母を想ふ心の花 1
エンネアさんの名前盛大にミスって設定修整する前の名前にしてたのでこれからエンネアさんはニュームーンさんになります
あと物語の設定の関係でアラリザベスもメアリー・スチュワードになり、色々と会話が変更されているので前話から読むことを推奨します
変更点ばかりですいません
作者の力が至らないばかりに……
アヤさんの案内に従い、ズンズンと森を進んでいく。いやほんとどうやって見つけたんだよ。斥候顔負けの実力じゃねぇか。
「うーん、月が綺麗だねぇ」
ニュームーンがそう言った。
その言葉につられて俺も空を見上げる。
「おお、確かにな。すごいよな、アエメモって。俺らの視力めちゃくちゃ高くされてるけどさ、あんな細かく凹凸表現しないだろ」
「そうだよねー。にしてもお姉さん感動しちゃった、ルアンくんに月を綺麗だと思う心があったなんて」
「それを言ったらお前にその心があることの方が感動だよ。お前三つ巴にいる時毎夜誰か1人は殺してるだろ。お前の見る月は赤い月だけだと思ってたよ」
「ちょっと流石に失礼すぎない?」
「事実だ」
「いや言い返せないのが辛いよ」
「何言ってるんだよ2人とも」
「というかさ、一つ気になってたけどニュームーンってもしかしなくてもフルムーンだよな?」
「あ、バレてないと思ってた」
「いや流石に分かる。俺を押し退けて3位になられたお方なんでね」
「いやあ、お前と3位争いして最後勝った理由が、お前が石につまづいてバランス崩したからだなんて、ぷっ、プププ」
「腹たつなぁおい」
ニュームーンもといフルムーン、こいつとの縁はメルヘン社のゲームである3枚のお札というゲームである。このゲームの内容を簡単に説明する。
まずこのゲームは3v3のバトルロイヤル形式である。ゲーム開始の時点で山姥か坊主のどちらかの陣営を選択する。ゲーム開始の合図は坊主陣営の誰か1人が山姥陣営のスタート地点である和室の襖を開くこと。そして山姥陣営は坊主陣営を殲滅することで勝利、坊主は山の麓にある寺の門を生存者全員が3回叩くことでクリアとなる。ここで坊主側が圧倒的不利であるのが、門を3回叩けたものは全て寺の中へ転送されること。つまり1人が条件を達成した時点で坊主陣営は1人分の戦力を失うことになる。
山姥側の持っている能力は、「変化」「巨大化」「極小化」である。山姥側はこの能力を駆使して坊主を追うことになる。坊主側の能力は「お札」「栗」である。このゲームでは、お札はタロットのようになっており、毎回ランダムな効果が現れる。ただしそれは事前に確認可能であることが救いだ。「栗」は、ステージである山に落ちている栗を食べることで攻撃3回無効(30秒間)、移動速度上昇(3分)、筋力上昇(3分)が付与される。
このゲームの特徴は毎回のマッチが行われるたびにステージである山がランダム生成されること。基本となる形に変化はないものの、隠れた洞窟など侮れない要素が多くある。そして何よりのキラー要素が「極大始祖山姥」と「三札権大僧正」の存在である。これはごく稀に出現するボスエネミー的なもので、それぞれが山姥陣営か坊主陣営に味方する。出現するのはステージの両側であり、山姥は坊主が多い場所に、大僧正は山姥が多い場所に出現し、全力でその陣営を削っていくのだ。
まあ長々と語ったが、要するにこのゲームで奇跡的な確率を引きまくった結果こいつとフレンドになり、リアルでもアドレスを交換するような仲になったのである。ちなみにこいつも三つ巴をプレイしている。おそらくメアリーに無自覚に支配されていることであろう。
そんな事を考えつつ歩いていると。
「ここ、ここです。ここが怪しいです」
なーるほどね、確かに怪しい。ここだけ不自然に草が覆っているし……
「ビンゴね」
「うん、そうみたいだね」
ガサガサ、と草をのけてゆく。
「はー、ゲームだから別に疲れる訳じゃないけど毎回この作業をやらなきゃいけないのは勘弁してほしいわー」
愚痴をこぼしつつ、妙に小慣れた手際で草を取り払ってゆくメアリー。そうして見えたのは……扉?
「よし、じゃああとはこれを開けば隠しエリアね」
「よし、じゃあ入って見ようぜ」
そう言って俺が一番乗りで入ろうとすると。
「あっだめ!!そんな簡単に入っていい場所じゃないの!あと一番乗りは絶対私!!」
「えー、ケチ」
「なんとでも言っときなよね!でもこれだけは譲れないの」
「何か深刻な事情でも?」
「そうとも言う」
「は?」
「君には理解できなかったかぁ。ごめんね?難しいこと言っちゃって。その小さな頭でわかることなんてほんのちょっぴりだもんね?」
「おう、喧嘩売ってるなら買ってやるよ。値段言ってみろ、札束を白手袋の代わりに叩きつけてやる」
「5000万で」
「ごめんちょっと無理かも。500円に負けてくんね?」
「あー、ならいいよ。他の人に売るし。ニュームーン、買う?今なら安くしとくよ?」
「具体的に何円?」
「300円」
「ちょっといいですかそれ俺に買わせてください」
「ごめんもう君には売れないんだー」
「なんでだよ!」
「いやだって……
……
「全くどうしてくれるのさ。ルアンくんのせいで無駄な時間を使っちゃったじゃない」
「お前のせいだ」
「はいはい、2人ともそれぐらいにしな?」
「へーい。ま、仕方なくな?」
「まあ今回はニュームーンに免じて勘弁してあげるよ」
「ああん!?お前喧嘩売ってんのか?!」
「買う?」
「おうよ「だーかーら!やめろって言った直後に喧嘩するんじゃない!!」
「えーでも喧嘩を買おうとしたのはあっち「売ったのはお前だ!」
「まあまあそんな怒らずに「原因はお前だ!」
「はあ、はあ、なんでゲーム内でもこんなに苦労しなきゃいけないんだ。メアリーもさっさとやっちゃいなよ」
「お前も苦労してんだな……現実の苦労もまあ頑張れ」
「よーし、それじゃあやるとしようか!」
「具体的には?」
「んー、実はね、このエリア放っておくとどんどんアンデット系のモンスターで溢れかえっちゃうんだ。だから定期的に掃除してる訳。守りたいからね、この場所は」
「ずっと気になってたんだけどお前ずっとこの隠しエリアに来た事があるような感じで話してるよな。ここにはいっつも来てるって事だよな?」
「うん、そうだよ」
「ならなんでアヤさんに探させてるんだ?」
「んー、実はね、このエリア人が立ち入るごとに周りが変化するというか、隠蔽されるというか。とにかくここに来るたびに探さないと見つからない仕組みになってるんだよね」
「ふーん、そうなんだな」
「そうなんですよ。毎回大変だよ」
「苦労してるのはアヤちゃんだけじゃないか?(ボソッ」
「何?」
「いやなんでもないよ」
「ならいいわ。それじゃあ掃除するとしようか!」
そう言ってメアリーは少し扉を開く。そしてその隙間から魔法を発する。
「【聖域】続いて【聖域に入るべからず】」
奴が魔法を使用すると、扉の奥が光り輝く。続いてなんとも言えない、それこそゾンビ映画か何かでゾンビ側が上げる痛みに苦しむ悲鳴のような唸り声が聞こえ、光が収まる。
「さーて、お仕事完了!」
「おー、ちなみにその魔法の詳細を教えてくれたり」
「いいよ。今は気分がいいから。【聖域】は名前の通りに「聖域」という区間を設定する魔法だよ。聖域自体にもアンデット特攻の効果はあるけど、それは弱いし本命じゃない。聖域を設定すると、その聖域に何か一つ魔法を込めることができる。今回で言うと【聖域に入るべからず】だね。アディトゥムの効果は「アンデットに対して、絶対に聖域に入れないようにバリアを貼り、聖域内にアンデットが侵入した場合には即座に浄化する」だよ。まあ何人たりとも入場させたくないんだったら【立ち入り禁止】を使えばいいんだけど、私がいて欲しくないのはアンデット、というかアンデットの範囲に悪意を持つものも含まれてるからそういう人たちだけだしね」
「じゃあ【火球】とかも付与できんの?」
「聖域に火の球を付与したとしてどんな効果を期待できそう?(呆れ顔)」
「あ、暖かくなるとか?そうだ、侵入者に対して火球を放つとか!」
「バカなの?「侵入者に対して」って言う条件も勝手に聖域側でやってるんじゃなくて、付与する魔法自体にそう言う性質を組み込まないといけないの!だから火球なんて付与したところで何も起こらないし、聖域の無駄遣いになるって訳」
「なーるほど。それで中は見せてくれないんで?」
「入っていいよ」
「失礼、っと。なるほど、確かにすごいな」
そこに広がっていたのは、筆舌に尽くしがたい、現世のものとは思えぬような光景であった。そこかしこに、種類も何も関係なく、ただただ自身の存在を誇るように咲き乱れる花たち。全ての花が平等に、そしてそれぞれの花が一番に美しく、咲き誇る草原。その草原の中央に立つ小さな小屋、さらさらと流れる小川。全てがこの光景を引き立てるだけに生まれてきたような、そんな光景であった。だが、そこで圧倒的に絶対数が多かった花が「マリーゴールド」であった。
ふと横を見る。いつもこの場所へ来ている彼女がどんな顔をするのか気になったから。軽い思いで見てしまったのが間違いだったのかもしれない。メアリーの、橘 冴という女性のその横顔は、普段のような、とてもではないが2つの国家を掌握した人物のものとは思えなかった。この風景に見惚れているような、悲しげなような。
「どうしたの?私が美人すぎて見惚れてたのかな?そうだよねぇ、私のこのリアルの顔だけどやっぱり見惚れちゃうよね。大丈夫、私に見惚れてしまうのは世の男性の性だから」
それは、思いを隠すための強がりのようで。
「強がんなよ」
いつも中指を立て合っている仲だとしても、見過ごせなかった。
・メルヘン社
主に童話や寓話をもとにしたゲームを発売している。猿蟹合戦・極(18話)を発売しているのもこの会社である。この会社は一つの童話につき複数世代を対象としたゲームを制作しており、全世代が楽しめる内容であるため評判はとても良い。特に育児世代は、子供にも安心してプレイさせることができ、成長に合わせて楽しめるのでありがたい、と評判である。




