前を向いてる。

それに、今はアタシもいる。


カナデさんは少しだけ目を細めた。

「……そうかい。マチちゃん、

 いい顔するようになったねぇ」


「そうかな?」


「最初に会った時はおどおどしてて、

 ちょっと目を離したら消えちゃいそうだったよ」

そう言って「ガハハ!」と豪快に笑う。


「…………そ、そんなわけないじゃん!

 カナデさんってば——」

ピピピッ。

デバイスが鋭く反応する。この感じは……っ!

アタシは包丁を置いて、即座にデバイスを展開した。


「ほー、未来だねぇ」

空中に浮かんだ薄緑のパネルを、

カナデさんが興味深そうに眺めてる。


質量座標の反応を確認する——やっぱり。学校付近。

アタシを追って、新しいタイムゲートが開いた。


「カナデさん、ごめん。ちょっと行かなきゃ」


「ん、行っといで」

理由も聞かずに送り出してくれる。

……アタシも、こんな大人になれるのかな。


「また今度、一緒に作ろうね」

アタシはそう言って、

手を振るカナデさんを背に玄関を飛び出した。


※ ※ ※


「オッス! ツトム、

 今日もコマっちゃん待ってんのか?」


裁縫部の前の廊下で壁に寄りかかってると、

タケシがひょこっと現れた。


「おぅ。悪いかよ」

左手をポケットに突っ込んだまま、俺は素っ気なく返す。


「いやいやいや! そうだよなー。

 あんな物騒な連中に

 コマっちゃんたちが狙われてるなんて、

 今でも信じらんねぇわ……」

前回のバトルを目撃したタケシには、

マチから口止めがかかってる。


まあ当然だ。

コマチは河川敷でダイナマイトぶっ放すし、

俺もマチも散々暴れて広場を穴だらけにした。


こんなのさすがにバレたら、コマチだって退学もんだ。

ぜってー表に出せねぇ。


「オメェこそ、散々だろ。

 この前もどっかに消されてたじゃねぇか」

また救助を忘れられて深夜に保護されたタケシ。

あれから、ちょっと様子がおかしい。

なんか急に坊さんみたいなこと言い出すし。


「いやー、気にすんなって。諸行無常だぜ、所詮」

ほらな。何言ってんだコイツ。どこへ向かってんだ。


そん時だった。

「ツトムきゅーん♡」

廊下の向こうから、やたら甘ったるい声が飛んできた。


……誰だ?

金髪ツインテール。制服はウチじゃない。

そして……胸、デカい。


ユッサユッサと揺らしながら

距離を詰めてきた女は、

俺の上がらない右腕をがしっと掴んで

——そのまま抱きついてきた。


「ちょっ……とっ、待て待て待て! 誰だテメェ!!」

突然の柔らかい感触にドギマギしつつ、

精一杯の威嚇を繰り出す。


しかし。

女は俺の威嚇をガン無視して、

下からニコッと覗き込んできた。

ヤバい……なんつーか、どストライクだ……

腕に胸をギューッと押し当てながら、女は言った。


「ツトムきゅん、可愛すぎじゃない!? むつみだよ!

 むっちゃんって呼んでくれると嬉しいな♡

 ってかね——」

俺を上目遣いで見て、唇を尖らせる。

「呼んでくれなきゃヤダ! ねっ?」


……なんで俺を知ってるんだ。

そもそもウチの制服ですらねぇのに。


まあ、そんなクソどうでもいい疑問は、

むっちゃんの甘ったるい声と柔らかな感触で、

綺麗さっぱり消し飛んでいった。

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