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彼女の変化

現在の時刻は17時。始まりの19時までは、まだ2時間もあった。そこで、散歩がてら夕陽を見ながら海岸を歩くことにした。夕方ということもあり、海水浴に来ていた人たちは殆んどいなくなっていた。あれだけ人混みが嫌だと思っていた昼間であったが、誰もいなくなってしまった海岸は何だか物寂しく感じられた。結衣は私と手を繋ぎ、黙って私の隣を歩いていた。私は夕陽に照らされた結衣に見とれてしまい、何度も何度も繰り返し見ていた。


「――――」


すると私の視線に気付いたのだろうか? 急に立ち止まると私の顔を不思議そうに見ていた。


「なっ、何でもありませんよ。さぁ、この辺りに座りましょう」


「――――」


私は、カバンに入れて持ってきた畳一畳分のレジャーシートを砂の上に敷いて、結衣を座らせた。


「キレイですね」


「――――」


「夕陽が」


「――――」


「うっ、嘘です。本当は結衣がキレイで素敵だと思っていました」


「――――」


「本当ですよ。あらためて惚れ直しました」


「――――」


「結衣――」


私は、あの日から1度もすることのなかったキスをしようと顔を近付けた。結衣の息づかいを感じた。でも、あと数センチのところで動けなくなってしまった。


「また来年の夏もここに来ましょう。夏祭りの日に合わせて。結衣が望むならお母さんと弟の正志くんも一緒に連れて来ましょう。きっと楽しい旅行になるんでしょうね」


「――――」


「イッパイ思い出を作りましょう」


結衣から顔を離した私は、夕陽を見ながら笑顔でそう言った。


えっ!?


横を向くと結衣の顔が目の前にあった。そして、数秒後には結衣の唇は私の唇と重なり合っていた。信じられない――でも、間違いなく結衣が自分の意思でそうしてきた。


「結衣――」


「――――」


唇をゆっくり離した結衣を見ると、夕陽に照らされているせいなのか、頬が真っ赤に染まっていた。


「結衣、私はあなたを愛しています」


再び私と結衣は口づけを交わした。今度は結衣からでなく臆病な私の方から――。


「結衣、今のあなたは、私のことをどう思っているんですか? 恋人? 友達? 家族? もしも恋人だと思ってくれているなら何かサインをして下さい。例えば、額にキスをするとか――」


「――――」


「すっ、すいません。つまらないことを言ってしまって。もうそろそろ神社に行きましょう。盆踊りが始まってしまいます」


「――――」


そして私たちは100段近くある石段を20分近くかけて上り終えると、ようやく山頂にある神社に辿り着いた。それからは、露店商で買った〝たこ焼き〟や〝チョコバナナ〟や〝かき氷〟を食べたり、〝金魚すくい〟をして楽しんだ。19時を過ぎると盆踊りが始まったので、櫓が立っている広場に行き、輪の中に入って踊り始めた。結衣は踊りはしないが、踊っている私のうしろをついて来ていた。私は楽しくなり結衣の手を取って一緒になって踊った。何だかわからないが、とても可笑しく久々に思い切り笑った。


ピュューーードーーーン


ドドドドドドッーー―


夏の夜空にあがる花火が、夏祭りに来ている人、盆踊りをする人、それを見て楽しんでいる人を、より一層盛り上げ、そして笑顔にしてくれた。花火があがると結衣は、その場に立ち尽くし、花火を初めて見た子供のように目をキラキラと輝かせていた。私は結衣の肩を抱きながら盆踊りの輪から離れると、体を寄せ合って花火を眺めた。

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