皇いなる位は誰の手に 3
◇◇◇
皇居にて
「戦況は!?」
「まずいですな、これではあと一刻もてばいい方でしょうか」
「くそっ!鴻め、大砲なんぞ使いよって!仕方あるまい、アームストロング砲は!?」
「今はしよう不可でございます!!」
「何故に!?まあしかし仕方あるまい、代わりにガトリング砲を用意せよ!!」
「はっ!」
「ふんっ、流石に鴻もガトリング砲はわからんだろう」
天皇、さらには家臣の誰1人として気づいていなかった、気付けなくても無理はなかった、一つの黒い影がガトリング砲を用意しているところを見ていることに…。
◇◇◇
一つ、このゲームに実装された天皇率いる朝廷は決してNPCなどではない。正体はこのゲームを開発した会社の社長及び幹部軍団だった。そして、幹部であるからこそ思い違いをしていた。決して怠慢などではない、しかし一般社員と幹部社員では入手できる情報が違いすぎた。否、入手しようとする情報が違いすぎた。一般社員たちは常に客の意見を重要視していた、だからこそ客がどのようなプレイをしているかが分かっていた。しかし、幹部社員たちは客の評価を重要視していた、だから客がどの様なプレイをしていたかがわからなかった。
幹部たちは気づいていないかも知れないが、このゲームでは下剋上をするにも城を経営するにもそれ相応の知識が必要であった、ゲームが好きなだけで勉強が一切できない人間が簡単に大名、大大名、ひいては将軍になるなど夢のまた夢、いささか難しすぎた。だからこそ、このゲームで勝ちたいと思う者たちは躍起になって歴史、特に戦国から幕末についての勉強を始めた。だからもちろん、武器の特徴なんて大雑把な大きさを聞いただけでも10回中8回くらいは当たり前のように当ててくる。
結論を言おう、天皇たちの失敗は忍びを半径1キロ以内に入れたことだ。忍者は視力がとてもいい。
◇◇◇
「報告!天皇軍が何やら怪しげな武器の様なものを準備しているとの情報を忍びが!」
「何ぃ!?」
「大きさはどの程度だ?」
「小型の神輿や山車ほどの大きさかと思われます!」
「ふーむ、ならガトリング砲あたりか…?」
「ガトリング砲と来ましたか…。いかがなされますか?」
「一旦兵たちには戦場を引かせよ。その上で大砲でまとめて吹き飛ばす」
「はっ!ちなみに大砲はどの程度打ちますか?」
「天皇軍を殲滅し切るまで、もしくは私がやめろと言うまでだ」
「はっ!!」
クックック、ガトリング砲程度なら対応は容易いのだよ天皇どの…。ガトリング砲は突如として現れた時が一番困る、こっちだって兵を肉壁にできるほど潤ってないんでね。あちらにガトリング砲があることがわかれば一旦兵を引かせ、チクチクと奇襲する方が効果的なのだ。ガトリング砲は小回りが効かないからな。警備が手薄なところや夜間などに攻めれば楽勝…ではないけどやり易くはなるってもんだ。あとは大砲をぶちかますこと。
◇◇◇
予想通り天皇軍はガトリング砲を出してきた、だけどもう後の祭りだ。いや流石にうちの鉄砲隊のエース、橋下くんがガトリング砲を動かす奴らをヘッショで7枚抜きしてたのはビビったけど。いやそんな強かったっけ橋下くん。俺すぐに射抜かれそうで怖いんだけど。
おっとガトリング砲の球がこっちにまで飛んできた。危ないね、よいこはちゃんと周りを見てから使おうね。
さて、でもそろそろ終わりでいいだろう。
「伝書鳩、この文を天皇のところへ」
「クルックー」
◇◇◇
「しゃ、陛下!これ以上はもう限界です…」
「何!?ガトリング砲を使ったのだろう!?」
「なぜかガトリング砲を出した時にはすでに兵が引いていて、代わりに大砲を撃ち込まれ続けていまして…」
「っぐ、しかし他にもやり口はなかったのか!?」
「いえ、手練れの狙撃兵がいたようで…開けた場所に出ると十中八九狙い撃ちにされ…」
「くそっ、アームストロング砲があれば……っ!!」
「陛下!幕府のものと思われる伝書鳩がこの手紙を!!」
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とっとと降伏しな天皇
そうしたら命だけは助けてやるよ
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「くそっ、ロールプレイくらいしやがれっ!!」
「いやそこではないでしょう!?降伏しろと書いてありますが!?」
「くっ、誰が降伏など…」
「しかしそうしなければ今度は庶民からのスタートですよ!?」
「くっ、ぬ、ぐっ、……っ!!降伏、しよう」
「え?」
「我々は降伏する!」
「本当によろしいので?」
「致し方あるまい……っ!」
◇◇◇
「お、あれ白旗じゃね?」
「おお、その様ですな」
「つまりは勝ったってことだよな?」
『皇位強奪イベント終了!』
『天皇側の降伏により鳳凰幕府の勝利が決定いたしました』
『天皇は速やかに幕府に投降し、三種の神器を渡してください』
『また、皇座のありかは以下の通りです』
『(皇居のマップ)』
アナウンスが肯定してくれた。
さぁて、早速三種の神器を受け取るとしようかのう。
「これらが三種の神器だ」
「おお、ご苦労ご苦労。それじゃあ捕虜待遇で馬車に乗せといて」
「はっ」
さて、あとは皇座に座れば晴れて天皇になれる。というか今更だけど天皇の位を奪えるならそれって普通に将軍と変わり無いのでは?と思ったが考えるのをやめる。
「それにしても広いな皇居…」
「馬車に乗られますか?」
「いやいい、どうせなら歩いて行って見ようじゃないか」
とにかくだだっ広い。それでもめちゃくちゃ綺麗に道とか木が整備されてるのは職人の凄さを感じさせられる。現実の人たちも大変なんだろうなぁ。働いてくれているみなさんに感謝。とは言っても俺の家に木があるわけでもないから本当に関わりないんだけどね。まあ観光で寺社仏閣とかに立ち寄ったら凄さを実感するけども。
歩くこと数十分…。
ああ、俺は後悔している、ものすごく後悔している。くっそ長いんだけど!?どうしてくれるのよ!アテクシは天皇ですわよ?こんなに長いなら言いなさいよ!全くもう。だが自分で歩くと行ってしまった手前今更馬車に乗りたいとも言えず……。
20分後…
「よ、ようやくついたぁ」
「長かったですな、しかしあと少しで将軍様は天皇になられるのですぞ?」
「ああ、そうだな。あと少しだ」
でも流石に疲れた(精神的に)。やっぱりただ歩くだけってのも体に響いてくるんだよ。
「ちょっとだけ休憩しようか」
ちょうど手頃な岩が。
そしてよっこらせ、と腰を下ろしかけた瞬間。
「報告!橘幕府がこちらへ向かってきているとの報告が!」
「えーと、立花幕府だよね?橘幕府じゃなくて」
「いえ、橘の方です」
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!なんであいつがよりにもよってこんなタイミングで来るんだよォォォォォォ!!いやあのクソアマだからこそか……?いやでも本当に最悪なんだけど!?」
「ど、どうされますか?」
「もうこうなったら全力で皇座まで走って座る!行くぞぉー!!」
「おぉー!」
このゲームでランキングトップ200くらいに入った人たちはみんな謎に社会の歴史、その中でも戦国から幕末にかけてだけはやたら成績が良かったそうな(主人公含む)




