新たな関係
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「あれ? ここって――。すいませ~ん」
「は~い。いらっしゃいまっ――あっ!?」
「日比野さん、ここで何を?」
「上城くん――」
「もしかして、ペットショップでアルバイトしているんですか?」
「どうしてここが?」
「鈴木千夏さんに聞きました。〝ひかりを危険な輩から救ってあげて〟って言われて。まさかこんなところにいたなんて想定外でした」
「ヴヴゥゥゥ――ワンワン!」
「ワンワンワン!」
「私、何かやたらと吠えられていませんか?」
「いつもはおとなしいのに今日はどうしたんだろ? やっぱり動物にも良い人間か悪い人間かは、わかるものなのね」
「私は悪い人間だと思われたんでしょうか?」
「当然よ。私のことを不良とか言って、傷つけたんだから――」
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「今日も図書室には来ませんでしたね?」
「バイト先の前で待ち伏せなんて趣味悪いわよ!」
「急に来なくなるから、気になって勉強に身が入らないんです」
「私には関係ないわ!」
「もう来ないんですか?」
「どうして行かなきゃいけないの?」
「それならどうして私が勉強している図書室に来て、いつも私の隣に座っていたんですか?」
「いたいからいただけよ。何か文句ある?」
「もちろんありますよ」
「何よ? 言ってみなさいよ!」
「突然私の前に現れたと思ったら、私の世界にズケズケと入り込んで来て――気付いたら傍にいるのが普通になっていて――ちょっとしたイザコザで誤解されたと思ったら、突然私の前から消えてしまって――」
「何が言いたいのか全然わかんないんだけど?」
「つまりですね。勝手に私の前からいなくならないで下さい! 気になって勉強に手がつけられないし、毎晩胸の辺りが苦しくて眠れないんです」
「そんなの私のせいじゃないもん。私があなたの恋人ならまだしも、付き合ってる訳でも何でもないじゃない。私に言われても困るんだけど――」
「それなら、私と付き合って恋人になってもらえませんか?」
「嫌よ」
「どうしてですか?」
「絶対後悔したって思うに決まってるもん」
「もう既に後悔していますよ。あなたに出逢うまで無駄に17年も生きて来てしまったことを――」§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§
「先輩、大丈夫ですか?」
「えっ、何がですか?」
「さっきから、ボォーっとしてましたよ」
ふと我にかえると、私の顔を下から覗き込んでいる尾崎さんの姿があった。
「いえ、何でもありません。昔のことを思い出していただけです」
「昔のこと? 昔のことって何ですか?」
「人様に話すような、特別面白い話ではありませんよ」
「もしかして――」
「〝もしかして〟何ですか?」
「いえっ、何でもないです」
尾崎さんにしては珍しく言葉をつまらせ、私から目を反らした。
「それなら私は帰ります」
「ひっ、日比野ひかりさんですか?」
「どうしてその名前を?」
「槇村先生が酔った勢いで話してくれました」
「――――」
「すいません。聞くつもりはなかったんですけど――」
尾崎さんは申し訳なさそうに、潤んだ目で私を見ていた。
「別に隠していた訳ではありませんし、聞かれなかったから話さなかっただけなので気にしないで下さい」
「先輩、私気になります。日比野ひかりさんのこと――」
「どうしてそんなに気になるんですか?」
「だって、先生は先輩と日比野さんが付き合っていたことまでしか話してくれなかったんです。先輩は、日比野さんと別れてから誰とも付き合わなかったんでしょ?」
「えぇ、まぁ」
「そんなに忘れられないくらい好きだったんですか?」
「そうですね、確かにその通りかもしれません」
「そんなに好きなのにどうして別れたんですか?」
「今度、お酒を飲みながらゆっくり話しますよ。尾崎さんが感動するような話ではないと思いますが」
「やったぁ。ちょー嬉しい」
尾崎さんは、小さくガッツポーズをしていた。
「でも、本当に聞いても大丈夫なんですか?」
「はい、構いませんよ」




