新たな関係
それから私は、槇村先生に指定されていた待ち合わせ場所の居酒屋大河にやって来た。先生が来るまで、30分以上はかかりそうなので先に注文をして飲み始めた。
「上城くん、お待たせ! 私から誘っておいて、こんなに待たせちゃって。ホントごめん!」
飲み始めてから40分が過ぎた頃、先生がようやくやって来た。
「いえ、大丈夫です。お先に飲ませてもってましたから。それより忙しかったんですか?」
「書類の整理やら何やらで、ここ数日は夜中まで残業よ」
先生にしては珍しく、疲れが顔に出ていた。
「それはお疲れ様でした。私に出来ることがあれば代わってあげたい気持ちは山々ですが、私では先生の仕事の代わりは務まりません。本当にすいません」
「ありがとう。その気持ちだけで十分よ」
「はい」
「大将! 大生1つちょ~だ~い」
「あいよ~。先生今日は一段とキレイだね~」「大将、失礼なこと言わないで! 私は365日毎日キレイなの!」
「そうだったなぁ。わりぃわりぃ」
相変わらずここに来ると、飲み屋の粋な大将と常連客の先生の掛け合いが聞けて明るい気持ちになる。
「それより、こんな大変な時に、わざわざ誘ってくれるなんて何か理由でも?」
「私のストレス解消と上城くんの彼女のことで話があったのよ」
先生は私の表情を確かめながら、ビールを飲んでいた。
「私も結衣のことで先生に話があります。今日先生のお誘いにのったのも、それを確かめるためです」
「なるほどねぇ。どおりで今日は簡単に誘えた訳か――。結衣ちゃんのお母さんから聞いたのね?」
「はい。先生、どうしっ――」
「守秘義務よ。例え同じ職場の人間でも話す訳にはいかないわ!」
「それはわかっています。私が知りたいのは私と結衣が出逢ったのは本当に偶然だったのかということです」
「どういうこと?」
先生の表情が一瞬変わったのを私は見逃さなかった。たぶん何かを知っているのであろう。
「つまり私と結衣は、誰かの手によって引き合わされた」
「その誰かって、私って言いたいの? ちょっと待って。そんなこと私に出来る訳ないでしょ! 全く接点のない上城くんと結衣ちゃんの2人を、どうやって公園で引き合わせるっていうの?」
「出来ると思います」
「私は神様でも魔法使いでもないのよ。そんなの絶対無理よ!」
「私と結衣をよく知る先生なら可能です。私が月末になると毎日のように夜遅くまで仕事をすること。そして、そのせいで昼食がコンビニのものにならざる得なかったことを。それにスリの事件があったあの日、先生は私に公園で昼食をするように勧めました」
「誤解よ」
「私の行動パターンを知り尽くした先生が結衣に、どのように言ったのかはわかりませんが、あの公園で絵を描くように仕組んだ」
「――――」
「あとは、2人が公園で上手く出逢い接触することを願った」
「そっ、そんな訳ないでしょ!」
「先生、本当のことを教えて下さい」
私は自分の推測が正しいことを確信していた。「わっ、わかったわよ。認めるわ! 全てあなたの想像通りよ」




