新たな関係
「そうですか――。それなら先生には感謝しなきゃいけませんね。私と結衣を結び付けてくれたんですから」
「でも今思えば本当に良かったのか疑問に思うわ。結果的に2人は幸せとは程遠い状況な訳だし――」
そう言い終えた先生は、ジョッキに残っていたビールを一気に飲み干した。そして、再び生ビールを大ジョッキで注文していた。
「そんなことありません。少なくとも私は幸せです。大好きな結衣と一緒にいられるんですから。だから先生には心から感謝しています」
「ありがとう。でもね、私には2人を引き合わせてしまった責任があるから心配なのよ。あなたは精神科医だからわかっていると思うけど、感情のない相手と一緒にいるのがどんなに大変か――。相手の気持ちを確かめることも出来ないし、自分の気持ちを受け止めてくれることもないのよ。ツラすぎるわ」
「周りの人から見ればそう見えるのかもしれません。でも、そんなことはないんです。確かに話しかけても返ってこないし、怒らせようにも怒らないし、嫉妬させようにも嫉妬などしません。でも、私には見えるんです。話しかければ真っ直ぐに私を見て笑顔で応えてくれる結衣が――不安にさせると不機嫌になって怒り出す結衣が――私が他の女性を見てたり話したりすると嫉妬して悲しそうな顔をする結衣が――」
「でもそれは、あなたが見てきた過去の結衣ちゃんを想像してのことでしょ?」
「それもありますけど、それだけじゃないんです。愛し合い、心と心で繋がっている2人だから感じる何かがあるんです」
「そぉ」
先生は1度だけ私を見ると、普段見たことがないような真剣な顔でビールを飲み始めた。




