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まちまちリライト  作者: なつみかん


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18/25

Episode.18 もっと成長して

「うおぉぉぉぉ!!」

俺は河川敷の側道を、コマチの膝裏に左腕を回して

いわゆる「お姫様抱っこ」で爆走していた。


コマチは両手で俺の首にしがみついている。

右手が上がらねぇから片手のみで抱えてて、

バランスが悪いが仕方ねぇ。


「ひあぁぁぁっ! ツトムくん、

 早すぎるよー、スピード出しすぎーっ!」

そんなこと言ってる場合じゃねぇ!

コマチの走るのに合わせてたら日が暮れちまう。

俺は光る足に力を込めて猛ダッシュする。


「うっせー! マチが死んじまったら、どーする!」


「だからマチとあたしには、

 あの子たちそーゆーこと出来ないんだってー、

 だから少しスピード落としてぇぇぇっ!」

そう言いながら早すぎる速度に慌てたコマチは、

俺の首にしがみついた。


……ぷにっ。

コマチのほっぺが俺の首筋にくっつく。

……こいつ、こんなにやわらけえのか。


いやいやいやっ! 俺は硬派ヤンキーだぞ!

しかも今はマチの応戦に行くんだろ?!

無心だ! 無心になれ! 俺!


「ぬおぉぉぉぉっ!!」

俺はやらしい感情をごまかすように、

更に大地を踏みしめた。


「うひゃぁぁぁぁ!! なんでぇ!?

 なんで早くなるのぉぉぉ!!」

元の場所に戻ると、マチの背中に鉄野郎がいた。

つーか、あの硬ぇデブはどうした?!


でも今はそんなこと気にしてる場合じゃねぇ!

俺はコマチを河川敷の側道で降ろし、

飛び降りるように広場まで駆け下りる。


「マチィィ! あぶねぇ! どけぇぇ!!」


「へ? ツトム?」

俺を見たマチは驚いたように、

ピョンと鉄野郎から離れる。


俺は駆け下りた勢いのまま左の拳に力を込める。


「おぅらぁ! いっぺん死ねぇぇぇ!!」


――キィィィィン!!

拳が鉄野郎の顔の正面を捉える。

触れると同時に眩い閃光と爆風が吹き荒れ、

鉄野郎の上半身は跡形もなくふっ飛んだ。


「光子力人間……ですか。素晴らしい。

 マチさん、またとんでもない発明を……

 相変わらずのマッドサイエンティストですね」

お? ユウヤもいたのか、何しに来たんだ?


「誰がマッドよ! アンタにだけは言われたくないわ!

 それにツトムはたまたまよ!

 作ったとかじゃないからっ」

すかさずマチが反論しながら

俺に向き直りデバイスを叩く。


「なるほど……自覚はないんですね」

顎を触りながらユウヤが呟く。


「ツトム、もうスイッチ切っていいよ。

 質量も解除するから」

舌打ちでユウヤをシカトして、俺に向かいタップする。


「おぉう……」

促されるまま俺はスイッチを切る。

どっと疲れが戻ってきた。


「こいつもう、動かなくなったから

 壊さなくて良かったのに」

マチはギアナイトを見て呆れながら言う。


「そうなんか?」

なんだか良く分からねぇが、

マチたちもこいつをやっつけてたのか。

俺は疲労で重くなった身体を休ませようと

地面にドカッと座った。


「そうよぉ、またメモリ調べたかったのに。

 まぁ別にいいけどさ」


「あんたもあっちの飛行タイプ倒したんでしょ?

 相性悪いだろうに、よく勝てたね」


「あぁ、それがよ、コマチのおかげでな」


「コマチ?」

マチが不思議そうな顔で俺を見ると、

やっと追いついて息を切らせながらコマチが側にくる。


「はぁはぁ……やっと追いついた……マチもおつかれさま」


「コマチ、どうしてここに? もう大丈夫なの?」

マチが心配そうにコマチに近づく。


「えぇ? ユウヤさんもいる。こんにちは」

コマチが挨拶するとユウヤも爽やかに手を振った。


「ねぇ、マチ、また証拠隠滅で

 この子溶かしちゃうんだよね?」

胸部から上をなくした鉄野郎を見てコマチが尋ねる。


「えぇ、この時代には残しておけないし……」

「あたしにやらせて」

コマチはそういってスマホに素早く入力する。

そして鉄野郎を撮影。


カシャッ。

「量子リライト……揺らぎデリート」

鉄野郎の輪郭が陽炎のように激しくブレる。

次の瞬間、空間のモザイクごと、一瞬のうちに消えた。


「コマチ……あなた……」

マチが困惑してコマチを見る。


ユウヤは離れたところから

「ほぅ……」と感心して見ていた。


「あたしね、未来を怖がるのを辞めたんだ」

スマホを握りしめ、コマチがマチに向き直る。

「あたしの科学が未来を壊しちゃうなら、

 もっと成長して、そんな未来も書き換えたい」

「……ダメ?」マチを覗き込むように言った。


こいつら、相変わらず未来だなんだと

スケールのデケェ話してるよな。

とりあえず気に入らねぇやつが来たら

一発ぶん殴っとけばいいって話なのによ。


「うん……そうだね。きっとそれが正解だよ」

マチが少し寂しそうに笑って言う。


「とてもいい考えだと思います。

 コマチさん、僕も陰ながら応援しますよ」

ユウヤが嬉しそうに話す。

コイツ、マジで大学に行って真面目になったのか?

去年まで「チョリーッス」とか言ってたのにな。


「はい、また勉強教えてくださいね」

コマチが笑顔で言う。……まぁ勉強なら仕方ねぇ。

俺はぜってー混ざりたくねぇし。


「コマチ、コイツはあんまり信用しないほうがいいよ」

嫌そうな顔でマチが言う。

いいぞ、マチもっと言ってやれ。


「大丈夫だよ、そんなに悪い人に見えないし。

 マチも今度こそちゃんと教えてよね」

コマチがそういうとマチも苦笑いしながら了承した。


……あれ?

「いてて……」急に肩が痛みだした。


「そういえばツトムくん、肩ケガしてたじゃん!

 ……大丈夫?」

コマチが駆け寄って俺の肩を触る。


「さっきまでは大丈夫だったけどよぉ。

 急にジンジン痛くなってきちまった」


「あー、リカバリー切れてきちゃったのね。

 ……どうしようかなー?」

マチが真剣な顔で腕を組む。つーか何を悩んでやがる。


「……どうしようって病院行くんだろ?」


「だって、そんな熱線で炭素化して穴空くとか、

 どうやって説明すんのよ。最悪今度こそ警察行きよ」


「おいおい、マジかよ!

 それじゃ俺の肩は穴空いたままか?!」

どーすんだよ?! 俺の右肩!


「僕が治療しましょうか?」

ユウヤが怪しげに近づいてきて俺の肩を覗き込む。


「チャラ男のテメェに、

 そんなことできるわけねぇだろ!」


「あんた医者の資格なんかあるの?」

マチがジト目でユウヤを睨みつけるが、

ユウヤは平然と微笑み返した。


「ないですけど……僕、ギアナイトの開発者ですよ。

 人体には結構詳しいつもりです。

 ついでにちょっとだけ改造を……」

微笑みながら言っているが……改造?

おい、今サラッととんでもねぇこと言わなかったか?


「ユウヤさん……改造するなら、カッコよくしてね」

コマチまで! 何言ってやがる?! アニメの観すぎだろ!

まともな人間はここにいねぇのかっ?!


「それで手を打つしかないか……

 じゃあツトムの家に行くわよ」


「マチ、テメェまで! 裏切りやがったな!!」


「他に方法もないでしょ、ほらっさっさと帰る」


そういって俺以外の3人は帰りの道を歩き出した。

……仕方ねぇ。もうどうにでもなれ。


日の暮れ始めた黄昏時、

俺は疲れた身体を起こし、

ジンジンと痛む肩を抑えて後に続いた。


※ ※ ※


タケシは量子の海の中にいた。

「いた」というのは正確ではない。

まだ「観測」されていないからだ。


「色即是空」、「空即是色」……

仏法のそんな言葉が頭をよぎる。

そう、タケシは「無我の境地」へと達しようとしていた。


これが真理なのか……全ては「無」……そして「揺らぎ」。


タケシも世界も……

この量子の海の中では、

全て等しく揺らぎの中で漂っていた。


しかし、ひとつだけ問題もある。

「ある」というのも……(以下略)


とにかく、このままでは

タケシのエントロピーが離散してしまう。


誰か。誰か、早く「観測」して欲しい。

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