たとえ君が
付き合い始めて多くのことが変わったが、変わらないこともあった。それは昼になれば公園のいつものベンチで一緒にお昼を食べ、他愛もないお喋りをするということ。但し、その中でも変化はあった。それは今まで1人で行っていたコンビニへの買い物を、2人で一緒に行くようになったこと。それに時々だが、結衣は苦手だと言っていた料理をして、お弁当を持ってきてくれた。見た目はキレイとは言えないし、味もすごく美味しいとは言えないけど、結衣が私のために作ってきてくれたというその気持ちが嬉しくてたまらなかった。
また、休日は朝から晩までずっと一緒に過ごした。どこに行く訳でもなく、私のマンションで借りてきたDVDを見たり、2人で料理をしたり、読みかけの小説を読んだりするなど、ありふれた休日を送っていた。せっかくの休日に家の中にずっといるのは勿体ないので、「どこかに出かけよう」と誘ってはみたが、結衣は「どこにも行きたくない。今はただ真一と一緒にいられればいい」と言って家の外に出ることは殆んどなかった。
「大学を卒業したら、色々やりたいことが沢山あるんだよね」
「どんなことですか?」
「まずは春になったら桜の名所に花見に行って、桜の木の下でお酒を飲みながらおいしいものをイッパイ食べるの」
「まさに花より団子ですね」
「別に、いいじゃん! それに天気が良い日は山にピクニックに行くのも良いなぁ」
「体力にはあまり自信が――」
「私と一緒なら地獄だろうが、どこだろうが行けるでしょ?」
「もっ、もちろんですよ」
「そして夏になったら海水浴に行って思いっきり日焼けをするの」
「あまり日焼けをし過ぎるとシミになりますよ」「うるさい! そして、夕陽を2人で眺めながらキスをするの」
「ドラマでよく目にするシーンですね?」
「海辺で見る夕日をナメない方がいいわよ。絶対やられるからね!」
結衣はそう言いながら、人差し指で私の鼻の頭をコツコツと2回つついた。
「ナメてはいませんが、私なんかじゃ良いシーンが台無しなんじゃないですかね?」
「真一、もっと自分に自信を持ちなよ。結構男前なんだからさ」
「褒めてもらえるなんて意外ですね」
「たまにはね。それより、あとは花火大会に行ったり、地元の祭で金魚すくいをしたり、かき氷、たこ焼き、りんご飴なんかをイッパイ食べるんだぁ」
「楽しみなのは祭りではなくて、食べものじゃないんですか?」
「だって祭りに行って食べると、何でも美味しいんだもん! あとは盆踊りをしたりするのもいいなぁ」
「結衣は浴衣が似合いそうですね?」
「当然でしょ! それに、連休が取れたら泊まりでキャンプに行って、カレーライスや豚汁を作ったり、バーベキューをしたり、キャンプファイヤーでダンスをするの」
「ダンスですか?」
「私と踊るのは嫌だっていうの?」
「違います。苦手なだけです」
「誰も真一のダンスなんか見てないから心配しないで」
「そういう問題じゃ――」
「そしてダンスのあとは、火を囲んで子供の頃のことや学生時代のこと、過去の恋愛の話をするの」
「私の恋の話は一晩では語り尽くせませんけどいいですか?」
「あっそぉ。そして秋には、栃木県の日光にある〝いろは坂〟からの紅葉を楽しむの」
「小学生の時に遠足で行ったことがあります」
「私も1度だけ。そのあとは華厳の滝を見学して、中禅寺湖ではペダルボートに乗って鯉にエサをあげるんだぁ」
「ハシャギ過ぎてボートから落ちないように気を付けて下さい」
「落ちる時は道連れだから!」
「ヒドイことを言いますね――」
「そして冬の一大イベントのクリスマスイブには東京スカイツリーにあるレストランで食事をするの」
「いいですね。早速予約をしておかなければいけませんね」
「よろしくね!」
「予約を取れなかったらすいません」
「絶対許さないから! それより話は戻るけど、食事のあとはスカイツリーをバックに真一からプレゼントをもらうの」
「強制ですか?」
「中身は真一に任せるから!」
「プレッシャーですね」
「それから予約しておいたホテルで最高に熱い一夜を送るの」
「眠らせてもらえなさそうですね?」
「嫌なの?」
「嫌ではありませんよ」
それからも結衣は楽しそうに、これからしたいことを永遠と語っていた。




